ナタリー PowerPush - 小松未可子

“小松さん”と“加藤さん”の幸せな関係

ゲームにログインできない悩みをラブソングに昇華

──明かせる範囲で構わないんですけど「人間関係に追われていた」って具体的には……。

小松未可子

本当に些細なことなんですけど、例えば小松家では毎日20時になったら、あるネットゲームに家族一同がログインするルールが設けられてまして(笑)。「今日はこんなことがあってね」というメールをする代わりにゲームにログインすることで生存確認をするっていう。

──今の小松さんの忙しさを考えるに、まず守れなそうなルールですね(笑)。

本当にそうというか、ゲームの画面を見ることで母が安心できることはわかっているんですけど、一時期本当にログインできないことが続いたんです。そうなると母はやっぱり心配してくれるんですけど、私は私で「返事をしなきゃ」と追われているような気持ちになっちゃって(笑)。

──ここが作詞家・小松未可子のユニークなところだと思うんですけど、言ってしまえばその些細な悩みに着想を得て、すれ違う2人っていうシリアスなラブソングを紡げている。

ありがとうございます(笑)。毎回歌詞を書くときの取っ掛かりは、こういう日常の些細なことだったりするんです。それをどうやったら別のストーリー、「Salvage」だったら恋愛にもとれる言葉にもっていけるかなっていうことを考えていますね。

──「ゲームにログインしないで母親から怒られて」っていう詞だと……。

聴いている人にしてみたら「なんのこっちゃ?」ですよね(笑)。

──はい(笑)。でもラブソングに置き換えれば、多くの人の共感を呼ぶ、と。

些細な出来事を別のストーリーに置き換える言葉遊びを自分自身が楽しみたいっていう気持ちもあるんですけど、やっぱり人に聴いていただくものですから。ちゃんと皆さんに伝わる言葉で歌いたいから、共感してもらいやすい言葉やストーリーを探すようにはしています。

韻と英語でディスコミュニケーションを演出

──その「伝わる言葉」の使い方も面白いですよね。1stミニアルバム「cosmic EXPO」の「M from...」のときにも見せた韻踏み芸が炸裂してて(笑)。サビの「You said」から始まるフレーズは「イラナイ」「シラナイ」と日本語の「ナイ」で脚韻を踏んで、それに応答する「and I」のあとは「tell a lie」「lala..bye」「lala..lie」と英語の発音記号的には「άɪ」で踏んでいる。

サビは誰かと誰かが何かを言い合っている感じにしたかったんです。ケンカにもならない、一方的な会話というか。相手は日本語で言っているんだけど、自分は英語で言っているから、お互いの言っていることは伝わらない。ついさっきまで図れていた意思の疎通が急にできなくなる感じ、急にすれ違う感じをどうやって書けるかな?と考えた結果、こういうフレーズにしてみました。

──確かにアルバム「THEE Futures」のタイトル曲にも通じるダンストラックの反復リズムに乗って日本語と英語で立て続けに韻を踏んでるから、聴いてると気持ちよさが先立って。だんだん言葉の意味が消失していくんですよ。ホントに会話にならなくなっている(笑)。

nishi-kenさんのデモではnishi-kenさんご自身が仮歌を入れてくださるんですけど、その仮歌って言葉になっていない言葉みたいなものが随所に入っているんですよ。でも曲を作った方がそういう言葉で歌っているっていうことは、それに近いフレーズで歌うのが正解というか、一番気持ちよく歌えるのはその言葉ということだと思っていて。だからnishi-kenさんの仮歌を聴きながら「この言葉が似ているかな?」「この言葉が出てきたってことは、じゃあどういう言葉を続けたらちゃんと物語を組み立てられるかな?」とパズルをすることが多いんです。で、今回は特にその言葉パズルが面白くなっちゃって(笑)。夢中になってパズルをやっていたらいつの間にか歌詞ができちゃった、みたいな感じなんです。

自らの手を動かし、何かを学ぶこと

──主演映画のイメージソングと、作詞家としてのスキルを見せつける新曲という、派手な2曲を収めたシングルを出した今、やってみたいことってあります?

お仕事に関しては、何かファンの方や周りの皆さんから刺激をもらった瞬間、それをヒントに「あっ、あれやりたい」「これやりたい」と思い付くタイプなので、そのヒントを手に入れるためにも、いろんな活動を通じて自分自身のインプットを増やせたらいいな、って思っています。

──プライベートでは?

運転免許を取りたいです。

──どこか旅行に出たいとか?

いや、怖がりなので自分の運転で旅行っていうのは……。

──じゃあなぜ免許を?(笑)

なんか最近「学ぶ」ということをしてないなあ、っていう気がするので。もちろんお芝居も歌も日々勉強ではあるんですけど、その勉強は感覚的なもの。何かを感じて、何かをつかむっていうものなんですよね。そういう勉強は続けているつもりなんですけど、学生の頃のように自分の手を動かして、何かを覚えて、それを自分の中に吸収させるっていうことはほとんどしていないなあ、という気がしていて。なんか脳が落ち着いちゃっているなあ、って(笑)。

──確かに大人になると学科教習みたいな座学って学生の頃ほどやらなくなるし、職種によってはクルマの運転みたいな体を使って何かを覚える訓練もほとんどしなくなっちゃいますもんね。

そうなんですよね。学生の頃と違って誰かが何かを自動的に教えてくれるっていうことはもうないですし。だから運転免許なのかな、と思っています。改めて机に向かって鉛筆を握って何かを書いてみたり、自分でハンドルを握ってまさに“舵を取って”みたりしたら、その刺激がお仕事のヒントになるかもしれない。音楽活動で言うなら、その経験から生まれてくる言葉や詞がある気がしているんです。

小松未可子
ニューシングル「Sail away」/ 2014年2月22日発売 / STARCHILD
初回限定盤 [CD+DVD] 1700円 / KICM-91501
アニメ盤 [CD] 1200円 / KICM-91502
通常盤 [CD] 1200円 / KICM-1501
CD収録曲
  1. Sail away
  2. Salvage
  3. Sail away(Instrumental)
  4. Salvage(Instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • 「Sail away」MUSIC CLIP
同時発売 リミックスアルバム「cosmic Explosion」/ 2014年2月22日発売 / 2600円 / STARCHILD /KICS-93018
CD収録曲
  1. 未來航路 987mix
  2. Black Holy Ha!maguremix
  3. Infinity Sky DomDom mix
  4. ジャスミンの風に Root258 mix
  5. M from… Akatsuki mix
  6. 砂漠のタイムマシン iiP feat.rosco motion orchestra mix
  7. Up to Countdown cosmic Explosion mix
  8. 透明な夜空 ~瞬く星に包まれて~ Hoshimigaoka mix
  9. ユメノアリカ Sunny World mix
  10. cosmic Explorer
小松未可子(こまつみかこ)

小松未可子

1988年11月11日、三重県生まれの声優、歌手。女優として活動しながら、2010年にアニメ「HEROMAN」の主人公ジョセフ・カーター・ジョーンズ役で声優としてのキャリアをスタート。2012年1月より放送のアニメ「モーレツ宇宙海賊」では主人公・加藤茉莉香の声を務め、4月には同アニメのイメージソング「Black Holy」で個人名義による歌手デビューを果たす。7月にはミニアルバム「cosmic EXPO」、11月7日に2ndシングル「冷たい部屋、一人 / 夏至の果実」を、2013年2月13日には1stフルアルバム「THEE Futures」をリリース。同7月には3rdシングル「終わらないメロディーを歌いだしました。」を、12月には4thシングル「虹の約束」を発表する。またその一方で2012年、2013年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでの「Animelo Summer Live」に、2014年1月には東京・日本武道館での「リスアニ! LIVE 4 SUNDAY STAGE」に出演するなど、大規模フェスにも数多く招聘される。そして同年2月、自身が主演を務める劇場アニメ「モーレツ宇宙海賊 ABYSS OF HYPERSPACE -亜空の深淵-」のイメージソング「Sail away」をリリースした。