ナタリー PowerPush - 中村一義

「最高宝」「魂の箱」「魂の本」 至高の3アイテム同時リリース

中村一義インタビューダイジェスト公開中

ベストアルバム「最高宝」選曲者からのメッセージ第3弾公開中

100sの活動ではありながら、
僕の帰着点でもあったんですよね、『OZ』は。
幼少の頃の話から全部繋がることなんだなって。

──中村さん、ホントに大変なところにまで到達しましたよね。「僕の人生はバラ色に変わった!!」って人が、『OZ』では死の直前まで来ちゃったわけですから。

中村 『金字塔』『太陽』『ERA』『100s』から『OZ』までっていうのは、なんだろうな、昼間から夜になるまでみたいな。五枚かけて、そういう印象だったんですよね。「Honeycom.ware」のPVで夜景の中、あらゆるライトが点滅するっていうのも僕らのアイディアだったし。だから『OZ』は、すごく夜の匂いがするんですよ。ニール・ヤングで言ったら『トゥナイト・イズ・ザ・ナイト』。夜のイメージっていうのがあるんですよ、やっぱり。夜って言ってもアーバンな夜じゃなくて、漆黒の闇っていうか、森の闇っていうか。

──夜の深いところ、「本当に朝を迎えられるんだろうか?」「このまま終わっちゃうんじゃないか?」ってことですよね。永遠に朝が来ない夜というか。

中村 そうですね。まあ、これもひとつの運命というか、表現的な運命なのかなと思いましたけどね。

──昔のロックスターなんか、それで本当に身を滅ぼしちゃうわけじゃないですか。

中村 死んだら会えるかもってところまで行っちゃうんで、それがハッピーだと思えば、そっちに行っちゃうってことですよね。だから100sっていうバンドの活動ではありながらも、やっぱり僕の帰着点でもあったんですよね、『OZ』は。僕もちゃっかり成長してるよ、みたいな。実は幼少の頃の話から、全部繋がることなんだなっていう。

だから『OZ』というアルバムは、自分のためにも作れて本当に良かったです。「死の直前まで行って何が見えるか?」「聴く人に何を届けられるのか?」っていうのは、すごく考えましたから。でも、ホントに申し訳ないんですけど、売れるとか売れないとか、まったく考えなかったですね。もちろん制作費的なところは、いつも聞いてたんですよ。「二年かかってるから、これは途方もないだろうな」って。ただ、やり切ったな、映画を作るような感じで作ったなっていう満足はありましたね。

──『OZ』の帯には「ファーストにして、すでにベスト!」ってキャッチコピーが入ってたと思うんですけど、それに負けないぐらい、ものすごく評価の高いアルバムになりましたよね。

中村 それに関しては、本当に「ざまあみろ」なんですけどね(笑)。ちゃんとした評価をみんなから聞けたときに「ざまあみろ」ってホントに思ったんですよ。これだけ年をまたいでやってるわけですからね。しかも、すごく長い間評価されたアルバムで、発売当初よりも一年後とかのほうがウェブのレビューとかも増えてて、「神アルバム!」とか書かれるようになって。そういうふうに『OZ』を聴いて、死生観みたいなものを感じてくれた人たちが多かったっていうのは、本当に嬉しかったですよ。完璧には伝わらなかったかもしれないですけど、言いたかったことは言えたのかなあって。だから、あの世のみんなも喜んでるだろうよ、と。

『金字塔』っていうのは、イッちゃってる自分を見せてるアルバムだったじゃないですか? 『ERA』は過剰な表現形態というところで、また狂って。今度は、もう一回、それを意識的にやったのが『OZ』っていうか。ただ、そこで意識はあるんだけど、どうやって飛ぶかっていうのを自分ではわかっていないんで、そこに関しての意識がないんですよ。後で振り返って「こういう飛び方だったんだなあ」って事実があるだけで。だから『OZ』のレコーディング中も、みんな、一番発言として多かったワードが「持ってかれる」でしたからね。「自分もいつかは死ぬんだ」「持っていかれそうになる」って。まっちぃなんか、いつも「持ってかれる」「持ってかれる」って言ってましたから。

──ある種、神がかってますよね。

中村 だから、100sというバンドが始まりを迎えるにあたって「自分たちは、どういうアルバムが作れるんだろう?」っていうのをミクロの次元まで解析して、そのとき目の前にあるテーマに恐れず、果敢に挑んでいったのが『OZ』だったと思うんですよね。ただ、こんなにしんどいとは、っていう。

──これを中村さん名義で、たった一人で作ってたら、ホントに持っていかれてましたね。

中村 だから、バンドであって良かったなって。一人だったら、まず作ろうと思わないですしね。アルバムがあって、僕も大人になれたっていうのが大きかったなって思いますね。

──夜が明けて、次の朝に行けた、と。

中村 そうですね。そして『OZ』のツアーが終わり、年が明けた二〇〇六年の一月に二郎さんが死んだんです。そのときメンバーが葬式に来てくれて、葬式後に僕の家に集まったんですけど、そこで僕が「これで『OZ』プロジェクトが終わりました」って言ったんですよ。「お疲れ様でした」って。

中村一義、初の"語り下ろし自伝"本

「魂の本~中村全録~」

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DISC 1
  1. 犬と猫
  2. ここにいる
  3. 永遠なるもの
  4. 主題歌
  5. 魂の本
  6. 笑顔
  7. ピーナッツ
  8. ショートホープ
  9. ジュビリー
  10. ハレルヤ
  11. 最高(Acoustic Ver.@状況が裂いた部屋)
DISC 2
  1. キャノンボール
  2. セブンスター
  3. 扉の向こうに
  4. いきるもの
  5. 希望
  6. Q&A
  7. つたえるよ
  8. モノアイ
  9. 最後の信号
  10. 愛すべき天使たちへ(Acoustic Ver.@100st.)

COMPLETE BOX SET「魂の箱」 / 2011年4月13日発売 / 19800円(税込) / FIVE D plus / VFCV-00075~84/B

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「魂の箱」収録内容

自伝本「魂の本~中村全録~」 / 2011年3月23日発売 / 2940円(税込) / 太田出版

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※2月28日までの予約限定生産商品

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アーティスト写真

中村一義(なかむらかずよし)

1975年生まれ。東京都江戸川区出身のシンガーソングライターで、1人で作詞、作曲、アレンジ、すべての生楽器を演奏する制作スタイルをとる。1997年1月に「犬と猫 / ここにいる」でデビュー。1997年6月に「金字塔」、1998年11月に「太陽」、2000年9月に「ERA」とオリジナルアルバム3枚をリリース。独特の感性が光る歌詞と繊細なサウンドで人気を博す。2001年、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2001」に出演した際のバンドメンバーが集結し、2002年にシングル3枚およびアルバム「100s」を発表。その後2004年には同メンバーでバンド・100sとしての活動を開始し、現在まで3枚のフルアルバムをリリースしている。