ナタリー PowerPush - いきものがかり

時を超えてよみがえるメロディ 勝負曲「ノスタルジア」リリース

カバー曲でも「あっ、いきものっぽいな」と感じる

──次にカップリングの「時をかける少女」なんですが、これも素晴らしい仕上がりですね。

吉岡 ありがとうございます。

──カバーはひさしぶりですよね。吉岡さんは歌ってみてどうでした?

吉岡 私、曲のいいところは、もらおうとしなくても移っちゃう、真似したくなっちゃうタイプなんです。カバーするとき。だけどそのまんまだとダメだから、例えば「♪しーないでねー」とか、原曲で裏声になってるところでも自分は地声で歌ったりとか、そのへんは少し変えてみました。あとはちょっとピュア感? そういうものは入るといいなと思ってましたね。

──原田知世さんの原曲も癖のない素直な歌い方ですもんね。

吉岡 当時の原田さんは15歳とか16歳ですよね。すっごいチャーミングで、音っていうよりもなんか香りが届いてくるような歌だったから。でも自分はやっぱりまっすぐに、なるべくニュアンスは付けないでいきたいなって思って。

──あの、ひとつ気になるのは、この曲はカバーでしかもアレンジは別の方がやってるわけですよね(「気まぐれロマンティック」などを手がける江口亮が楽曲アレンジを担当)。そのときに、水野さんと山下さんの役割っていうのは何になるんでしょうか?

山下 んー、アレンジに関しては江口さんとはずっと一緒にやってきてるから、何かやりとりし合うっていう感じもそんなにないんですよね。

──なるほど。でもここが不思議なところなんですが、完成した曲を聴くとちゃんといきものがかりの曲になってるんですよね。やっぱり3人の積み重ねがなかったら生まれなかったものだと思うし、特に3人揃って作業をしなくてもいきものがかりっぽくなるというのがすごいなあと感じたんです。

山下 確かに自分でも「あっ、いきものっぽいな」っていうのは感じますね。

水野 変なグループですよ、本当に。

──2人が曲を作らなくてもいきものがかりになるんですよね。

水野 これはファンの人から批判を浴びるかもしれないけど、他の人が曲を作ってもいきものがかりでやれるときがあるかもしんないなって思うんですよね。僕らが曲を作らなくてもいい。なんかね、それぐらい広がっていけばいいなって。今はまだ難しいですけど、そういうパターンももしかしたらいつかあるかもって思ってるんです。

──それはいきものがかりとしては新しいですね。

水野 わかんないですけどね。まあ実際やってみたらやっぱりないです、ってなるかもしんないけど。でもやっぱり自分だけでやることの限界もあるし、例えば人の曲に詞を書くっていうことも絶対いい経験になるし、絶対違うもんができるし。そこまで飲み込めるようになったらまたそれはそれですごい面白いと思うんです。

今までになかったパターンの曲ができる気がする

──ところで結成10年、デビューから4年。いきものがかりの現在地って今どういう状況なんでしょうか。

吉岡 結構まっさらじゃない?

水野 ああ、まっさらっていうのは確かにそうかも。これからどっちに進んでいくか自分たちでもわかってないというか(笑)。まあ今年も走っていくんですけど。

吉岡 でも今は次の作品のプリプロ作業とかしてるんですけど、やっぱり今までとちょっと違うものができそうな予感があるんですよ。今までのニュアンスももちろんありつつ、どこか新鮮な感覚もあって。

水野 「なるべく変わらず」っていうのが合い言葉なんです。例えばコーラはずっと変わんないけど、でもデザインがちょっと変わったりとかそういうマイナーチェンジを何度もしてきてずっと時代がつながってる。そういうのいいなと思ってて。いきものがかりも変わらないように見せながら、内面のマイナーチェンジを今いろいろ試みていかないといけないんじゃないかと。

山下 あと、土俵がやっとできたっていう感じはありますよ。いきものがかりっていうものがある程度浸透してきて、だから「じょいふる」みたいな曲を投げることもできるし。ようやく戦える状況になってきたのかなっていう気はしてます。

──確かに「ハジマリノウタ」があって、「ノスタルジア」も出して、ここから次の新しいことが始まるのかなっていう感触はありますね。

水野 うん。道を変えるわけじゃなく、守備範囲を広げていきたい。「ノスタルジア」みたいな、僕がど真ん中だと思う曲ももちろんやるし、「じょいふる」みたいな曲も増えてくかもしれないし。やっぱり聴いてる人にワクワクしてもらいたいですからね。

吉岡 今までになかったパターンの曲はできていくんじゃないかな。「こう来たか!」っていうのは絶対に来る気がします。

水野 それはプレッシャーをかけてんの!? 俺に(笑)。

吉岡 いや、でも絶対来ると思うんだけどなあ。

水野 テクノとかね。

──(笑)本当に!?

水野 わはは(笑)。どうでしょうね。

山下 でも今「新しいものを作りたい」っていう気持ちは確かに強くなってますよ。

ニューシングル「ノスタルジア」 / 2010年3月10日発売 / 1223円(税込) / Epic Records / ESCL-3385

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CD収録曲
  1. ノスタルジア
  2. 時をかける少女
  3. YELL -合唱付-
  4. ノスタルジア -instrumental-
いきものがかり

吉岡聖恵(Vo)、水野良樹(G,Vo)、山下穂尊(G,Harmonica)による3人組ポップユニット。1999年結成。当初は地元・神奈川での路上ライブを中心に活動し、2003年にインディーズで初CDをリリース。2006年に発売したメジャー1stシングル「SAKURA」がスマッシュヒットを記録し全国区の人気を獲得する。2007年3月には1stフルアルバム「桜咲く街物語」を発表。切なくてあたたかい等身大のポップチューンが老若男女問わず幅広い層から強い支持を集めている。2008、2009年の大晦日には「NHK紅白歌合戦」に連続出場。バンド名は、水野と山下が小学1年生のときに「生き物係」だったことから。