ナタリー PowerPush - 高橋優
1stフルアルバム「リアルタイム・シンガーソングライター」
最初に買ったCDは「南国少年パプワくん」です(笑)
──昔から歌詞を読むのが好きだったと聞いたんですけど、それはいつ頃から?
初めてCDを買った小学生のときからです。
──どうして読むようになったんですか?
だってCDの1000円って子供が使う額としてはすごく高いし、勇気がいる買い物だったんですよ。昔のシングルはジャケットを開けるとすぐに歌詞が書いてあったし、曲を聴きながら詞までじっくり読むのが1000円分の楽しみなんだと思ってて。確か最初に買ったCDは「南国少年パプワくん」の主題歌です(笑)。
──懐かしいですね! でも漢字が読めないとか文章が難しいとかは感じませんでした?
漢字なんて飛ばしてました。たぶんその空白を想像するのも楽しかったんですよ。例えば男女の夜の営みの曲を聴いても、小学生の僕にはサッパリなんのことだかわからないんだけど、それを想像して「きっとこういうことなんだな」って経験したつもりになってました(笑)。
──ほかの人が書いたものだと、どんな歌詞が好きですか?
B'zの稲葉(浩志)さんの歌詞はやっぱりすごいですよ。男の勝手さや孤独さが表現されてて、昔から大好きなんです。あとは川本真琴さん。言葉数が多い割に何を歌ってるのかよくわからないことがあって、そこに惹かれますね。何回も何回も聴いちゃうんですよ。
「こんなのできました」ってそっと置いておくのがベスト
──デビュー時に箭内さん(道彦 / プロデューサー)が「高橋優はメッセージソングを歌ってるんじゃない。社会をどうこうしようなんて思っていない。だからこそリアルタイム・シンガーソングライターなんだ」と言ってるんですが、その姿勢は今でも変わらないですか?
むしろ強くなった気がしますね。メッセージを伝えたいわけではないし、社会を変えたいわけでも壊したいわけでもないという意識は。
──キャッチコピーにもあるように、自分が今思っていることを歌う?
それもありますけど、最近は音楽のあり方についてすごく考えていて、いろんな届け方があると思うんです。誰かに無理矢理ヘッドホンをおしつけて僕の曲だけを聴かせておくこともできるし、「一生何も考えず笑ってろ!」という歌を延々流し続けることもできる。でも僕は、自分の音楽を押しつけちゃいけないと思っていて。もちろん曲は必死で一生懸命作るけど、あくまでも「こんなのできました」ってそっと置いておくのがベストじゃないかと。
──そこに自然と人が集まってくるような?
そうですね。歌詞の内容もどう受け取ってもらってもいいんです。「こういう考えで作ったから、こう感じてください」って言うのは違うなって。「ベースの音が好きです」と言われたら、僕は弾いてないけどうれしい。僕もCDを聴くのが小さい頃から好きだったから思うんですけど、「好き」って気持ちに細かい理由なんていらないんですよ。僕の曲を聴いて、気に入ってくれたらそんなにうれしいことはないから。
──では最後に、これからこんな歌手になりたい、こんな曲を作りたいという思いは何かありますか?
今のところはまだ考えられないですね。とにかく今の自分はこのアルバムに全部込めた!と思ってるんで、もう本当に空っぽなんです。でもこれから初めてのワンマンツアーが始まるので、その初めて感を思う存分楽しみたいなと思ってます。
CD収録曲
- 終焉のディープキス
- 素晴らしき日常
- 福笑い
- メロディ
- 希望の歌
- 靴紐
- サンドイッチ
- ほんとのきもち
- 虹と記念日
- 現実という名の怪物と戦う者たち
- 少年であれ
DVD収録内容
- ニューヨーク路上ライブドキュメンタリー完全版およびレア映像
- 箭内道彦演出による7曲のビデオクリップ集:「素晴らしき日常」「ほんとのきもち」「福笑い」「現実という名の怪物と戦う者たち」「少年であれ」+インディーズ時代の「こどものうた」「駱駝」
高橋優(たかはしゆう)
1983年生まれ、秋田県出身のシンガーソングライター。大学進学と同時に路上で弾き語りを始め、2枚の自主制作アルバムを制作。2008年に活動拠点を東京に移し、2009年7月にミニアルバム「僕らの平成ロックンロール」を全国リリースする。その後ワーナーミュージック・ジャパンと契約し、2010年7月にシングル「素晴らしき日常」でメジャーデビュー。社会、友情、恋愛、性、孤独など自身が感じた思いをストレートな言葉で表現した歌詞、聴き手の感情を揺さぶる熱い歌声が支持を集めている。