コミックナタリー Power Push - 近藤聡乃「A子さんの恋人」
日米で揺れる、優柔不断な恋の行方は?ひねくれた大人の無責任シティロマンス
大勢の方に読んでもらえるようなマンガが描けたらいいなあ
──初のエッセイマンガ「ニューヨークで考え中」、初の恋愛マンガ「A子さんの恋人」と立て続けに出て、初めて近藤さんに出会う読者も多いように思います。
うれしいです!
──「A子さん」はこれまでのキャリアからすると、ぐっとポップで取っつきやすいですね。
漠然と、大勢の方に読んでもらえるようなマンガが描けたらいいなあと思っていて。それでモデルというか、次に長編をやるんだったら高野文子さんの「るきさん」のような作品を描いてみたいな、と思っていたんです。「るきさん」がずっと好きだったので。
──「るきさん」もそれまでの高野さんからするとポップなテイストでしたね。Hanako(マガジンハウス)での連載だったせいか。
ただ「るきさん」は、るきさんと恋仲になりそうな自転車屋さんの男の人が、真ん中くらいからいなくなるんです。それで、“恋愛”というのが「るきさん」にはなかった部分だから描いてみたいという気持ちもありました。
割と特殊なマンガだなとは自分でも思っていた
──色恋のある「るきさん」をやってみよう、と。そんなプランだったんですね。けどずいぶん話が違ってきたような。
そうですね、当初の構想からはどんどんずれてしまいました。筆が乗ってくると自分の地が出てしまう。地が出てくるとこう、下世話なほう、小意地の悪いほうに(笑)。「ダメだ、さよならるきさん」って思いながら連載しています。
──近藤さんから下世話って言葉が出てくることに驚く人が多いと思うんです。メディア芸術祭で賞をもらってアート業界で活動もしていて、その人がアーティスティックなマンガも描いてる、というイメージが長かったので。
そのように言っていただけるのはうれしいですが、やっぱりデビュー作からセリフも手書きにしていたし、割と特殊なマンガだな、とは自分でも思っていたんです。大勢の人に読んでもらえるマンガを描いてらっしゃる作家の方からしたら、私は「マンガ家」ではないだろうって。
──それは言い過ぎですけど、あの、おっしゃりたいことはわかります。
そういうのがずっと心苦しくて、いつかマンガらしいマンガを描いてみたいと漠然と考えていたんです。それで「マンガの王道っていったらスポーツか恋愛じゃないか? スポーツはわからない事が多いけど、恋愛ならなんとか描けるんじゃないか?」という考えで、恋愛マンガになりました(笑)。
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注目作家・近藤聡乃の初長編連載! 半人前の大人たちが繰り広げる、問題だらけの恋愛模様。
29歳のえいこさん。誰といっしょになるとか、どこで暮らしていくとか──そろそろ決めなきゃいけない問題も増えてきた。とはいえ、答えなんてすぐに出せない(出したくない!)わけでして……。ああでもない、こうでもない、と思い悩むえいこさんの厄介な日々を綴った「A子さんの恋人」待望の刊行スタート!
恋人・友達・家族と絡まりあう29歳女子の日常描写は“あるある”の連続! そう、このマンガの中には、あなたも、あの子も、あいつもいるのです。
近藤聡乃(コンドウアキノ)
1980年千葉県生まれ。2003年多摩美術大グラフィックデザイン学科を卒業。アニメーション、マンガ、ドローイング、油彩など多岐に渡る作品を国内外で発表している。文化庁新進芸術家海外留学制度、ポーラ美術振興財団の助成を受け、2008年よりニューヨーク在住。海外生活を描いたエッセイマンガ「ニューヨークで考え中」を自身のWEBサイトにて、「A子さんの恋人」をハルタ(KADOKAWA)にて連載中。