ナタリー PowerPush - 日笠陽子

自称「恥ずかしがりの緊張しい」声優 一大プロジェクトの看板を背負う

スタッフを自慢できるPVを作りたい

日笠 だからPVでは私のイメージを表現するのと同時に、チームのみんなの自慢もしたかったんですよ(笑)。

──「自慢」ですか?

日笠 「この衣装を作ってくれたの、ウチの衣装さんなんだー」とか「この髪型いいでしょ? ウチのメイクさんの仕事なんだー」「撮影してくれたのはこんなカメラマンさんなんだー」ってことを言いふらしたくて(笑)。

長濱 ただ、その人たちをPVの中やメディアに登場させて「衣装を作ったのはこの人です」ってやることは、なんの自慢にもならないし、その人たちの仕事を知らしめることにはならないんですよね。でも、彼らと一緒に作り上げた映像の中の日笠陽子がキレイでカッコよくあれば「これ、やったの誰?」って注目してもらえる。そういう意味でもスタッフさんたちは日笠陽子のガチを正しく理解してたんですよね。ヘアメイクもせず、特別な衣装も着ず、普通に私服で汗まみれになって歌っているのが今の日笠陽子の姿なのか?って言ったらそうじゃない。たくさんの人に支えられて楽曲が生まれ、プロジェクトが進んでいる。その全部をひっくるめたものが今の日笠陽子のガチなんですよ。だから日笠さんのことはもちろんだけど、日笠さんのイメージから描いたオレの絵コンテをもとに組まれたセットや小道具や衣装、それからバンドさんまで、全部をキレイにカッコよく撮るのがオレの仕事なんだろうな、とは思いましたね。

音楽PVの監督になりすます

──そして実際に日笠さんをキレイでセクシーに撮りつつ、ちょっとゴシッキーでデコラティブな世界を本当に美しく撮った、と。ただ、ちょっと疑問もあって。「惡の華」のロトスコープに代表されるように、長濱監督にはいわゆる「アニメーション」とは一線を画す映像を作る人っていう印象があるんです。

日笠 ありますね。

──あと「ギャグマンガ日和」のオープニング映像に、なぜか動物とカーレースの実写映像をインサートしてみたり。

長濱 あの映像、どっちも借りるのにビックリするくらいお金がかかったんですよ(笑)。

──でも突然実写が入るから余計にコミカルに映るし、ロトスコープを使うからドラマがエグくて生々しくなる。そうやって「あえて」やる映像作家のイメージがあったんですけど、今回のPVってパッと見、すごくストレートな音楽PVに仕上がってますよね?

長濱 あっ、それは今オレの中で「なりすまし」がブームだからですね。

写真左から日笠陽子、長濱博史。

日笠 なりすまし?

長濱 うん、誰かになりすますの。例えばホラーになりすます、とか。パッと見、ホラーみたいなんだけど、実はギャグみたいな作品を作っておいて「これホラーでしょ? オレ苦手なんだよね」って言われたら「いやホラーじゃないよ、ギャグだよ」「ウッソー」みたいなことが面白くて(笑)。

──意地が悪いなあ(笑)。

長濱 今回はPVのディレクターになりすまして、ガッツリPVを作ってみたんです(笑)。「これ撮ったのPVの経験値がある人でしょ?」って、そういう直球のPVに見えてくれればよくて。実はその中には日笠さんの表現したかったことや、日笠さんとオレがイメージしていたストーリー、それから美術さん、衣装さん、メイクさん、撮影のスタッフさんの一流のテクニックやアイデアが盛り込まれている。そういう映像を撮りたかったんです。あと日笠さんに「セットのイメージや映像の世界観はわかったけど、日笠さんが今やってみたいことや、演じてみたいことって何?」って聞いたら……。

日笠 「バンドー」(笑)。

──「ぬいぐるみバーン!」に続いて、またざっくりとしたご意見を(笑)。

長濱 でもホントにやりたかったみたいで。PVの撮影自体は朝の8時から始めていて、バンドのシーンの撮りは夜中の3時くらいになっちゃってたんですけど、全然疲れを感じさせない。「やったー! 歌える!」みたいな感じでドカーンッとやっちゃってたんです。それもガッツリPVにしてみたかった理由なんですよね。日笠さんとバンドさんがガチで演奏している姿をガッツリ撮ってみたかったんです。

──ただ冒頭の言葉と今のスケジュールを聞けばわかる通り、撮影現場では……。

日笠 大変でしたー!!

長濱 でもみんなが死んだおかげで(笑)、あの映像が1日で撮れたんだよ。

日笠 だから余計にウチのスタッフさんをみんなに自慢したかったんですよ(笑)。

コラボレーションアルバム「Glamorous Songs」 / 2013年7月17日発売 / PONY CANYON
初回限定盤[CD+DVD] / 2800円 / PCCG-01345
通常盤[CD] / 2300円 / PCCG-01346
CD収録曲
  1. Glamorous days
    (作詞:稲葉エミ / 作曲・編曲:Tom-H@ck)
  2. BALLOON
    (作詞・作曲:渡辺翔 / 編曲:渡辺和紀)
  3. Rhythm Linkage
    (作詞・作曲:永野椎菜 / 編曲:永野椎菜、熊本克也)
  4. Through the Looking-Glass
    (作詞:leonn / 作曲:小室哲哉 / 編曲:渡辺徹)
  5. Reclusive
    (作詞・作曲・編曲:Powerless)
  6. Neo Image
    (作詞:こだまさおり / 作曲:前澤寛之 編曲:yamazo)
  7. めざまし時計
    (作詞・作曲:YADAKO(Myu) 編曲:Masse(Myu))
初回限定盤DVD収録内容
  1. Glamorous days(Music Video)
  2. Glamorous days(Music Video)
    絵コンテ動画比較版
日笠陽子(ひかさようこ)

神奈川県出身の女性声優、ボーカリスト。テレビアニメ「けいおん!」の秋山澪役など、数多くの人気作で主役級のキャラクターの声を多数担当。また、メインボーカルを務めた「けいおん!」のエンディング曲「Don't say "lazy"」がゴールドディスクを獲得し、自ら考案したギャグ「てへぺろ(・ω<)」が流行語となるなど、アニメ業界外でも注目を集める。2013年5月「日笠陽子ソロプロジェクト」を立ち上げ、デビューシングル「美しき残酷な世界」をリリース。6月には2ndシングル「終わらない詩」を、7月には小室哲哉らが参加するコラボレーションアルバム「Glamorous Songs」を発表した。