ナタリー PowerPush - 高橋優
1stフルアルバム「リアルタイム・シンガーソングライター」
僕の曲で笑ってもらえるならこんなに素晴らしいことはない
──7曲目の「サンドイッチ」はギターのみのシンプルな音で、最近では珍しいタイプの曲ですよね。
路上の頃はこういう歌い方をしていたので僕の中では自然なんですけど、最近のイメージからするとちょっと意外かもしれないですね。でも初めて聴いてくれる人もたくさんいるであろうと考えると「これも高橋優です」ってすごく言いたい曲なんですよ。
──個人的には「少年であれ」が特に素晴らしくて感動しました。「分からない悩みならば分からなくて別にいい」という言葉がすごく響きましたね。この歌詞って高橋さん自身がわからないことをわかろうとして悩んだ経験があるから書けたんだろうし、だから説得力があるのかなと思ったんですよ。
ああ、そうかもしれないですね。その曲は去年の始めにできたんですけど、ちょっとふさぎ込んでた時期で。自分には誰も理解者がいないんじゃないか、批判したい人ばっかりじゃないかって。考え過ぎというか、何かに対する恐怖心がすごく強くなってた頃だったんです。
──何かあったんですか?
いや、特に何もなかったんですけど……、単純に弱ってたんですよ、自分自身が。だって本当は敵ばかりなわけないし、応援してくれるスタッフもお客さんもたくさんいたし。でも自分は必要ないって感じちゃう時期って誰にでもあると思うんです。
──そうやって後ろ向きになってしまったところから、ポジティブなアルバムを作れる心境にまで変わったきっかけはなんだったと思いますか?
「福笑い」の存在は大きかったですね。いろんな人とのつながりのおかげで完成した曲でもあるので。
──ラジオ番組がきっかけだったんですよね。
リスナーに「世界の共通言語は英語じゃなくて笑顔」っていうお便りをいただいて、そのフレーズから作り始めたんです。やっぱり最初は笑いをテーマに歌うことなんて薄っぺらいって思ったんですよ。自分がちゃんと笑えてるかもわからないのに、ただのきれいごとじゃんって。でも思い切って作ったら、意外と周りの反応が良かったんです。お客さんが笑顔で聴いてくれてるのを見ていたら僕自身も笑いが込み上げて、「悪い人ばっかりじゃないよな」って思えた。僕の曲で笑ってもらえるならこんなに素晴らしいことはないし、歌う価値があるじゃないかって何度も何度も感じましたね。
「この言葉だった!」って喜びが何より気持ちいい
──曲を作るときはメロディと詞、どっちが先なんですか?
あまり定まってないんですよ。いろんなパターンがありますね。
──詞から作ったものとメロディから作ったもので、違いはあります?
それがまた全然なくて。どうやって完成すると一番いいかがまだわからないんです。ただメジャーデビューからリリースさせていただいたシングル3枚の表題曲は、全部1時間以内に完成してます。ギターを弾きながら歌詞もメロも同時に作っていくパターンですね。
──そうなんですか。詞を先に書いているイメージが強かったです。
よく言われますね。ただ僕の場合は歌詞というより、普段の悩みや考えごとから始まってるんですよ。感じたことをどんどんノートに書いておいて、それが何年か経って曲になることもありますし。
──そういった日々の考えを曲にしようと思う瞬間ってどんなときなんでしょう?
不思議と曲作りモードになるんですよ。なんでもいいから映画が観たい! って思うことあるじゃないですか。そんな感じで。めっちゃ書きたいっていう衝動が湧いてきたときに作るといい曲ができますね。
──曲にしていく過程にしんどさは感じないですか?
そのタイミングでうまく作れれば楽しいです。義務感にかられているときはやっぱり大変だし、難産になっちゃいますね。でもすごく辛い悩みを歌詞にできた瞬間の「この言葉だった!」って喜びが何より気持ちいいんですよ。
CD収録曲
- 終焉のディープキス
- 素晴らしき日常
- 福笑い
- メロディ
- 希望の歌
- 靴紐
- サンドイッチ
- ほんとのきもち
- 虹と記念日
- 現実という名の怪物と戦う者たち
- 少年であれ
DVD収録内容
- ニューヨーク路上ライブドキュメンタリー完全版およびレア映像
- 箭内道彦演出による7曲のビデオクリップ集:「素晴らしき日常」「ほんとのきもち」「福笑い」「現実という名の怪物と戦う者たち」「少年であれ」+インディーズ時代の「こどものうた」「駱駝」
高橋優(たかはしゆう)
1983年生まれ、秋田県出身のシンガーソングライター。大学進学と同時に路上で弾き語りを始め、2枚の自主制作アルバムを制作。2008年に活動拠点を東京に移し、2009年7月にミニアルバム「僕らの平成ロックンロール」を全国リリースする。その後ワーナーミュージック・ジャパンと契約し、2010年7月にシングル「素晴らしき日常」でメジャーデビュー。社会、友情、恋愛、性、孤独など自身が感じた思いをストレートな言葉で表現した歌詞、聴き手の感情を揺さぶる熱い歌声が支持を集めている。