ナタリー PowerPush - 矢沢洋子
ソロ名義で本格再始動! シンプルなロックに挑む
めんたいロックの時代に生まれたかった
──で、まあ晴れて……と言っていいと思うんですけど、矢沢洋子としてのアルバム「YOKO YAZAWA」が完成しました。アルバムを聴いて思ったんですが、洋子さんって独自のロック観を持ってますよね。
楽曲を集めたり詞を書いたりっていうのは去年の夏前ぐらいから始めていたので、練って練って時間をかけて作ったアルバムなんですけど、制作するにあたって最初に立てたコンセプトはやっぱり“ロック”! わかりやすいシンプルなロックがやりたかったんですよね。なんでそこにこだわったかっていうと、私がめんたいロックにハマッたっていうのがひとつのきっかけで、なかでも初期のルースターズがすごく好きなんですよね。
──ルースターズのどのあたりが刺さりました?
やっぱりあの暴れ具合? 彼らって歌詞がすごく卑猥だったり、めちゃくちゃだったりするんですけど、サウンドがシンプル、それでいて熱くさせてくれるっていう。できることならあの時代に生まれたかったなって憧れてるんです。
──アルバムに収録されている曲も最近あまりないタイプのロックですよね。歌詞はthe generousのときと同じく洋子さんが書かれてますけど、当然ながら意識は変わってますよね。
そうですね。the generousのときからメロディを聴いて詞を書くっていう順序は変わってないんですけど、今まではメロディに縛られすぎていたというか、曲を聴いてイメージした世界観で話を作っていたというか……良いところもあったかもしれないけど、結局は私個人から遠い感じの言葉になる。本当に言いたいことがぼやけた感じになってたと思うんですね。詞を書くときも今までは「書くぞーっ!」って結構気合入れてPCに向かってレポートを書くような感じで書いてたのが、今回はほとんどベッドに寝っころびながらケータイで打ってたりして。人によって違うと思うんですけど、寝っころがってケータイをいじってるっていうのは、私にとってベスポジなんですよ。それこそ友達に電話したりメールしたり、自分が一番素直になれるスタイルで、ちょっとした悩みとか愚痴とか楽しいことも「聞いてよー」みたいなノリでやったからこそ、普段の自分を詞に乗せることができたんじゃないかなって。
歌謡曲っぽい感じは意識してましたね
──サウンドには歌謡曲っぽい下世話な感覚もありますよね。
確かに。アルバムを作るにあたって100曲以上のデモを集めて、その中からメロディが気に入ったものをチョイスしたんですけど、ちょっと歌謡曲っぽい感じは意識してましたね。
──J-POPではなく歌謡曲?
そう、歌謡曲がすごく好きで、私カラオケに行ってもアニソン、歌謡曲、歌謡曲、アニソンみたいなローテーションですから(笑)。
──でも洋子さんはいわゆる歌謡曲世代ではないと思うんですが?
うん、なぜでしょうね。母親がよく聴いてたのかな。百恵ちゃんとか好きですねえ……そう! 私、夜中にTVの通販番組でやってる「あの頃のヒットナンバーが……」みたいな4枚組のCD買ったんですよ(笑)。延々と流れてるCMを観てて、気がついたら電話番号押してて(笑)。
──あはは(笑)。そういったニュアンスを漂わせる「YOKO YAZAWA」は懐かしくもあり新鮮なアルバムで。
古いようで新しい、で、面白いみたいな、そこは狙いでもありましたね。それと短い曲が多いんですよね。それもあえてそうしたというか。5分とか飽きるしなあ、きっと3分ぐらいが一番オイシイんじゃないかなあって(笑)。プロモーションビデオは1曲目の「H♡NEY BUNNY」で作ったんですけど、その撮影も、新宿の歌舞伎町にあるキャバクラ……でなくキャバレーの跡地で。“THE 昭和”っていう感じの場所で、花道とかあって、すごく古い感じなんですよ。そこで革ジャン着て暴れるみたいな設定なんですね(笑)。
──the generousのときとは現場でのノリもかなり違うみたいですね。当然かもしれませんが。
違うし、すごく楽しいですね。the generousのときは、こういう人といっしょにやってみたいなっていう思いがあっても実現するのが難しかったりしたんですけど、今回はソロということで存分にわがままを聞いてもらって。アレンジや作曲の面ではアイゴン(會田茂一)さんと前田(啓介/レミオロメン)さんはじめいろんな方に協力してもらって。そういうのがすごく楽しかったし、楽しいだけじゃなくてすごい発見があったり、現場で生まれたものがあったりもしたんです。今回だけじゃなくて、次に作品を作るときにも、またいろんな人と一緒にできたらなあって思いましたね。
CD収録曲
- H♡NEY BUNNY
- don't look back
- crazy for you
- 英雄~HERO~
- 月光
- fade away
- high☆tention
- 逢いたい
- SUGAR!SUGAR!!SUGAR!!!
- 終わりなき旅路
- Let me…
矢沢洋子(やざわようこ)
1985年東京生まれ。12歳のときに家族と共にロサンゼルスに移住。高校卒業後帰国し、大学に通いながらボイストレーニングを重ねる。2008年秋にthe generousのボーカリストとしてデビューし、ミニアルバム1枚とシングル1枚をリリース。2010年2月に、本名の矢沢洋子名義でアーティスト活動を行っていくことを発表。同年8月にアルバム「YOKO YAZAWA」をリリースする。父は矢沢永吉。