ナタリー PowerPush - 小松未可子

拾いどころ満載!みかこし伝説徹底検証

テルミンと作詞

──そしてこの夏には「Black Holy」と同じく、やはり小松さん名義の作品でもあり、また「モーレツ宇宙海賊」のコンセプトアルバムでもある「Cosmic EXPO」をリリースするわけですけど、ここで出てくるわけですよ、テルミンが(笑)。

あはははは(笑)。自分で「テルミンを弾きたい」って提案したわけじゃないんですよ。私自身の歌入れが全部終わったあと、スタッフさんから「1曲目の『Up to COUNTDOWN...』っていう曲ではいろんな素材をエディットするつもりなんで、ちょっと声を出してみて」って言われて「あーっ」とか「3、2、1」とか、いろんなパターンの声を録っていたら、今度は「もうひとつ別の音もほしいから、これ弾いてみて」と。そして出てきたのが……。

──木の箱から2本の鉄の棒が生えた謎の物体(笑)。いかがでした、テルミンは?

たまたま少し前にテルミンという楽器の存在を知ったくらいで、最初に実物を見たときは「ホントにこれは楽器ですか?」と。しかも「この棒に手を近づけたら音階が上がって、そっちの輪っかはボリューム」くらいのざっくりとした説明はあったものの、結局は「まあテキトーに弾いてみて」と言われ(笑)。UFOが降りてくるときのSEみたいな音にめっちゃびっくりしながら、とりあえず鳴らしてみたら、あんなカッコいいダンスミュージックにリミックスしていただけました。

──「Cosmic EXPO」では作詞もしていますよね。詞を書くのは初めてでした?

インタビュー写真

ほぼ初めてですね。高校生の頃、いろんなアーティストさんの曲に「私だったらこういう言葉を乗せるかな」みたいなことはしてましたけど。

──ものすごく本格的な替え歌を作っていたってことですか?

言われてみればそうですね(笑)。でも、そういうお遊びみたいなことや、あとは日記の延長みたいな感じで言葉を書きためるくらいのことしかしていなかった上に、「Cosmic EXPO」は「モーレツ宇宙海賊」のコンセプトアルバムでもあったので。どういう立ち位置で、どういう言葉を選んで、どういうことを歌えばいいのかはすごく考えました。

──では、難産だった?

テーマやコンセプトを決めるまでは悩みましたね。ただ、スタッフさんと打ち合わせをして、私と茉莉香のイニシャルが同じ「M」だからということで「タイトルは『M from…』にしよう」「私からキャラクターへのメッセージソングにしよう」っていうことが決まってからは、割とサクサクと言葉が出てきたんですよ。

──そうやってノッて作業したおかげもあるのか、言葉の選び方がうまいし、面白いですよね。1コーラス目のサビでは2小節おきに「Run & Run」と「Run & Gun」というフレーズを並べて脚韻を踏んでいたり、2コーラス目でも、厳密には「R」と「L」の違いはあるものの「Round & Round」と「Lough & Rough」と、日本語的な発音をするなら「ラ」で頭韻を踏んでいたりしますし。

ありがとうございます。本格的な替え歌を作っちゃうくらい、言葉選びをしたり、曲にハマるフレーズを探したりすることは好きなので(笑)、そういう面が出たのかもしれませんね。

「どうしよう、ビール瓶とか投げられたら」

──アルバムリリース後の音楽活動における大きなトピックというと……。

初のワンマンライブと「Animelo Summer Live 2012」ですね。

──では、まず初ワンマンについて訊きたいんですけど、純粋に「小松さんのお客さん」だけが集まる状況で歌うのはそのライブが初めてですか?

インストアイベントやアニメ系のイベントでオケを流しつつ歌うことはチョコチョコやらせていただいていたんですけど、ちゃんとバンドをバックに歌うっていうのは初めてでした。しかも、お金を取ってますし(笑)。

──確かにそれはとても重要なことです(笑)。

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これまでのステージはフリーだったからお客さんが来てくれていたのかもしれないじゃないですか。「どんな子なんだろう?」っていう興味があった人が「どうせタダだから」ってことで観に来ていただけなのかもしれないし、通りすがりの人がついでに観てくれただけかもしれない。半面、ワンマンライブは「○月×日にライブをやります。料金は○○円です。来てください」と、こちらからチケットという名の招待状を出して、それを買っていただくわけですよね。そうなったときに、果たしてどのくらいの方が来てくれるんだろう? どんな人がお金を払ってまで観たいと思ってくれるんだろう?っていう疑問はずっとあったし、そのことを考えるのが楽しみでもあり、不安でもありました。「どうしよう、ビール瓶とか投げられたら」なんて想像をしてみたりもしましたし。

──ビール瓶を投げつけたいほど小松さんのことが嫌いな人は「お金を払ってまで」ライブになんか来ません!

あはははは、そうですね(笑)。ライブのステージにちゃんと立てて、ちゃんとファンの方と一緒に盛り上がれたのは、そのインストアイベントのおかげでもあると思っていて。人前に立ったことが全くないまま「初ワンマンです」となってたら、きっとボロッボロでダメダメなライブをしていたと思うんです。でも、事前にファンの方とやり取りをしたっていう経験があるから、ステージに立てた。そういう意味では、興味本位であれ、通りすがりであれ、それまでのイベントを観てくださった方にも感謝の気持ちでいっぱいになれたライブでしたね。

──一方のアニサマはいかがでした? 小松さんのお客さん以外のお客さんも万単位でいる上に、お金も取っています(笑)。

「もしかしたら誰も私のことを知らないかもしれない」「本当にアウェイだったらどうしよう」っていう不安はもちろんあったんですけど、最終的には「これは2万人以上の方に自分を知ってもらえるチャンスでもあるんだ」という方向に意識を変えるようにはしました。「目立ってやる」とか「うまくやってやろう」みたいなことは考えずに、とにかく丁寧に歌って、皆さんに私の曲を伝えよう、と。

──実際、お客さんの反応はどうでした?

アニメ系の楽曲って「この曲ではこの色のサイリウムを振る」みたいな感じで、ファンの方の間で曲ごとのイメージカラーが決まっていたりするんですけど、イベントに来るお客さんって、自分の好きなアーティストさん以外の人の曲がどの色かも予習なさってるんですよね。私がアニサマで歌った「Black Holy」は割と濃い目の青がイメージカラーなんですけど、ステージに上がったら、さいたまスーパーアリーナの客席が真っ青で! 緊張とは違う意味で鳥肌が立つというか、歌う前から感動しちゃってました(笑)。

ニューシングル「冷たい部屋、一人 / 夏至の果実」2012年11月7日発売 / スターチャイルド
初回限定盤[CD+DVD] / 1500円 / KICM-91421
通常盤[CD] / 1200円 / KICM-1421
収録曲
  1. 冷たい部屋、一人
  2. 夏至の果実
  3. 冷たい部屋、一人(inst)
  4. 夏至の果実(inst)
初回限定盤DVD収録内容
  • 冷たい部屋、一人(PV)
小松未可子 (こまつみかこ)

1988年11月11日、三重県生まれの声優、歌手。中学生時代にアイドルグループ「いもうと」でデビューののち、女優としての活動を開始。2010年にはアニメ「HEROMAN」の主人公ジョセフ・カーター・ジョーンズ役で声優としてのキャリアをスタートさせた。2012年1月より放送のアニメ「モーレツ宇宙海賊」では主人公・加藤茉莉香の声を務め、4月には同アニメのイメージソング「Black Holy」で個人名義による歌手デビュー。7月にはミニアルバム「Cosmic EXPO」、11月7日に2ndシングル「冷たい部屋、一人 / 夏至の果実」を発表した。