ナタリー PowerPush - 新山詩織

不器用な17歳の本音「ゆれるユレル」

学校は箱の中だった

──ここからはもうちょっと詩織さん個人に寄った話を聞かせてください。幼少期はどんな子供でしたか?

「ドキュメンタリーフィルム・ダイジェスト "Road To Stage"」のワンシーン。

今とはまったく正反対の……すごい明るかったし、写真撮られるのも大好きだったみたい。同じポーズしてる写真がうちに何枚もある(笑)。でもやっぱり人見知りの部分だけはずっと変わってないですね。

──明るくて写真を撮られるのも大好きだった子が、正反対の性格になってしまったのには何か理由があるんですか?

親から一番「詩織はここから変わった」って言われる出来事があって。自分が小1、小2くらいのときに5、6年生の女の子が自分のことを見に来てたらしいんです。自分ではまったくそんなこと思ってないんですけど、「すごいかわいい子がいるよ」とか言って。騒がれてたのははっきり覚えてないんですけど、たぶんそこから人に見られるっていうのがちょっと怖くなった。それで小学校高学年くらいから、こう、人間関係的なものも少しずつわかってきて。

──小学校のとき、どんな人間関係に気付いてしまったんですか?

うん……難しいな。陰口とかはありました。

──大勢の人に見られたり、陰口を聞いたりして、学校って過ごしにくいなっていう印象を持って中学に入るんですね。じゃあ、学校は自分にとってどんなところだと思います?

……1つの決められた箱の中に入れられてるみたいな、そういう感じ。中学生のときはクラスの人たちとしゃべるだけでも、というか人としゃべるのがもう、大変だったんです。誰か1人が嫌なんじゃなくて、その場の雰囲気、場所自体が息苦しくて。仲いい子はいっぱいいたんですけど、普通に学校に行って過ごしてく中で、やっぱり仲いい子たちだけと絡むわけじゃないから。そういう嫌な気持ちを引きずったまま高校に入学して。高校からはもう、中学のことは忘れてとにかく前向きに行こうっていう心構えで、新しい気持ちでがんばろうと思ってたんですけど……やっぱりモヤモヤして消えないこともあって。でも今はもう、学校も楽しいです。

──今は楽しい?

最近になってやっと、「ああ、今楽しいや」って思えるようになりました。周りの友達がみんないい人だから、それもあると思うんですけど。でも中学時代はほんとに、ただ箱の中に入れられて周りに動かされてる感覚がありました。

──高校はいい人に恵まれたし、大好きな音楽にのめり込める環境もできたおかげで、楽しく過ごせてるんですね。

そうは言ってもたまに、友達と話してて「ああ今これ言いたいんだけどちょっと言えないなあ」っていうことはあるけど。でもやっぱり音楽を通して、気持ちも軽くなったし。ずっしりした重いものがだいぶなくなったと思うんです。気持ちが切り替えられるようになった。

ギター持って歌ってるときが一番自由

──詩織さんがギターを手にしたきっかけはなんだったんですか?

うちにもともとお父さんのギターが置いてあったので、自然にギターに興味を持って。中学の軽音楽部に入ったときはまだベースとかドラムとかぜんぜん知らなかったです。

──軽音に入って、バンドでこのモヤモヤした気持ちを爆発させたい!っていう気持ちがあった?

まだそういうはっきりした気持ちはなかったんですよね。軽音楽部に入ったときは、音楽もぜんぜん知らなかったし、バンドの楽しさとかもまだわかんなかった。でも学校内の文化部発表会で初めてバンドで全校生徒の前で演奏したときに「ああこんなに気持ちいいんだ」と思って……。今考えると、人前で何かやるっていうこと自体も自分の中では絶対ありえないことだったんですけど。そのとき初めて、バンドで音を出して演奏するっていう気持ちよさというか、楽しさがすごくわかった。そこからはもうずっとバンド楽しい! バンドやりたい!っていう気持ちです。

──バンドだったら人前に出たいっていう気持ちになれるんですね。

全校朝礼とかで、たまに壇上に1人で上がるとか、委員会の委員長になったときに全校生徒の前で話すこともあったんですけど。そのときは当たり前だけどギターも持たず、ただしゃべるだけで。そういうときはほんとにもう、手汗ひどいし、大変だけど……ギター持って音出して歌ってるときは、緊張とか気にしたりとかはまったくないんです。たぶん自由なんだと思う、一番自分を全部出せるから。

1stシングル「ゆれるユレル」 / 2013年4月17日発売 / 1050円 / ビーイング / JBCZ-6001
「ゆれるユレル」
収録曲
  1. ゆれるユレル
  2. 現在地 新山詩織 with THE GROOVERS
  3. ゆれるユレル -instrumental-
新山詩織(にいやましおり)

新山詩織

1996年生まれのシンガーソングライター。幼少期より父親の影響でブルース、パンク、ロックを聴いて育つ。2012年、ビーイング主催の新人発掘オーディション「Treasure Hunt ~ビーイングオーディション2012~」に「詩織」名義で出場。オリジナル曲「だからさ」と椎名林檎「丸の内サディスティック」を弾き語りで披露してグランプリを獲得する。同年12月、新山詩織としてアーティストデビュー。2013年4月17日にはサウンドプロデューサーに笹路正徳を迎えたメジャー1stシングル「ゆれるユレル」をリリースする。