ナタリー PowerPush - 小松未可子
拾いどころ満載!みかこし伝説徹底検証
アイドル時代に考えていたのは「いかにグループの中で潰れないか」
──その頃、マリンバ教室や学校での発表会以外で演奏や歌を披露したり、レコーディングしたりというご経験は?
ないですね。中学生のときにこのお仕事を始めたんですけど、当時、藤井隆さんの妹分として結成された、よしもと(アール・アンド・シー)の「いもうと」っていうアイドルグループに所属していまして。そのグループで、かぐや姫の「妹」をカバーしたんですけど、それが人生で初めてレコーディングした楽曲でした。
──歌うのってお好きでした?
大好きでした!「倉木さんみたいになりたい」っていうくらい、倉木麻衣さんに憧れすぎていろいろオーディションを受け始めたのが芸能界に入るきっかけだったので(笑)。ただ、CDデビューが決まったときは「歌を出せる。わーいっ!」とは思ったんですけど、グループだからというのもあって「あんまり自分のこだわりみたいなのを押し出すのも違うだろうな」「グループの中でどうやって自分の個性を見せればいいんだろう」っていう思いもあったんですよ。
──中学生なんて一番自意識が強い時期だろうに、「私が一番人気になってやる」っていう気持ちはさておいて、まずはグループでのチームプレイみたいなものを意識したんですか?
もちろんチームプレイも意識したんですけど、それ以上に考えていたのは「いかにグループの中で潰れないか」(笑)。ほかのメンバーには「自分がいかに目立つか」っていう気持ちもあったのかもしれないですけど、私はなぜか「自分が一番になれるわけがない」と思っていて。まずはグループ内での立ち回り方というか、ポジションを探ってました。
──その後はプロダクションを移って役者、声優としてのキャリアがスタートしました。そして今年の4月には、グループではない、小松さん個人名義のシングル「Black Holy」をリリースと。
だからもう、ホントにビックリして! 声優のお仕事自体楽しいし「いつかキャラクターソングなんかを出せたらもっと楽しくなるだろうな」なんて漠然とイメージしてはいたものの、駆け出しの役者が自分名義のCDを出せるなんて全く思ってなかったので。まさかキャラソンを出すよりも早く個人で歌わせていただけることになろうとは(笑)。
自分色ってなんだろう?
──元々歌うことも視野に入れて芸能活動を始めているだけに、やっぱりうれしかったですか?
もちろんそうなんですけど、いもうとのときと同じく……いや、いもうとのとき以上かな。うれしい半面「どうやって自分らしさを出せばいいんだろう」「自分色ってなんだろう?」っていうことは考えましたね。
──誰に足を引っ張られるわけでもない個人名義での活動なんだから、思うように歌えばいいじゃないですか。
いや、今の事務所に入るときに特技を訊かれたんですけど、その場にマリンバがなかったので(笑)、aikoさんの曲を歌ったんです。そしたら事務所の方から「あっ、モノマネだね」と。そして「小松さんの色で歌ってみてよ」って言われたんですけど、そのとき「あれっ!? 私の色がわからない」ってなっちゃったんです。以来、その日のことをずっと引きずっていたので、デビューのお話をいただいたときはすごく悩みました。「Black Holy」を出したあと、「K」のキャラソンを歌わせていただいたんですけど、そっちのほうが歌いやすかったですし。役作りに近いというか、歌い方や声の出し方をキャラクターに寄せられるので。
──でも、個人名義の場合は参照できるキャラクターが存在しない。
そうなんです。ある意味、小松未可子というキャラクターに寄せなきゃいけないんですけど、自分の色がわからなくて。「自分はどんなキャラクターで、周りからどう見られているのか」みたいなことがまるでわからなかったんです。それに「どこまで自分のやりたいことをやっていいのか」っていうこともわからなかった。自分名義だから完全に自分の好きなようにやってみることもできるんだけど、それが受け入れられるのかっていったら、それはまた別の話ですから。
──その悩みはどうやって克服しました?
「Black Holy」が、私がヒロインの加藤茉莉香役をやらせていただいたアニメ「モーレツ宇宙海賊」のイメージソングだったおかげで克服できた感じですね。スタッフの方から「この曲は小松さんの名義なんだけど、茉莉香っていうフィルターを通した上で歌ってほしい」って言っていただけて「じゃあ、自分色とか自分のキャラクターみたいなことはそんなに考えずに、とりあえずナチュラルに茉莉香について感じていることを歌ってみよう」っていう結論に至って。そうしたら、初めてアニメのエンディングとしてオンエアされたとき、皆さん、茉莉香の中の人が歌っているとは思わなかったらしくて。「改めてクレジットを見たら『小松未可子』って書いてあるし、確かによくよく聴いてみると茉莉香の声だ」って思っていただけたみたいなんです。オンエアまでは不安で不安でしょうがなかったんですけど(笑)、普通にいちボーカリストが歌っている曲として受け入れられたことで、ちょっと自信を持てるようになりました。
» テルミンと作詞
- ニューシングル「冷たい部屋、一人 / 夏至の果実」2012年11月7日発売 / スターチャイルド
- 初回限定盤[CD+DVD] / 1500円 / KICM-91421
- 通常盤[CD] / 1200円 / KICM-1421
収録曲
- 冷たい部屋、一人
- 夏至の果実
- 冷たい部屋、一人(inst)
- 夏至の果実(inst)
初回限定盤DVD収録内容
- 冷たい部屋、一人(PV)
小松未可子 (こまつみかこ)
1988年11月11日、三重県生まれの声優、歌手。中学生時代にアイドルグループ「いもうと」でデビューののち、女優としての活動を開始。2010年にはアニメ「HEROMAN」の主人公ジョセフ・カーター・ジョーンズ役で声優としてのキャリアをスタートさせた。2012年1月より放送のアニメ「モーレツ宇宙海賊」では主人公・加藤茉莉香の声を務め、4月には同アニメのイメージソング「Black Holy」で個人名義による歌手デビュー。7月にはミニアルバム「Cosmic EXPO」、11月7日に2ndシングル「冷たい部屋、一人 / 夏至の果実」を発表した。