ナタリー PowerPush - SCOOBIE DO

何度も恋する夏が来た!ポップ全開最新作 スタジオ潜入&インタビューで魅力に迫る

歯を磨いたり風呂に入るのと同じ感覚で曲作りに臨みたい

──「歌に寄ったアルバム」と感じられるのは、アレンジの変化はもちろん、メロディそのものがよりポップになっていることが大きいと思うのですが、そこは意識したところですか?

マツキ ここ何作かはどっちかというと、洋楽的なサウンドに落とし込むのを自分の中で良しとしていたんですけども、SCOOBIE DOって元はと言えば、いわゆる1960年代のグループサウンズのような「和モノ」と言われるようなレアグルーヴをバンドでやる、しびれる日本語を歌うっていうのがコンセプトだったんですよ。

──ジャケットデザインなども含めて、確かにそういうイメージでしたよね。

マツキ その最初の頃の気持ちを1回ここで取り戻したいとも思っていて。ちょうどそんなことを思って曲を作っているとき……去年の年末に「日本の歌謡曲ベスト100」みたいな番組を観たんです。あらためて聴いてみると、やっぱり売れた曲っていうのは言葉の響きとメロディが完璧なんですよね。まず何を歌ってるか聴こえてくるし、メロディも素晴らしい。少年隊しかり安全地帯しかり、子供の頃無意識に聴いてた曲って、要するにそういうところに惹かれてたんだろうなって。だから、例えば歌謡曲みたいなクサい曲になったとしても、それもバンドの本質としてあるんだからいいじゃねえかと。

インタビュー写真

──なるほど。でも当時の記憶をそのままトレースしてきたものとはもちろん違って、この15年間で培ってきた今のSCOOBIE DOならではの音というのが確固としてあるから、興味深い消化の仕方になってますね。

マツキ そう。バンド始めた頃の気持ちに立ち帰ってみても、結局は15年経ってるんですよ。音楽的な蓄積もあるから、当時と全く同じものにはならない。年齢まで若くなったらまた音も違うと思うんですけど(笑)。

──このアルバムの曲を、純粋にシティポップを演奏するアーティストがやれば、もしかしたら本当にストレートなシティポップになるのかもしれない。

マツキ アハハハハ! そうかもしれないですね。

──じゃあ曲作りの段階でそれほど煮詰まることはなかった?

マツキ 最近は自分の中で、曲を作ること自体をあまり大げさなことにしたくなくて。本当に日常の中のひとつの動作というか……歯を磨いたり、風呂に入るのと同じ感覚で曲作りに臨みたいなって。極端に言うと、メロディと1番の歌詞しかできてない状態でメンバーに持ってって、自由に浮かんだものをそのままバンドに投げつけてみても大丈夫。そこでどんなリアクションが返ってきたとしても、自分の中でもうひとつ新しい答えが持って帰れるっていう、そんな感じになってきたんで。だから産みの苦しみっていうのももちろんあるけど、1回産んどけば何らかの形にはなる。なんだか最近、非常に心強くて。

町工場の生産ラインができた

──CHAMPを立ち上げて、4人がより近くなったことによって芽生えた力強さなんでしょうかね。ちなみに曲作りに関しては、もう完全にリーダーにお任せなんですか?

ジョー そうですね。メンバーそれぞれに「ここは俺がやったほうが効率がいい」って部分がはっきりしてきたのかも。

マツキ 俺が家で曲を作ってきて、メンバーにぶつけるっていう作業がバンドとして一番効率がいい。

MOBY 町工場の生産ラインができたみたいな(笑)。

マツキ あと「俺がやるんでいいじゃん?」みたいな感じになったきたのもありがたいというか。「信頼してもらってすいません」っていう(笑)。

──3人は「自分の作った曲で俺なりのスクービー感を出したい」っていうエゴはないですか?

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ジョー 弾きたいように弾いてるのが、自分なりのエゴだと思うんですよね。曲の作り手がどういうフレーズを求めているのかを汲み取るのは大前提で、「こういう感じなんだ」っていうのをつかんでから、自分の思いついた要素をすり合わせていって……気付かれないように変えていく(笑)。

MOBY アハハハハ!

ジョー 「この間それじゃなかったよね?」みたいな。「でもそれもイイね」って、どんどんみんなですり合わせていく。実際に音を鳴らすと印象が変わってくる部分もあるから、そこできっと全員のエゴがぶつかり合ってはいるんだと思います。

──「工場のライン」っていうのはすごくわかりやすいし、なんかしっくりきますね。まずリーダーから一番最初の部品が出てきて、さまざまな行程を経て「SCOOBIE DO」としか言いようのない音が完成、という流れ。

MOBY 「ココのやすりのかけ方は任せて」ってのがそれぞれあるから。だからあんまり細かい指示はないです。ザックリ。そこはリーダーも我々を信頼して発注してくれるから。で、それをエッサホイサとやって。結局バンドってのはそういうことなんじゃねえかなと思いますよ。

「バンドってすげえんだぞ」ってことを伝えたい

──収録曲の中から「バンドワゴン・ア・ゴーゴー」をリード曲に選んだのは?

マツキ 俺たちにとって、リード曲というのは「ライブでずっとやっていかなくてはならない曲」だと思ってるんです。そう考えたとき、「バンドワゴン・ア・ゴーゴー」はバンドサウンドが一番派手に鳴らされていて、なおかつわかりやすい曲だった。多数決で「コレがいい、アレがいい」って言って決めたんですけど。

──この曲は、今のスクービーの風通しの良さみたいなものを非常によく感じるし、「バンドマンって楽しそうだな」っていうワクワク感が詰まった曲だと思います。子供の頃にRCサクセションの「ドカドカうるさいR&Rバンド」で感じたのと同じ気持ち。ビデオクリップもバンドの楽しさが伝わってくる内容で。もちろん自分たちで運営している以上、楽しいことばかりじゃないでしょうけど、ワゴンカーで全国を回る“バンドの生活”をエンジョイしている様子が、まぶしく見えるんですよ。

マツキ バンドってやっぱり宣伝力が大事だと思うし、もっとイメージを作り込んでカリスマ性を出していくやり方もあるんだけど、俺らとしては「バンドってすげえんだぞ」ってことをまずは伝えたいんですよ。おっきなレコード会社が一生懸命祭り上げて作っていくものだけじゃねえぞっていう。お金がなくてもこんなカッコいいことやってるんだよ、こんなバカバカしいことやってるんだよっていうのを伝えたい。裏側にある悲壮感がすべてじゃないし、表側にあるきらびやかさがすべてではないけれども、全部ひっくるめて「バンドってやっぱりカッコいいよ、バンドやってるやつらはカッコいい奴らだよ」っていうのを、やっぱり俺たちは発していきたいんです。

──今、世間が本当に世知辛いことになっていて、音楽業界もどうしたってその余波を受けてますよね。そんな中で、ここまでちゃんとコンスタントにアルバムを作って資料も作ってツアーを回って、しかもそれを自分たちだけでやってるという。CHAMP RECORDSというアンチメジャーなレーベルから、こんなポップなアルバムがリリースされるというのはすごく意味のあることだと思います。スクービーの活動を見て「俺らも自分たちでレーベル作ってやりてえッス!」っていう若いバンドがいたとしたら、どうアドバイスします?

マツキ いやー、「俺達を倒してから行け」でしょうね(笑)。

ニューアルバム「何度も恋をする」 / 2010年7月7日発売 / 2625円(税込) / CHAMP RECORDS / HICC-3008

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CD収録曲
  1. 太陽と女の子
  2. きれいなお姉さん
  3. ロールオーバー14歳
  4. バンドワゴン・ア・ゴーゴー
  5. 秘密の果実
  6. セツナ
  7. 恋をした男子
  8. ブランニュー俺
  9. 恋のウイルス
  10. ガールフレンド
  11. イキガイ
SCOOBIE DO(すくーびーどぅー)

アーティスト写真

1995年にマツキタイジロウ(G)とコヤマシュウ(Vo)を中心に結成。1996年に現ドラマーのオカモト“MOBY”タクヤ(Dr)が加入し、自主制作カセットなどを販売する。1999年にK.O.G.A. RECORDSから初のシングル「夕焼けのメロディー」をリリース。続いて発表された1stアルバム「Doin’ OurScoobie」で圧倒的な存在感を放つロックバンドとしてその人気を確かなものとする。2001年にナガイケジョー(B)が加入し、現在の編成で活動開始。2007年には自主レーベル「CHAMP RECORDS」を立ち上げ、ライブのブッキングからCD制作、プロモーションまですべてメンバー自ら行っている。2010年7月7日、CHAMP RECORDS通算4枚目のオリジナルアルバム「何度も恋をする」をリリース。