ナタリー PowerPush - サンボマスター
メンバーが熱く明かす 音楽の力、音楽の宿命
3人でいろいろ考えてアイデアを出すのが一番面白い
──ここ最近のサンボマスターは、いろんなアイデアをメンバー自らが発信して実現するようになっていると思うんです。今回のDVDのコメントもそうだし、Ustreamでの活動も含めて、D.I.Y.でやるようになっている。そういう意識はなぜ芽生えてきたんでしょう?
山口 やりたいようにやるのが、結局みんなにとっていいことなんじゃないかって思ったんでしょうね。音楽も好き勝手やってるんだから、活動も好き勝手やったほうがいいなって。
木内 3人でいろいろ考えてアイデアを出すのが一番面白いという考えに辿り着いた、ということもありますね。それは音楽もそうだし、活動のあり方にしてもそう。誰か外部の人に「こういうことやらない?」って言われても、「そんなつまんないことやんないよ」って思う。こっちからアイデアを出してみんなに動いてもらったほうが、実際に面白かったんですよ。それは前のアルバムの「きみのためにつよくなりたい」を作ってたときに思い始めたことで。
山口 それに、そうやっていくと責任が生まれるんですよね。好き勝手だ、自由だって言っても、何やってもいいわけじゃないですから。自分たちが主体的になることで、音楽好きな人たちと、よりいっそうつながる責任が出てくる。そういうことはありますね。まあ、感覚的には近藤くん家に集まって「これやったら面白ぇな!」って言い合ってるのと同じですけどね(笑)。
近藤 大体はイタズラに近い感覚なんですけどね。それで面白がってるっていう。
自分たちはいつもど真ん中のことをやってるつもり
──結局、人を惹きつけるのって「これは面白いはずだ!」っていう無根拠な思い込みだと思うんですよね。人に媚びへつらおうとか、人に好かれるには何が必要だろうみたいな発想じゃなくて。
山口 ああ、そうかもしれないですね。
──で、サンボマスターの場合は、そのアイデアがいろんな場面で「過剰さ」として現れるのが大きな特徴だと思うんです。このベストもそうだし、6時間かけて55曲を演奏した2007年の両国国技館ライブもそう。ああいうふうに内容を詰め込んだものになるのはなぜだろうかと思うんです。
木内 あの両国国技館でのライブは、俺がやろうって言ったんです。岡林信康さんの「狂い咲きコンサート」みたいに、デビューから発表した全曲を演奏するライブをやりたいと思って。あれもきっかけのひとつになったかもしれないですね。今は、3人が3人とも心の底から面白がれることをやっていこうと思ってるんです。バカだなこいつら、ホントふざけてるなって。それは世間一般で言ったらど真ん中のことじゃないかもしれない。でも、それを面白いって思ってくれる人はきっといると思う。そういうところに訴えられたらいい。だから自分たちはいつもど真ん中のことをやってるつもりなんです。自分たちの心に響くことをやっている。でも、それがどうやら世間一般のど真ん中とは違うらしいということもわかりはじめてきたんですけどね。
山口 まあ、俺は30年以上「なんで違うんだろう」って思い続けてきたんですけどね(笑)。後ろめたいこともありましたよ。どうしてやることが人様と違ってんだろうって。
木内 そうそう。でも、それを恐れなくなってきたんですよね。それでいいじゃん、だったらそれをやろうって。
2ndアルバムと3rdアルバムは売れすぎた
──では、もう少し振り返って、2nd「僕と君の全てをロックンロールと呼べ」、3rd「サンボマスターは君に語りかける」をリリースした2005年~2006年の頃の話も聞かせてください。この時期はサンボマスターのキャリアの中でもマスメディアに最も出てた時期ですけれども、あの頃のことはどう捉えています?
山口 あれは売れすぎたんじゃないかな?
近藤 売れすぎたね。
──なるほど(笑)。
山口 売れすぎたのが良くないって話を3人でしたんだよな。ほかの方々にとっては別ですよ? でも俺たちにとっては、あれだけ売れちゃったら、逆に夢が叶ったことにはならないから。
──実際、危機感を持っていたんですね。
山口 3人の雰囲気が悪くなることは一切なかったですけどね。最初にコンセンサスがあったんで。2人に話したら、売れすぎてるね、いけないねって話になったんで。あの時期があったから、一時は世間様とは距離を置かせていただこうって、生意気なことも思いましたね。
木内 だからバンドの状態は最強だったんですよ。DVDに入ってる「ふたりぼっちの世界」は、3rdアルバムのレコ発ツアー初日の1曲目の映像なんです。これは絶対に入れたかった。それくらい強烈に記憶に残ってたものでしたね。とにかくあの頃は最強だった。もちろん、今と比べてどうかって話じゃないですけど。今やってることを、あの頃の俺らができるわけじゃないですから。
山口 そう、あの頃と今は別の話なんだよね。
──別の話というと?
山口 僕らにとっては、同じことを毎年やるっていうのは、違うんです。2005年だから「歌声よおこれ」が生まれたわけで。2011年の空気では、同じ効果が出る別のベクトルから、曲を作って演奏しなきゃいけないんです。だから2011年には「希望の道」(※2011年2月にリリースされた、インタビュー時点での最新シングル)を歌いたかった。そりゃあ、世の中がこんな大変なことになるなんて、僕には想像もつかなかったし、「この状況に対してこの歌を」なんて、そんなおこがましいことは僕らには口が裂けても言えないけれども。とにかく、自分たちが納得するような形の音楽をやりたいというのが常にあるということですね。
[DISC 1] サンボマスターグレイテストヒッツ
- 世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
- 希望の道
- 世界をかえさせておくれよ
- できっこないを やらなくちゃ
- 光のロック
- 青春狂騒曲
- ラブソング
- 歌声よおこれ
- 君を守って 君を愛して
- 美しき人間の日々
- very special!!
- I Love You
- きみのキレイに気づいておくれ
- 手紙
- 全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ
- 月に咲く花のようになるの
- そのぬくもりに用がある
[DISC 2-1] 日本語ロックの金字塔
- さよならベイビー~2003年 スプリットアルバム「放課後の性春」
- これで自由になったのだ
- 熱中時代
- ふたり~2003年 スプリットアルバム「放課後の性春」
- 新しく光れ
- 人はそれを情熱と呼ぶ
- 週末ソウル
- 夜汽車でやってきたアイツ
- 想い出は夜汽車にのって
- 愛しさと心の壁
- 新しい朝
- 朝
- 愛しき日々
[DISC 2-2] あなたに贈る完全未発表音源
- スーパーガール(新曲)
- 絶望と欲望と男の子と女の子(Live/2006年5月11日 渋谷クラブクアトロ)
- 夜が明けたら(Naked/2003年10月20日 スタジオインパクト)
- あなたといきたい(Live/2010年7月17日 ZEPP TOKYO)
初回盤DVD収録内容
- ビデオクリップで綴るサンボマスター篇
- 日本語ロックの金字塔ライブ篇
- 10年分の「そのぬくもりに用がある」
サンボマスター
山口隆(Vo, G)、近藤洋一(B, Cho)、木内泰史(Dr, Cho)によるスリーピースバンド。メッセージ性の強いストレートな歌詞と、ファンクやソウルからの影響を感じさせるロックンロールサウンドを特徴とする。
2000年に結成。2003年7月、オナニーマシーンとのスプリットアルバム「放課後の性春」でメジャーデビュー。同年夏の「FUJI ROCK FESTIVAL '03」ROOKIE A GO-GOステージに出演し、12月には1stアルバム「新しき日本語ロックの道と光」をリリースする。2005年発表のシングル「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」がドラマ主題歌に起用され、大ヒットを記録。さらに2007年9月に東京・両国国技館にてワンマンライブ「世界ロック選抜<ファイナル>サンボマスター vs サンボマスター」を敢行。それまでに発表していたレパートリー全55曲を6時間かけて披露し、大きな話題を呼んだ。
その後も、シングルがCMソングやアニメのエンディングテーマに起用されたことで、着実に新しいファンを獲得。2011年4月には、CD2枚組に計34曲、初回限定盤DVDにビデオクリップとライブ映像それぞれ11曲+特典映像という、計57曲が詰め込まれた初のベストアルバム「サンボマスター 究極ベスト」をリリースした。