ナタリー PowerPush - 神聖かまってちゃん
「つまんね」「みんな死ね」全曲解説
「自分らしく」
──「自分らしく」はストレートなメッセージが伝わってくる曲ですね。
まあ、そのまんまっす。
──これは女性ホルモンを飲んでたっていう時期の曲?
女性ホルモン飲んでた時期はありますけど、その時期にこれを作ったかって言われるとどうなんですかね。そのときなのかな。わかんない(笑)。でもそうかもしれないですね、歌詞を見ると。
──男らしくとか女らしくとかじゃなく「自分らしく」っていうのは、の子さんの素直な気持ちなわけですよね。
うん、単純な話そのまんまです。
──冒頭の部分の歌詞が聴き取れないんですが、これはなんて言ってるんですか?
わかんないっす。
──えっ(笑)、歌詞あるんですよね?
ないっす。ああ、でもなんか言ってることはありますけど。呪文みたいな。でも意味はないです、そんなもん。わかんない。なんて歌ってたんだろ。
──「男らしく生きろ」みたいな話はの子さんにとってはしんどいことですか?
男っていったら力強いとかそういうイメージありますけど、一概にそうでもないですから。もっと弱い部分があったり、男だからこそひた隠しにしてる女々しい部分があったりとか。だからそれを男らしく生きてけって言われたらそれは無理です。逆に女として生きてけって言われたらそれも無理。
──なるほど。
どっちもちょっとディフィカルトです、僕にとって(笑)。一貫して男らしく、女らしく生きていく人っていうのは戦前とか戦時中とかのが多いのかよくわかんないですけど、そういう人は強いなあって。強い人はすごいなって思います。
「怒鳴るゆめ」
──「怒鳴るゆめ」はかなり古い曲なんですよね?
「怒鳴るゆめ」はもう10年前になっちゃうか。15、6歳だと思うんで、とりあえず10年前とかそれくらい。
──これが初めて作った曲なんですか?
曲としては違いますけど、このアルバムの中では一番古いです。
──やっぱりこの曲を作ったときに手応えみたいなものは感じました?
この曲は最初鼻歌で歌ってたとき「んあっ!?」って思ってギターのコードを探して付けて、それでテープレコーダーかな、わかんないけど、とりあえずそんなもんに吹き込んだときに「これいいじゃん」ってなってたんで、そのときから。単純にメロディとしていいじゃんって思ってました。
──自分は曲が書けるとか音楽をやっていこうっていう気持ちを後押ししてくれた曲だったりするんでしょうか?
いや、そうじゃないです。あはは(笑)。全然そうじゃないですけど。
──以前monoさんに話を聞いたときに、この曲を初めて聴いてすごく衝撃を受けたって言ってましたけど。
俺も覚えてますよ。monoくんはすごいビックリしてましたね。「ボーカルがダメだけど、この曲はやべえ」みたいな感じで言ってましたね。
──僕も「怒鳴るゆめ」かなり好きです。
俺も好きですわ。歌詞がやっぱ切ないんですね。切ないんですよ。なんか前向きな感じがするんですけど、でも切ないんです。
──「忘れ方を知らなくても」とかっていうフレーズはやっぱりきますよね。
うん、結構切ないんです。「夕暮れの空の下」とかも。
──ライブではやっぱり調子が良いときにやりたい曲?
なんてったってライブなんかでバンドでやるときは切なさが少ないんで。この曲の切なさを表現するにはやっぱハーモニカとかいろんなものが必要ですからね。
「最悪な少女の将来」
──「最悪な少女の将来」は新曲ですか?
そうです。新曲っていうか別に、新曲でもないですけど。
──ここで初めて発表する曲ですよね。
そうですね。これはメロディがちょっとキャッチーで、あと歌詞は個人的に好きですね。
──だいぶヘビーな歌詞で、重たい気持ちになりますけどね。
ヘビー(笑)。うーん、まあそっか(笑)。人によりけりだと思います、これは。
──少女のことを歌いつつ、やっぱり自分を重ね合わせて聴いてしまいますよね。
だから「(笛吹き)花ちゃん」と同じ原理なんじゃないですかね。やっぱ自分を重ねてますね。「リーゼ」とか出てきたりするあたりとか。
──これはバンドで録音してるんですか?
これバンドです。打ち込みを使ってるとこもありますけど、でもバンドで録ってます。
──歌詞の「みんな死んでしまえ」っていうのは、アルバムタイトル「みんな死ね」につながってるんですか?
別にかけてるわけじゃないっす。でも歌詞書いてる時期は同じだったのかな。うん、普通に考えたらそう思いますよね(笑)。でも別にそういうわけじゃないです。
──の子さんの歌詞には「死んでしまえ」と「死にたい」の両方が出てきますけど、その2つの気持ちは根は一緒だったりするんでしょうか?
えっ? いやそんなものは両方あるんじゃないですか。どっちにしろそういうのが出てくるときはウワーッってなってるんで、そのウワーッのなり方もたぶん何通りかあると思います。そんなもん、病気を説明しろって言われてるような感じがして、そんなもんわからねえよみたいな(笑)。とりあえずそんな感じです。
「スピード」
──そして次は「スピード」ですね。
「スピード」これいつ作ったんだっけな……。でもこのときの気分が、もう空虚に陥ったのは覚えてます。
──どういうこと?
自分の空虚な心を表現しようって。これは結構そのときの気持ちがすごい出せたと思います、俺は。心が空っぽな感じがすごい強かったんですよ。なんかもう世界が真っ白じゃん、みたいなもうホントにそんな気分だったですね。で、それが本当にうまく表現できたと俺は思いますわ。
──この歌詞はすごいですよね。自分の孤独感をスピードに例えて描き出すという。
え、わからん。俺もうそんなことよりもそのときの真っ白な感じが全部。歌詞とかはもう全然……なんなんだろ。歌詞は読んだとおりだと思いますけど、それぞれそこは感じてもらって。
──この頃は以前ほどライブでやらないですよね。
やらないですね。
──それは何か心境の変化によるものなんですか?
いやたまたま、なんか。
──じゃあ特に意識してるわけではない?
そうっすね。無意識ですね。だいたい意識する必要ないんです。俺はたぶん意識なんてしないっすわ。歌詞においても何にしても、メジャーデビューにしても。意識する必要があればたぶんしてます。自分にとって必要ないからたぶんしてないんでしょうね。だから歌詞とかこうやって語るのがナンセンスですよね。あはは(笑)。まあ今は全曲紹介っていうことでやってるんで話してますけど。
CD収録曲
- ねこラジ
- あるてぃめっとレイザー!
- ベイビーレイニーデイリー
- 自分らしく
- 怒鳴るゆめ
- 最悪な少女の将来
- スピード
- 男はロマンだぜ!たけだ君っ
- 神様それではひどいなり
- 僕のブルース
- ぽろりろりんなぼくもぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃーん
- いくつになったら
- 口ずさめる様に
神聖かまってちゃん(しんせいかまってちゃん)
の子(Vo,G)、mono(Key)、ちばぎん(B)、みさこ(Dr)の千葉県在住メンバーからなるロックバンド。の子による2ちゃんねるバンド板での宣伝書き込み活動を経て、自宅でのトークや路上ゲリラライブなどの生中継、自作ビデオクリップの公開といったインターネットでの動画配信で注目を集める。2009年には1600組の応募バンドの中から選ばれ、一般公募枠で「SUMMER SONIC 09」に出演。2010年3月に初のCD作品となるミニアルバム「友だちを殺してまで。」を発表した後、ワーナーミュージック・ジャパンと契約し、2010年12月にメジャーレーベルのワーナーから「つまんね」、インディーズレーベルのPERFECT MUSICから「みんな死ね」という2枚のアルバムを同時リリース。子供の頃の暗い記憶やニートの抱える不安な感情などを美しいメロディに乗せた楽曲、予測のできない破滅的なライブパフォーマンスでファンを増やし続けている。