ナタリー PowerPush - SCOOBIE DO

何度も恋する夏が来た!ポップ全開最新作 スタジオ潜入&インタビューで魅力に迫る

メジャーにはない発想を

──SCOOBIE DOは現在、外部の事務所などに所属せず自分たちのレーベル「CHAMP RECORDS」を立ち上げて活動されていますが、アルバム発売の数カ月前からメディア向けのサンプルを準備したり、きっちりと整った媒体資料を作ったり、メジャーのレーベルよりもしっかりしてるのではと思えるような運営ぶりで、リリースのたびに驚きます。

インタビュー写真

マツキタイジロウ(G) 我々がこういうかたちで活動していく以上、やはり「アンチメジャー」という命題があるんですよ。メジャーの人が絶対できないようなバカバカしいことをやったり、メジャーにいたらできないような発想を、いかにお金をかけずにやって面白さを伝えていくかっていう。

──去年のアルバム(「SPARKLE」2009年6月発売)のときは、媒体向けに作られた「マル秘資料」がアルバム特設サイトで公開されましたよね。普段メディアの人しか見ることができない媒体資料を公にするというのは面白い試みだなと思いました。今回も媒体資料からご当地グルメ情報「『バンドワゴン・ア・ゴーゴー』マップ」が公開されましたが(笑)。

マツキ こういうバカバカしい思いつきに周りの人たちを巻き込んでいくような行動が、俺たちにとっては音楽と同じぐらい大事だし、やりたいことなんですよ。

PEACE MUSICは日常とつながってる感覚

──スクービーはいわゆる“ライブバンド”だと思いますが、レコーディングにもかなり力を注いでますよね。今回は後者の、レコーディングに対する考えをじっくり訊きたいと思い、スタジオまで見学させてもらった次第です。2008年の「パラサイティック・ガール」からは3作続けて、中村宗一郎さんのスタジオ「PEACE MUSIC」でレコーディングされていますが、このスタジオを選んだ理由は?

マツキ まずは中村さんの音楽的知識と経験と技術。その音楽性と趣味ですよね。ビンテージサウンドにも精通しているし、なおかつ今のノイズシーンを代表するようなアバンギャルドな音像にも非常に詳しい。

ナガイケジョー(B) 中村さん自身もたぶんアンチメジャー的なところがある人なので、一緒に作り上げていきやすいんだと思います。音楽で単純に面白いことをしたいと思っている人。それは僕らも同じで、だから僕ら自身も気負わずに臨めるんじゃないかな。

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マツキ この非常に小ぢんまりとしたスタジオの限られた環境の中で、どれだけそれを感じさせない音像を作るか、というのがPEACE MUSIC自体の命題としてあると思うんですけど、だから何回ここでレコーディングをしても、まだまだその先の可能性があるように感じられるんですよ。

オカモト“MOBY”タクヤ(Dr) それでいてPEACE MUSICは、どこか日常とつながってる感覚があって。敷居高く、緊張感を持って臨まなくても済むというか。レコーディングという行為に、日常のいつものテンションのまんまで臨むことができる。フラットな気持ちでやれるのがピースの一番デカいところですね。

──中村さんはスクービーにどういう印象を持ってるんでしょうね。直接そんな話を聞いたことはありますか?

マツキ さんざん聞いてますよ。音で言えば「にぎやかだけど重みがない」とか。

コヤマシュウ(Vo) 酷評だ(笑)。

マツキ 「重みが欲しい」とはよく言われます。「だけど、それがスクービーの特徴でもあるかなぁ」みたいな。ある意味それは冷徹な目かもしれないけど、そう言ってもらうことによって、僕らの意識も変わってきた。あのままメジャーで普通にレコーディングをやっていたら、音楽家としてのレベルは上がってないかもしれないですし。それが良いのか悪いのかは実際わからないですよ? だけど、中村さんが冷徹な目で感想を伝えてくれることによって、ミュージシャンとしての自分たちの姿が非常によくわかる。それが意識の改革につながっていくし、それによって作っていく音楽がどんどん変わっていくんだと思うんですよね。

初期からの柱である“メロウ”を押し出したアルバムを

──それではアルバム「何度も恋をする」についてお訊きします。今回はもうアルバムタイトルや楽曲タイトルの並びを見ただけでもテンションが上がるような、突き抜けた開放的なムードにあふれていますよね。これはバンドとして何か大きな変化が?

マツキ まずは単純にリリース時期が夏に決まっていたというのが大きくて。「夏に出るんだから夏っぽいアルバムを作ろう」っていう、それがスタート地点。で、その中に「楽しい」「ノリノリ」っていうバンドのイメージを崩さずに、SCOOBIE DOのもともと持っていた切ない感じや、いいメロディでいい歌を聴かせる、そういうものをまたやろうと。バンドが結成当初からひとつの柱として持っていた“メロウ”を押し出したアルバムを、CHAMP RECORDSの作品として出してみたかったんですよ。

──前作「SPARKLE」も、ある意味すごく“歌ってる”アルバムという印象を受けました。リフでグルーヴを生み出していくようなCHAMP RECORDS設立以降のアレンジをさらに進めたうえで、非常にメロディの立った楽曲が揃ってましたよね。今回のアルバムもその延長線上にあるものだと思うんですが、さらに歌を際立たせるアレンジに変化しているように感じます。

マツキ 曲を作り始めたときは、漠然と「夏」というテーマがあって、でも基本的には「SPARKLE パート2」みたいな、複雑なリフにきれいなメロディが乗ったアルバムを作っていこうと思って始めたんです。でも、実際に曲を作り始めるとリフはあまり浮かばずに、メロディはどんどん出てきた。だったら、最初のイメージにとらわれず、浮かぶままに作ってしまおうと。

──特に他の要素が加わったわけではないですよね? あくまで4人で紡ぎだした、いかにもスクービーな音作りなのに、すごくポップに聴こえるんですよ。

マツキ 「SPARKLE」のとき、みんなで一生懸命切磋琢磨した結果、ミュージシャンとしての幅がすごく広がった感触があったんですよ。今回はあまりガチガチに決め込まなくても、いろんなことができるんじゃないかなって思ったのが、いわゆる“歌モノ”に寄ってった理由だと思いますね。

──マツキさんが作ってきた曲を聴いて、他のお三方は「今回は今までと違うぞ」っていう印象はありました?

ジョー わりとスウィートな印象は受けましたね。

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MOBY 最初に持ってきた曲は「ロールオーバー14歳」だっけ? その時点で「あっ、違うな」とは思った。全体的に、まず歌があってそれを盛り上げる感じ。

──最初にメンバーに聴いてもらうときには、すでにメロも歌詞もできあがった段階で?

マツキ そうです。

──リーダーが楽曲で提示してきたコンセプトは、メンバー共通で「今これだな」と感じられるものでしたか?

コヤマ アルバムの全体像は、最初はタイちゃん以外わかんないんですよ。「こういうアルバムにしたいんだ」みたいな話も特になく、1曲1曲書いてくるから。曲ができたら持ってきて合わせて、行けそうだったらそれをさらに進歩させていくんです。どこに着地するかもわからず。

──とにかく「夏に出るアルバムだ」と。実際に曲作りを始めたのは?

マツキ 去年の秋の終わりぐらいからかな。

MOBY それで、レコーディングに入ったのが3月。その頃には曲もアレンジも固まった状態で。ただ、今回はさっき話したようにガチガチに固めてしまわずレコーディングに入ったんで、そこは今までとは明らかに違いますね。今までは台本を全員がっちり書いてアドリブもなしに録ってたんだけど、今回は現場で思いついたアドリブが結構入ってる。

マツキ 前作までは思い描いているサウンドをある程度具体的に表現したかったから。これまでが「全員のミュージシャンとしてのエゴをそのまま録音してください」っていうレコーディングだったとすれば、今回はまず楽曲ありきなんですよ。楽曲のため、自分はどうそれに向かえるかっていう。

ニューアルバム「何度も恋をする」 / 2010年7月7日発売 / 2625円(税込) / CHAMP RECORDS / HICC-3008

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CD収録曲
  1. 太陽と女の子
  2. きれいなお姉さん
  3. ロールオーバー14歳
  4. バンドワゴン・ア・ゴーゴー
  5. 秘密の果実
  6. セツナ
  7. 恋をした男子
  8. ブランニュー俺
  9. 恋のウイルス
  10. ガールフレンド
  11. イキガイ
SCOOBIE DO(すくーびーどぅー)

アーティスト写真

1995年にマツキタイジロウ(G)とコヤマシュウ(Vo)を中心に結成。1996年に現ドラマーのオカモト“MOBY”タクヤ(Dr)が加入し、自主制作カセットなどを販売する。1999年にK.O.G.A. RECORDSから初のシングル「夕焼けのメロディー」をリリース。続いて発表された1stアルバム「Doin’ OurScoobie」で圧倒的な存在感を放つロックバンドとしてその人気を確かなものとする。2001年にナガイケジョー(B)が加入し、現在の編成で活動開始。2007年には自主レーベル「CHAMP RECORDS」を立ち上げ、ライブのブッキングからCD制作、プロモーションまですべてメンバー自ら行っている。2010年7月7日、CHAMP RECORDS通算4枚目のオリジナルアルバム「何度も恋をする」をリリース。