ナタリー PowerPush - 坂本真綾

内澤崇仁(androp)との初コラボ 新たな出会いがもたらす刺激と変化

坂本真綾が今年2作目となるニューシングル「レプリカ」を完成させた。2月にリリースされた前作「SAVED. / Be mine!」の収録曲「Be mine!」ではthe band apartとのコラボレーションが大きな話題を集めたが、「レプリカ」では新たにandrop内澤崇仁との初コラボが実現。さらにカップリング曲「coming up」では、the band apartのベーシスト原昌和が再び作曲とアレンジを手がけている。今回のインタビューではその2曲にまつわる制作エピソードと、デビュー20周年を来年に控えた現在の心境を語ってもらった。

取材・文 / 臼杵成晃

新しい作家さんとの出会いはこの仕事の楽しみの1つ

──前作「SAVED. / Be mine!」からおよそ半年ぶり、今年2枚目のシングルとなりますが、今回の「レプリカ」も前作同様、まずはアニメのオープニングテーマとしてオファーを?

はい。まずは「M3~ソノ黒キ鋼~」のオープニングテーマをというお話があって。

──「Be mine!」ではthe band apartとの初コラボが大きな話題になりましたけど、今回もandropの内澤崇仁(Vo, G)さんと初めて組んだ作品ということで、ナタリーでニュースを掲載した際にはやはり反響が大きかった(参照:坂本真綾、新曲はandrop内澤と共作の「M3」新OP曲)ですけど、これはどういうきっかけで?

シングル制作の話が上がる前に、担当のディレクターが「andropってすごくカッコいいと思うんだよね」という話をしていて、興味を持って聴いてみたんです。すごくいいなと思ったのが、年齢的には私よりも若い人たちなんだけど、音を聴くといい意味で……若くないというと変ですけど(笑)、すごくしっかりしたサウンドをセルフプロデュースで作られているんですよね。このサウンドを自分たちで作っているのは単純にすごいなと思ったし、それでいて今のバンドらしさもあって。音を聴いただけで「この人たちのライブに行ってみたい」と思うような高揚感がすごくあったんです。弦がたくさん入っているのにも親近感を覚えたし。

──それで今回オファーをしたと。

坂本真綾

いつかご縁があればお願いしたいなと思ったんですけど、なんの接点もないし、オファーを受けてくださるかどうかもわからなかったので。でも今回テーマ曲として求められていたものが、andropさんの世界にぴったりだなと思って……思い切って、なんの前触れもなくノックしたというか(笑)。

──坂本さんがほかのアーティストとコラボレーションするときは、一見「ん?」という意外性を感じさせながら、結果的にドンズバのところを突いているような相性のよさを感じるんですよね。なるほどその手があったかみたいな。そのあたりはディレクターさんのセンスというか、網の張り方がうまいなと感じました。

バンアパさんの場合は前回お話したように(参照:坂本真綾「SAVED. / Be mine!」特集 坂本真綾×the band apart(原昌和&木暮栄一)対談 運命の出会いが生んだ“世界征服”コラボ)、向こうから網にかかってきてくれたみたいなところがありますけど(笑)。最近は私も作曲をしますけど、やっぱりシンガーなので、新しい作家さんとの出会いはこの仕事の楽しみの1つにもなっていて。ディレクターも私自身も、普段からアンテナを立てているところがありますね。

──これまではどちらかというと上の世代の方と組むことが多かったですよね。それが前作では同年代のバンアパ、今作では年下のandropという、ちょっとまた新しいモードに突入しているのかなと。

それは単に私が歳を重ねてきたからかも(笑)。10代で音楽を始めたときは当たり前に私が一番年下で、今思うとなんというか……すごくシブいメンバーに育てられたというか。一流の方々に育てられてきて、気が付けば同世代のミュージシャンが活躍する時代になり、ついには年下の方に頼むことになるなんて。

「まさにこれです」みたいな

──andropとして確固たる個性を持った内澤さんが、坂本さんにどのような曲を作るんだろうかと興味深かったんですけど、「レプリカ」は思っていた以上に“坂本真綾の音楽”になっていて驚きました。

内澤さんはもともと私の音楽を知っていたそうなんですけど、一緒に曲を作る上で、改めてこれまでの楽曲をじっくり研究してくださったみたいで。だからこれはひとえに、内澤さんの研究の賜物ですね。坂本真綾らしい音楽ってどういうものだろう?って一生懸命考えながら作ってくださったんです。それでいて、私がandropさんの音楽が好きでお願いしたんだということも踏まえて、内澤さんならではのサウンドに仕上げてくださっていて。

──坂本さんからのオーダーはどのようなものだったんですか?

まずは「M3~ソノ黒キ鋼~」のお話の世界観をお伝えして。作品が持つダークな雰囲気を表現しつつも、オープニングテーマだからどこか華やかな要素もほしかったんです。例えばライブのオープニングで歌えるような、スイッチがパッとオンに切り替わるような、そんな曲にしたいとお願いしました。

──そういう意味ではまさにオーダー通りの仕上がりですね。ダークな要素はありつつも、単に暗いだけではない、突き抜けたムードがあって。

最初に上がってきたデモがほとんど最終形に近いものでしたね。すごい完成度だったし、「まさにこれです」みたいな。スムーズすぎるぐらいスムーズにどんどん制作が進みました。内澤さんがおっしゃるには「僕はどうしても曲が明るくなる傾向にある」と。放っておくと明るい曲ばかりできるんですって。私は逆で、自分で曲を作るときは放っておくとどんどん暗くなるので(笑)、そういうクセや性格みたいなものはあるんだなあって。「レプリカ」もダークな部分はあるけれど、サビには疾走感と目の前が開けるような開放感があるんですよね。

ニューシングル「レプリカ」 / 2014年8月20日発売 / FlyingDog
初回限定盤 [CD2枚組] 1944円 / VTZL-85
通常盤 [CD] 1188円 / VTCL-35190
CD収録曲
  1. レプリカ
    [作詞:坂本真綾 / 作曲・編曲:内澤崇仁 / ストリングス編曲:内澤崇仁・石塚徹]
  2. coming up
    [作詞:坂本真綾 / 作曲・編曲:原昌和]
  3. レプリカ -Instrumental-
  4. coming up -Instrumental-
初回限定盤特典 ミニライブアルバム「DUO」収録曲
  1. プラチナ
    [作詞:岩里祐穂 / 作曲:菅野よう子]
  2. Be mine!
    [作詞:坂本真綾 / 作曲:the band apart]
  3. ねこといぬ
    [作詞:坂本真綾 / 作曲:菅野よう子]
  4. シンガーソングライター
    [作詞・作曲:坂本真綾]
坂本真綾(サカモトマアヤ)

1980年3月31日生まれ。幼少時より劇団で活動し、1996年にテレビアニメ「天空のエスカフローネ」のオープニングテーマ「約束はいらない」で歌手デビューを果たした。声優、女優としても活躍しながら、コンスタントにオリジナル作品を制作している。2012年11月にはシングルコレクションアルバム第3弾「シングルコレクション+ミツバチ」を発表。同年12月31日には東京・中野サンプラザにて初のカウントダウンライブを行った。2013年3月には全曲の作詞・作曲を自ら手がけた最新アルバム「シンガーソングライター」、同年7月には大貫妙子が作詞・作曲を手がけたニューシングル「はじまりの海」を発表した。2014年2月にはthe band apart、鈴木祥子とのコラボレーション楽曲を含む3曲入りシングル「SAVED. / Be mine!」をリリース。8月にはandrop内澤崇仁との初コラボとなるニューシングル「レプリカ」を発表した。