音楽ナタリー Power Push - マデオン×中田ヤスタカ(CAPSULE)

日仏エレクトロポップアーティストの邂逅

フランス生まれのアーティスト、マデオン。現在21歳の彼は、11歳で作曲活動を開始し、17歳でLady Gagaの楽曲をプロデュースしたのをはじめ、これまでにColdplayやTwo Door Cinema Clubなどの楽曲を手がけてきた。今年4月にデビューアルバム「Adventure」をリリースし、8月にはライブイベント「SONIC MANIA」および「SUMMER SONIC 2015」出演のために来日。音楽ナタリーでは、マデオンが多大な影響を受けているという人物・中田ヤスタカ(CAPSULE)との対談を実現した。

マデオンは2008年に発表されたCAPSULEのアルバム「MORE! MORE! MORE!」を機に中田の作品にのめり込んだという。2人の接点は中田がマデオンの「Pay No Mind feat. Passion Pit」のリミックスを手がけた今年の年頭に遡るが、実際に対面するのはこれが初めて。エレクトロニックミュージックのクリエイター同士ならではのディープな対話は、互いの音楽に対する感想から制作における姿勢、具体的な音楽制作の手法までにおよび、さらには思わぬ共通項も見えてきた。

取材・文 / 村上ひさし 通訳 / 伴野由里子 撮影 / 西槇太一

 
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2人の出会いと互いの印象

──中田さんがマデオンさんの存在を知ったきっかけはなんでしたか?

左からマデオン、中田ヤスタカ(CAPSULE)。

中田ヤスタカ 彼が過去に来日したとき、知り合いから「(マデオンが)ヤスタカのCDをSNSで取り上げてたよ」と聞いたんです。僕はSNSをやらないので実際にはそれを見ていないのですが、おそらくそれが初めて彼を知ったきっかけだったと思います。

マデオン 僕はCAPSULEの曲をいっぱいSNSにアップしていたし、DJセットでもいつもかけていたんです(笑)。

──マデオンさんは中田さんの音楽のどこに魅了されたのですか?

マデオン コードの組み立て方が非常に知的で複雑。だけど同時にすごくポップであるところに独創性を感じ、衝撃を受けたんです。西洋のポップミュージックは基本的にシンプルでわかりやすいものが多いけれど、中田さんの音楽はその要素に知性も加わっているように感じられる。

中田 すごくうれしいですね。マデオンの曲も、ほかの海外アーティストの曲とは全然違っている。なんて言えばいいのかな……音楽をやってる人が聴いたらすごくビックリすることをやっているのだけれど、シンプルに聴けるようになっている。

マデオン

マデオン どうもありがとう! 中田さんの音楽もまさにそうですよ。例えばPerfumeの「ポリリズム」のプロダクションは、ポリリズムという難解で複雑なリズムの上に、誰もが楽しむことのできそうなポップなメロディが乗っているのがすごいなって。ああいうコード進行やメロディの書き方は、どういうところから影響を受けたものなのですか?

中田 僕はゲーム音楽からの影響が大きいんですよ。マデオンの曲にもよくチップチューンみたいな音が入ってますよね。最近のゲーム音楽は違うけど、僕が小さい頃に聴いていた8ビットや16ビットのゲーム音楽には歌が入っていなくて、しかも同時に出せる音数が少ない分、少ない音で面白いフレーズを鳴らしていた。小さいときにそういうゲーム音楽に触れていた体験が染み付いているのかもしれないですね。

マデオン 音数が少ない分、アルペジオを使って壮大な世界観を作り上げなきゃならなかったりね。僕にとっても8ビットや16ビットの使い方は同じで、ゲーム音楽は音数が少ない分、1音1音が立って聴こえるのと、子供の頃によく聴いていた音楽だから思い入れが強くて、感情に訴えてくるものがあるのだと思います。

日本語がわからないから歌も1つの楽器として聴いている

──お2人にとって子供の頃に聴いていた音楽から得た影響は大きいのでしょうか。

中田ヤスタカ(CAPSULE)

中田 あえてこうしようとか思っていないのに浮かんでくるアイデアに関しては、小さい頃の影響が大きかったりしますね。僕の親は映画音楽が好きだったんですよ。今の僕は歌モノを作ることで知ってくれてる人が多いかと思うのですが、もともとは声が入っている音楽をあまり聴いてこなかった。僕のベーシックにあるのは、たぶんインストなんです。今は歌モノを作ることが多いので、メロディを先に考えるようになりましたが、もともとは「音作って……あと声も入れなきゃ」みたいな(笑)。声を入れる必要があるかどうかは、プロになってから考えるようになったって感じで、基本的にはサウンドが先なんです。特に日本だとサウンドよりも「何を歌っているか」を聴く人が多いと思うのですが、僕は音自体が「言葉としての意味を持っている」くらいの音楽をやりたいと思ってます。

マデオン 逆に僕は日本語がわからないから、中田さんの音楽を聴くときは、歌も1つの楽器として聴いています。特にAuto-Tuneを使っている曲などはボーカルもシンセ音のように聴こえるので、音楽を構成する要素の1つの要素として聴いてます。

中田 たぶんそれって日本で英語の曲を聴いている人の感覚と同じじゃないのかな。言葉に具体的な意味を感じずに聴けてしまうから、全体として音楽として聴くことになると思うんですよね。

マデオン
マデオン

フランス生まれのエレクトロポップアーティスト。1994年に生まれ、わずか11歳で作曲をはじめる。ネット上に音源のアップなどを通じて水面下で注目を集めはじめた頃に、フランスのリミックスコンテストで優勝。2011年、17歳の頃にYouTubeにて公開した39曲のポップソングをマッシュアップした作品「Pop Culture」は現在までに3000万回を超える再生回数を記録している。さらにLady Gaga、Coldplay、Muse、エリー・ゴールディングといったアーティストの楽曲を制作およびプロデュースした経験した経歴を持つほか、ダンスミュージックの祭典「ULTRA MUSIC FESTIVAL」や、野外音楽フェスティバル「Coachella Valley Music and Arts Festival」などの大型イベントへの出演も果たし、世界的なDJとして躍進を遂げた。2015年4月にデビューアルバム「Adventure」を発表した。7月に中田ヤスタカがリミックスを施した「Pay No Mind feat. Passion Pit – Yasutaka Nakata (CAPSULE) Remix」を日本で先行配信リリース。8月には「SONICMANIA 2015」「SUMMER SONIC 2015」に出演した。

中田ヤスタカ(CAPSULE)(ナカタヤスタカ)
中田ヤスタカ(CAPSULE)

2001年に自身のユニットであるCAPSULEにてCDデビュー。以降、Perfume、きゃりーぱみゅぱみゅのプロデュースをはじめ、アニメ映画「ONE PIECE FILM Z」オープニングテーマ曲や「LIAR GAME」シリーズのサウンドトラック、テレビ・ラジオ番組のテーマ曲制作など多方面にてに活躍している。昨今はカイリー・ミノーグやマデオンへのリミックストラック提供をはじめ、映画「スター・トレック イントゥ・ダークネス」の挿入楽曲に携わるなどグローバルに活動を展開。また自身主催によるレギュラーパーティを定期的に開催しているほか、大型フェスやファッションショーなどにも出演している。