音楽ナタリー Power Push - Perfume

私たちが進む道の先にあるもの

映画を観て「すごく真面目な人たちだな」と思った

──今ちょっと映画の話が出ましたが、あの映画を通して自分たちを客観的に観たときに、Perfumeの姿はどう見えました?

かしゆか すごく真面目な人たちだなって思いましたよ(笑)。何事にも一生懸命で、普通だったら笑っちゃうようなことでも真面目に話してたりして。「今回のライブでこう思った」みたいな話を、私たちはライブが終わった直後にすぐ話したくてしょうがなくなるんです。「もっとこうしたかった」「こっちの方がもっとよかったよね」「次はこうしようよ」「あそこをこう変えたらもっとよくなると思う」みたいな思いがどんどん出てくる。話し始めたら止まらないんです。あと、いろんな真面目が一緒にありすぎて、「次に備えて体をほぐしたい」って思ってずっとマッサージとかストレッチしてたり、「体調崩しちゃいけないから防寒しなきゃ」ってすごいダサい格好してたり。そういうことを全力でやってる感じがPerfumeらしいなって思いました。

──自分の足を揉みながら議論を交わしてるシーン、アスリートの裏側を撮ってるみたいな感じですよね。

のっち ふふふ(笑)。そうかもしんない。

かしゆか

かしゆか ああいうライブ後の空間って、普通はカメラを持ってる人は絶対入ってもらわないんですよね。たとえファンクラブの方でも、いたら気になっちゃうし、「あ、人がいるなら言うのやめておこう」って思ってできない話もある。でもカメラを回してくれてた監督が、今までずっとテレビのドキュメンタリー番組を録っていた方なんで、そこにいることを忘れるくらい自然に撮ってくれて。普段はカメラが来てるってわかるとシャンとしちゃうのに、3人ともまったくカメラを意識してないんですよね。だからホントに全部がありのままの、飾らないPerfumeが映ってると思います。

──ドキュメンタリーの撮影中ってやっぱり、撮られていることを忘れてしまうものなんですね。

のっち うん。忘れるっていうか、カメラに気付かないこともけっこう多かったです。しかもライブ当日からオフラインチェックするまで時間が経ってたんで、そこに映ってる出来事をもう忘れてるってことも多くて、「ああー、こんなことあったなあ」って感じで観てました。

3人とも中田さんの背中を見ながら泣いてました

──その映画の主題歌になったニューシングル「STAR TRAIN」について聞かせてください。この曲は今までになくPerfume自身の視点で歌詞が書かれているなと思いました。

のっち まさにですね。歌詞を見た瞬間から「あ、私たちの歌だ」って思ったのは初めてで、めっちゃ感動しました。中田さんはドキュメンタリー映画を観たうえで、その主題歌として書いてくれたんです。

──おお、そうだったんですか。

のっち 今までも「この曲はもしかして私たちのことを歌ってるのかな?」って思うことはあったし、ファンの人たちから「この歌詞はあのときのPerfumeのことを書いてますね」とか言われることはあったんだけど……。

あ~ちゃん 「いよっ! 名探偵!」ってね(笑)。

のっち そうそうそう(笑)。でもこの曲は、本当に中田さんがウチらのことを考えながら書いてくれたんだって胸を張って言えます。

あ~ちゃん この曲はレコーディングがけっこう飛んだんよね。

──えっ? どういうことですか?

あ~ちゃん レコーディングの時間が伸びるのはよくあることなんですよ。「5時開始の予定でしたが6時になりました」「6時から8時になりました」「8時から9時になりました」「曲ができあがりましたので10時に来てください」みたいな(笑)。それが今回は「ちょっと今日はできそうにないので」って言われて、完全に飛んだりして。ササッと曲を作っちゃうイメージだったあの中田さんが、めちゃくちゃ考えて、悩んで悩んで何度も作り直してくださって。それくらい大切な曲になると思って作ってくれました。それで、レコーディングが中止になったあとに上がってきたのがこの曲だったので、初めて聴いたときは本当に感動しました。この距離が近いようで客観的な言葉は、もし私が作詞家だったとしても自分の目線では書けるものじゃないし、ずっとPerfumeのことを客観的に見ていながらも、実は隣で一緒に15年間歩いてくれてた中田さんだからこその歌詞だと思うんですよね。

──そうかもしれないですね。

あ~ちゃん 初めて歌詞を渡されたときに、3人とも中田さんの背中を見ながら泣いてました。デモを2~3回聴いたらブースに入って歌うんですけど、泣いてるのを見られるのが恥ずかしいから、曲はもう覚えてるんだけどスタジオになかなか行けなくて。スタッフさんが「あれ? あ~ちゃんまだ行きませんか?」って表情を探られそうになって、「ちょっと待ってください!」って泣き顔を隠したりして(笑)。そのときは泣いてるのは私だけだと思ってたけど、3人ともそんな感じだったらしくて。

のっち この曲は歌割りが加入順になってるんですよ。あ~ちゃん、かしゆか、私、っていう順番で歌うんです。たぶん意図的にそうしたんだろうなって私たちは予想してるんですけど。偶然だとしたら本当に怖い(笑)。

かしゆか 中田さんからは特に「そうしたんだよ」とは言われてないんですけどね。本当に一生懸命考えてくれたんだなって思いました。

あ~ちゃん そういう順番だから、MVにはサビまでのっちが出てこないんです(笑)。

のっち わはは(笑)。そうなんです、1番には1回も出てこないんですよ。

あ~ちゃん サビ前の間奏の、音が上昇していくところで「やっと来たー!」って(笑)。ウチらまったく気付かんかったけど、のっちがそれに気付いたときホンマに笑ったよね。「うわ、ホンマじゃ!」って(笑)。

のっち えー、のっちちゃんいないのに気付かなかったの?(笑)

かしゆか うん、全然気付かなかった(笑)。

あ~ちゃん ごめん(笑)。でもホントにこんな曲は今までのPerfumeにはなかったと思うし、MVもこの曲だからこその、今までにない雰囲気のビデオになったと思います。

「大丈夫、次もいい曲書くから」って言われて

──歌詞の意図について中田さんはメンバーに何も話していないんですか?

あ~ちゃん 中田さんは多くを語らないんですよ。この曲についても何も言わない。

かしゆか まったく何も言われてないよね。

あ~ちゃん 恥ずかしいし、私たちからも聞かんかったよね(笑)。

かしゆか 聞けないよー! 「この歌詞ってどういう意味ですか?」なんて(笑)。でも、「STAR TRAIN」を作り始める前にお食事会を設けていただいて、そのときには中田さんとお話しました。すでにカップリングの「TOKIMEKI LIGHTS」ができてて、みんなこの曲をすごく気に入ってたから「これをA面にしたいくらい好きなんですー」って伝えたら、中田さんも「思ったよりいい曲になったよ。明るいし、いいよねー」って言ってて。でも「今回シングルを出させてもらえるのは、映画公開が決まったからだよね?」って、話になって。「TOKIMEKI LIGHTS」が大好きだから、どうなるのかなって少し心配してたんですけど、中田さんが「大丈夫、次もいい曲書くから」ってサラッと言って。キャー!(笑)

あ~ちゃん マジでカッコよかったよねアレ(笑)。

のっち 「お願いしまーす! 付いて行きまーす!」(笑)

かしゆか 「もう安心しましたー!」って(笑)。

──その「TOKIMEKI LIGHTS」もいい曲ですよね。松田聖子さんのような1980年代のアイドルポップスを思わせる曲調で。

あ~ちゃん うん、まさに! 大好物!

のっち この曲をもらったときにスクールメイツのダンスが頭に浮かびました。

あ~ちゃん そうそう、短ーいスコートはいてね(笑)。

──「TOKIMEKI LIGHTS」と「STAR TRAIN」はどちらも“星空の旅”みたいな要素があって、歌詞のテーマがちょっと似てる気がするんですよね。今、かしゆかさんが「『TOKIMEKI LIGHTS』のほうが先にできていた」と話していたのを聞いてふと思ったんですが、もしかしたら当初アニバーサリーイヤーのタイミングを意識して作った曲は「TOKIMEKI LIGHTS」だったのかも。あくまで“かも”の話なんですが。

全員 あー!

のっち 確かにあるかもねー。

かしゆか 「いつも 不安とドキドキ 旅をし続けてきたよ 今も」とかね。

あ~ちゃん 「銀河を超えて 星屑たちの川上り 光のように ときめくままに 旅してたいよ」もね。実際のところはわからないけど、そう考えるとめっちゃ素敵じゃない?

Perfume ニューシングル「STAR TRAIN」/ 2015年10月28日発売 / UNIVERSAL J
初回限定盤 [CD+DVD] / 1998円 / UPCP-9012
通常盤 [CD] / 1000円 / UPCP-5008
CD収録曲
  1. STAR TRAIN
  2. TOKIMEKI LIGHTS
  3. イミテーションワールド
  4. STAR TRAIN -Original Instrumental-
  5. TOKIMEKI LIGHTS -Original Instrumental-
  6. イミテーションワールド -Original Instrumental-
初回限定盤DVD収録内容
  • STAR TRAIN - Video Clip -
  • Perfume View
映画「WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT」
10月31日より東京・TOHOシネマズ 新宿ほか全国ロードショー

2014年にアメリカ、ヨーロッパ、アジア各地で開催されたツアー「Perfume WORLD TOUR 3rd」、および今年3月にアメリカ・テキサス州オースティンで開催されたフェスティバル「SXSW 2015」でのPerfumeに完全密着したドキュメンタリー映画。総撮影時間500時間におよぶ映像で、最新テクノロジーを駆使したライブパフォーマンスと、その裏側にあるメンバー3人の喜び、苦悩、葛藤を記録している。

スタッフ
監督:佐渡岳利
音楽:中田ヤスタカ(CAPSULE)

キャスト
Perfume(あ~ちゃん、かしゆか、のっち)

主題歌:Perfume「STAR TRAIN」

Perfume(パフューム)
Perfume

あ~ちゃん(西脇綾香)、かしゆか(樫野有香)、のっち(大本彩乃)により2000年に広島で結成。2003年に活動拠点を東京に移してからは、プロデューサーにcapsule(現:CAPSULE)の中田ヤスタカを迎え、インディーズレーベルで精力的に活動を開始。2005年にシングル「リニアモーターガール」でメジャーデビューを果たし、近未来的な世界観のサウンドとダンスで耳の肥えた音楽ファンの間でも高い評価を獲得する。2007年に「NHK環境・リサイクルキャンペーン」テレビCMに出演し、CMソング「ポリリズム」が大ヒット。テクノポップブームの火付け役となり、2008年には日本武道館、2010年には東京ドームでのワンマンライブを成功させる。

2011年にはピクサー映画「カーズ2」の挿入歌&日本語吹き替え版エンディングテーマに、アメリカのスタッフによる指名で「ポリリズム」が抜擢。2012年にユニバーサルJに移籍してアルバム「JPN」のiTunes Store世界配信を実施し、同年4月に「キリンチューハイ 氷結」のCMソング「Spring of Life」のCDシングルをリリースする。10月にアジア4カ国で行われた初の海外ツアーは大成功のうち終了し、翌2013年にはヨーロッパ3カ国での単独公演を実施。フランス・カンヌで開催された世界最大の広告祭「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」に日本人アーティストとして初めてゲストとして招待され、プロジェクションマッピングを駆使したパフォーマンスで喝采を浴びる。同年10月にアルバム「LEVEL3」をリリースし、12月に東京ドーム、大阪・京セラドーム大阪にて計4日間の単独公演を敢行。2015年にはアメリカ・テキサス州オースティンで開催されたの世界最大規模のフェスティバル「SXSW 2015」に出演し、インタラクティブメディアの祭典「SXSW Interactive」のヘッドライナーを務めた。同年9月からはメジャーデビュー10周年を記念して、東京・日本武道館や広島・広島グリーンアリーナでのライブを含む計10日間のイベント「Perfume Anniversary 10days 2015 PPPPPPPPPP」を開催。ワールドツアーの様子を追った初のドキュメンタリー映画 「WE ARE Perfume-WORLD TOUR 3rd DOCUMENT」が10月に日米同時公開され、さらに同映画の主題歌「STAR TRAIN」をシングルとしてリリースした。