ナタリー PowerPush - 筋肉少女帯
オーケン&うっちーが振り返る4半世紀
バンド活動において「好きなゲームは何か」は重要
──大槻さんは女遊び的な方向に進んだわけですけど、内田さんはその真逆だったイメージがあるんですよね。
内田 やっぱりゲームですよ。
──ダハハハハ! そっちのほうがいい(笑)。
内田 それが「シムシティ」なんだけど。
──マックが重いって気付いてからは家庭用ゲームを持っていくようになったんですか?
内田 うん。その前からメガドライブとかを持ってって。だからどこでも接続できるようなセットを用意して。
大槻 あの……実は女遊び武勇伝も僕、1万倍くらい盛ってました。で、ゲームね。俺も筋少活動休止間際には、セガサターンかプレステを持ってってたでしょ。それはやっぱりなんとなく僕の中ではバンドがギクシャクした感じがあって。みんな大人にもなってたし、楽屋であんまり会話がないのが、なんかさみしいなーって思って。
内田 クククク(笑)。
大槻 いや、笑うけどそうなんだよ! それでゲームとか持ってったら、みんなはしゃぐかなと思って。
──そんな気遣いが(笑)。
大槻 マーシー(真島昌利)さんがインタビューで言ってるの読んだんだけど、「THE BLUE HEARTS解散間際の頃にちょっと盛り上げようとしていろんなことした。変な顔をしてみたり」って書いてあって。
──あのマーシーが!
大槻 うん。でも、そういうことよ! そんなことかなと思ってゲームを持ってったんだけど、意外にみんなノッてくれなくて。内田くんは相手してくれたね。「ブラッディロア」を一緒にやってくれた。筋少がテーマソングやった対戦格闘ゲームなんですけど。で、くだらない話だけどね、やっぱりゲーム問題ってけっこう重要だと思うんだよ。「サーカス団パノラマ島へ帰る」のレコーディングのときに橘高くんや、おいちゃん(本城聡章)が「桃鉄」(桃太郎電鉄)が好きで。
内田 「桃鉄」と「いただきストリート」ね。
──いわゆるパーティゲームですね。
大槻 あれが好きで、「みんなでやろう」ってはしゃいでやってたんだけど、俺はああいうのが大嫌いなの。
──ダハハハハ!(笑)
大槻 だからホントにその輪に入れなくて。でも、そういうのって重要だと思うんだよね。意外にバンドのほころびってそういうところから始まるもんだよ。
──「なんであいつゲームの輪に入んないんだよ!」みたいな。
大槻 そうすると、「どうせ大槻は『桃鉄』やらないだろ」って呼ばれなくなっていく。「桃鉄」ハブられるとすごい切ないんだよ、あれ。
──そんなに嫌うようなゲームでもないじゃないですか。
大槻 何が面白いのかまったくわかんないんだよ、俺。何が「いただきストリート」だよ。いただけないね。
──場が盛り上がりやすいゲームじゃないですか、みんなで集まったときに。
大槻 全然! なんでみんなで電車に乗って走らなきゃいけないんだよ。 だからバンドがほころびるときっていうのは、Aのメンバーにはとても楽しい、それがBにはわからないみたいなところがあるね。
「桃鉄」とデジロックは同一線上にある
──音楽性の相違だけではなく、いろんなものの相違でほころぶ。
大槻 ファンクラブのインタビューがあって、その頃、筋少はプロレス好きが多かったから、プロレスの質問がけっこう入ってたんだよね。そしたら太田くんが「……プロレスの質問が多いな」ってボソリと。彼はあのとき話の輪に入れなかったんだよね。そういうことの蓄積だと思うよ。桃鉄とプロレスは罪さ。
内田 それはね、あるんだよ。
──あ、やっぱりあるんですか。
内田 わかってるの。
大槻 わかってたんだ。
内田 話が盛り上がっちゃって、「あ、つまらなそうにしてる人がいるな」と思いつつ、面白くてやめられないって状況なんだよね。
──「桃鉄」しかり、プロレスしかり。「ヤバい、1人引いてる」っていう。
大槻 真面目に言うと、それが音楽のジャンルになるとバンドは完全にほころぶんだよね。メンバーが数人だけ突然デジロックに走るバンドとか一時期いたじゃないですか。
──いっぱいいましたね。
大槻 で、みんな戻るっていう。それがゲームに替わったりするだけのことなんだよな。だから「桃鉄」とデジロックはロックバンドにおいて同一線上にあると思う。
──みんな「これからはデジロックだ!」って言ってるとき輪に入れないっていう。
大槻 うん、みんな「『桃鉄』だ!」って始めて、それに入れない人はバンド辞めるね。そういうとこあると思うよな。
内田 だからみんなで「桃鉄」をやるような状況っていうのは、レコーディングで缶詰になってたりとか、超過密なときなんですよ。時間が空いてしまって。今はそんなにないもんね。
大槻 昔はレコーディングなんていうと、トラックダウン、ヘタすりゃマスタリングまで全員いたもんね。なんかバンドってそういうもんだと思ってたんですよ。俺、ここ10年TDなんて行ったことねえですから。
内田 いや、そういうバンドもあるけどね。
大槻 だんだん自分の責任のあるとこだけ行くようになる。ああいうことをもっと若いバンドに教えてあげればいいのにな。俺、「死ぬときは別」って言葉をよく使ってたんだけど、「死ぬときは一緒」みたいに思ってると、若いバンドはだんだんギクシャクしてくるんですよ。
- ニューアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」/ 2013年5月29日発売 / 3000円 徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-73905
-
収録曲
- 中2病の神ドロシー ~筋肉少女帯メジャーデビュー25th記念曲
- 妖精対弓道部 ~「妖精対弓道部」主題歌
- 日本印度化計画
- 踊るダメ人間
- 釈迦
- 香菜、頭をよくしてあげよう
- 機械
- 再殺部隊
- 蜘蛛の糸
- キノコパワー
- パノラマ島へ帰る
- くるくる少女
- 孤島の鬼
筋肉少女帯(きんにくしょうじょたい)
1982年に中学の同級生だった大槻ケンヂ(Vo)と内田雄一郎(B)によって結成。インディーズでの活動を経て、1988年にアルバム「仏陀L」にてメジャーデビューを果たす。1989年に橘高文彦(G)と本城聡章(G)が加入し、「日本印度化計画」「これでいいのだ」「踊るダメ人間」などの名曲を発表。特に「元祖高木ブー伝説」はチャートトップ10入りを記録し、大きな話題に。大槻による不条理&幻想的な詩世界とテクニカルなメタルサウンドが好評を博すものの、1998年7月のライブをもって活動を凍結。各メンバーのソロ活動を経て、2006年末に大槻・内田・橘高・本城の4人で活動再開を果たす。2007年9月には約10年ぶりのオリジナルアルバム「新人」をリリース。日本武道館公演や「FUJI ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」といった大型イベントへの出演など、精力的なライブ活動を展開する。2013年にはメジャーデビュー25周年を記念して、新録音によるセルフカバーベストアルバム「公式セルフカバーベスト 4半世紀」を発表した。