ナタリー PowerPush - THE NOVEMBERS
さらに強度を増した音と精神 ニューアルバム「Misstopia」完成
やっぱり音楽は人生だと思う
──その価値観の話は、例えばリストラされたっていう人に対しても響くかもしれませんね。
そうですね。ある側面から言うと自分の役割を奪われたっていうことですから、その仕事に就いてることが自分のアイデンティティだったり、生きる目的そのものだったりしたらその人は“取り残された”と感じると思うんです。でもそれがそうじゃないとしたら……僕は誰に音楽を止められることもないですし、生活と人生は別だと思ってて、やっぱ音楽は人生だと思うんですよ。生活は生活で。だからそういう意味で言うと、例えば僕がお金を稼ぐ何か、アルバイトをして、それを切られたとしても何も思わない。生活にかまけてたりする心が僕はあまりないので。だから会社自体が人生だって言うなら、それは気の毒なことだと思う。でも会社が人生なんていうのは、そもそもおかしいですからね。会社のために生まれてきたんだったらそう言えばいいけど。うん。
──なるほどね。小林さんが「壊したいのは自我かもしれない」っておっしゃるのは、自分を肯定した上でさらに進みたいっていうことなのかな、と、今思いました。
うーん。どうなんだろうな……。
──自分の考えてることややってることも古くなっていきますからね。
あー、そうです、そうです。うん。そうなんですよね。
──だんだんTHE NOVEMBERSの今回のアルバムの開かれたサウンドと、でも言葉はどこか冷徹なほど一貫してる、そのバランスの謎が解けてきました(笑)。
なるほど。でもやっぱり言葉って、“意味”という側面もありつつ、“ただの言葉”っていう気もしますし。あと、同じ言葉でも意味が複数ある時点で危うさはあるし、教養があった上でのことになってしまう。だから、その人それぞれの中にイマジネーションの鍵があって、僕らの音楽が感じるっていう体験の一環になれるのは、すごく光栄なことだと思ってます。だから自分の中でちゃんと意味のある言葉を日本語としてちゃんと出せてることはよかったと思ってるんです。
ブログは時給0円の趣味
──で、ここからは余談なんですけど、小林さんはけっこうまめにブログを書いてらっしゃいますよね。
そうですね……ブログなんていうのはもう、書くほうは割と飽きてると思うんですけど、でも、僕は人が見ることを前提に書いてるので、なんだろうな……半ば時給0円で、こうたいして達成感のない趣味って言いますかね(笑)。
──(笑)そりゃ、そこに生産性を求めちゃあね? ただ拝見していて、すごく健全なリスナーだなぁと思うわけですよ。
リスナーとして? あー、なるほど(笑)。
──少なくとも数日のあいだに、豊田道倫さんのライブを観に行き、川本真琴さんの新譜を楽しみにしていて……。
ははははは!
──自分では歌いそうにないけど、Charaさんが歌ったら良さそうな曲ができた、と。
はいはい(笑)。
──なんとなく、想像できます(笑)。
ホントですか!? いや、ホントにその話をナタリーさんに載っけてもらってCharaさんから連絡が来るといいんですけど(笑)。
──ブログを読んでいると、小林さんがどんな音楽を好きなのかバレバレになっちゃいますけどね。
あー、そうか、影響を受けた音楽がわかってしまうとか? でもそういうのは別にいいです。わかられたいとも思いませんけど、バレたくないとかそういう気持ちもないんですよ。
CD収録曲
- Misstopia(ミストピア)
- Figure 0(フィギュア ゼロ)
- dysphoria(ディスフォリア)
- pilica(ピリカ)
- パラダイス
- sea's sweep(シーズ スウィープ)
- Gilmore guilt more(ギルモア ギルトモア)
- I'm in no core(アイム イン ノー コア)
- Sweet Holm(スウィート ホルム)
- ウユニの恋人(ウユニノコイビト)
- tu m'(チュム)
THE NOVEMBERS(ざ・のーべんばーず)
小林祐介(Vo,G)、ケンゴマツモト(G)、高松浩史(B)、吉木諒祐(Dr)からなるロックバンド。2002年に小林と高松によって前身となるバンドが誕生。2005年3月に前身バンドが解散し、同時にTHE NOVEMBERSとしての活動がスタートする。2007年11月にバンド名を冠した1stミニアルバム「THE NOVEMBERS」をリリース。退廃的な歌詞と、鋭利さと重厚さをあわせ持つエモーショナルなサウンドがインディーズシーンで話題を集める。オーディエンスを圧倒する激しいライブパフォーマンスが熱い注目を浴びる中、2008年6月に初のフルアルバム「picnic」、2010年3月に2ndアルバム「Misstopia」をリリース。