音楽ナタリー PowerPush - 映画「日々ロック」

スクリーンからはみ出すロック愛 二階堂ふみ×入江悠監督対談

二階堂ふみ×入江悠監督対談

映画「日々ロック」の魅力をさらに探るべく、ここではヒロイン・宇田川咲を演じた二階堂ふみと、今作のメガホンを取った入江悠監督の対談をお届けする。2人のタッグは2011年に公開された映画「劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」以来。意外な再タッグのきっかけから最近聴いている音楽の話まで、和やかな2人の会話を楽しんでほしい。

16歳から19歳の3年間ですからね

──お2人のタッグは「劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」以来です。

左から二階堂ふみ、入江悠。

入江悠 そうですね。3年ぶりくらいですかね。ひさしぶりに会ったらめっちゃ大人になってましたよ(笑)。

二階堂ふみ 16歳でしたからね。

入江 16歳から19歳の3年間ですからね。すごいですよ。

二階堂 保護者みたい……(笑)。

入江 僕らの3年と全然違う3年を過ごしてたんだろうなと思って。衝撃でしたよ。完全に女優のオーラを身にまとって。英語もしゃべれるようになってたし。人間力がアップしてた。

二階堂 今回わたし衣装合わせのとき、パジャマで行ったんですよ。全然女優じゃない(笑)。

入江 いや、立派な社会人みたいになってましたよ。

「いいね!」押してよかったー

──そもそも今回、入江監督が二階堂さんを起用したのはどうしてですか?

入江 「劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」のあとの作品も観てて、ひさしぶりにお願いしたいなと思って。

二階堂 入江さんだったらって思って、正直、脚本読まないで引き受けますっていうお返事をさせていただきました。でもその前に、去年ニューヨークに2カ月短期留学してて、暇で入江さんのFacebookに「いいね!」ばっかり押してたんです。そしたら入江さんがTwitterで「最近二階堂ふみが『いいね!』押してくる。暇なのか心配だ」みたいな感じで書いてたから、「仕事ください」って返したらオファーくれたんです。

入江 「いいね!」を押される前はちょっと遠い存在になってたんですけど、「いいね!」押してきたから親近感が湧いた。

左から二階堂ふみ、入江悠。

二階堂 「いいね!」押してよかったー! 入江さんこそ大きい存在になっちゃったなーと思って。

入江 引き受けてくれるんだと思ってビックリしました。

二階堂 入江さんは自分にとって特別な人だったんで。「劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」が初主演作品だったし。あの撮影期間っていうのは20年生きてきた中で一番つらい時期だったので、そういう時期に現場でご一緒できた監督っていうのは大きい人ですよね。

入江 でもあんまりつらい感じを出してなかったよね?

二階堂 思春期だったからつらかったですよ。その思春期のちょっとした不安定な感じを面白いと思って切り取ってくださった監督はずっと大事にしたいなって。だから入江さんの現場だったら脚本がどうであれ、絶対行きたいなって思ってました。

入江 16歳のとき、本当にすごいいいなと思って。芝居がっていうか、表情とかすごかったですね。僕演技の話とか打ち合わせとかしないんですけどね、完璧に読み取ってこんな表現してくれるんだと思って。だから今回もなんの心配もなくお願いしました。

──今回ひさしぶりに撮ってみてどうでした?

入江 やっぱりすごいですよね。最近、二階堂ふみの何がすごいのかっていうのを考えてるんですよ。

二階堂 なんですかー! ヤダー!(笑)

入江 考えてるんですけど、でもそれが言語化しにくいんですよね。芝居がいいって言うと普通じゃないですか。うーん……。「劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」をやったあといろんな俳優さんとかに会うんですけど、種類が違う感じがする。なんて言うんですかね、ドキッとするというか。怖さとかわいらしさと、いろんなものがバーンとくるんですよね。

ももクロがすげーロックだった

──ちなみに原作では宇田川咲はロックシンガーですが、映画では設定を変えてアイドルにしています。なぜですか?

入江 それこそ「劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」の撮影のときに、ももクロのライブを一緒に観たんですよね、AXで。それを観てすげーロックだなって思って。ももクロだけじゃなく、最近のアイドル全般ですけど。ものすごく動くじゃないですか。自分の旬がこの数年しかないってちゃんと把握してる感じがカッコいいなと思ったんですよね。あとは単純に今回の映画に出てくる男たちの音がロックなんで、映画にしたときに違う音が鳴ってほしいなって思って、テクノ系に変更させてもらいました。

二階堂 あのライブ楽しかったですよねー!

入江 すごい前のほうで観てたよね。

二階堂 すっごいノリノリだったんですよ。もともとももクロ好きだったんで、コールとかも覚えてて。かまってちゃんも好きだったし。かまってちゃんとももクロの対バンなのに、かまってちゃんのことに触れずに去っていくももクロを観て、ドキドキしたんですよね。

入江悠

入江 いやーカッコいい! かまってちゃんはMCが長いんですけど、ももクロはひたすらストイックにステージで踊って歌って帰っていくみたいな。

二階堂 あと近かったし、あのとき観れたのはよかったですね。まだ6人のときで。わたし9人のときから知ってるんですよ、ももクロ。アイドル誌とかに出てて、かわいいなと思って。

──二階堂さんはまさにご自身が観ていたアイドルを、ご自身が演じることになっていかがでした?

二階堂 宇田川咲はアイドルなんですけど、オリジナリティのあるアイドルというか、ちょっと違いますよね。

入江 そうですね。既存のアイドルを模倣してもしょうがないなと思っていろいろ試行錯誤したんです。

二階堂 やっぱそれがすごい出ててよかったなって思います。

──実際に歌も歌っていますね。

二階堂 DECO*27さんの曲、いい曲でしたよねー。元気出る。

入江 あれはいい曲でしたねー。俺、撮影でちょっとつらいことがあったときとかずっと聴いてましたからね。ボカロ的な手法を使ってるんですけど、今の日本にしかない曲だなあと思って。そういう意味では旬なんですよね。

──曲のオーダーはどういうふうに?

入江 すごい抽象的ですよ。とりあえずどっかで聴いたことのあるような曲はイヤだっていう話はして。あとステージで歌って踊ったときに四方八方から音があふれてくる感じにしたいと。前向きになるような感じっていうのもオーダーしたんですけど、それがイヤらしすぎずいい曲になりましたね。

映画「日々ロック」11月22日(土)より全国ロードショー
映画「日々ロック」

「彼女と出会ってから僕の世界は変わった!!」

金なし風呂なし彼女なし。ヘタレロッカー・日々沼拓郎が友人とともに結成したバンド“ザ・ロックンロールブラザーズ”。ある晩、ライブをしていた拓郎達の前に1人の女が台風のごとく現れた! 女の名前は、宇田川咲(二階堂ふみ)。斬新なスタイルでカリスマ的な人気を誇るデジタル系トップアイドルだ。売れないがロックを愛する心は誰にも負けない“自由”な拓郎と、トップアイドルとして活躍しながらも本当は自分のやりたい音楽が出来ずに苦しんでいる咲。二人はお互いに自分にないものを持っていた。そしてある日、咲は拓郎にこう頼む。「お願い、曲書いて。私にはもう時間がないの。」

果たして史上最強のロックバカと超凶暴なトップアイドルの運命は……!?

監督:入江悠

原作:榎屋克優「日々ロック」(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載中。コミックス1~5巻、「日々ロック BOOTLEG」発売中)

脚本:入江悠 / 吹原幸太(劇団ポップンマッシュルームチキン野郎・主宰)

音楽プロデューサー:いしわたり淳治

キャスト:野村周平 / 二階堂ふみ / 前野朋哉 / 落合モトキ / 岡本啓佑 / 古館佑太朗 / 喜多陽子 / 毬谷友子 / 蛭子能収 / 竹中直人 / and more

劇中曲提供:黒猫チェルシー / The SALOVERS / 滝善充(9mm Parabellum Bullet) / DECO*27 / 爆弾ジョニー / 細身のシャイボーイ / ミサルカ / 忘れらんねえよ

制作・配給:松竹

映画「日々ロック」主題歌 爆弾ジョニー ニューシングル「終わりなき午後の冒険者」 / 2014年10月22日発売 / Ki/oon Music
初回限定盤 [CD+DVD] 1620円 / KSCL-2486~7
通常盤 [CD] 1258円 / KSCL-2488
入江悠(イリエユウ)

1979年生まれ、埼玉県出身の映画監督。ヒップホップグループの青春をリアルに描いた「SRサイタマノラッパー」シリーズや、神聖かまってちゃんの楽曲をモチーフにした「劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」など音楽映画を多数手がけ、映画ファンだけでなく音楽ファンからも支持を集める。最新作「日々ロック」が2014年11月に全国公開される。

二階堂ふみ(ニカイドウフミ)

1994年9月21日生まれ、沖縄県出身の女優。2009年に「ガマの油」で映画デビューを果たして以来、「劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」「悪の教典」など話題作に次々と出演。2011年には「ヒミズ」で第68回ベネチア国際映画祭の「マルチェロマストロヤンニ賞(最優秀新人俳優賞)」を受賞した。映画やドラマのほか、ASIAN KUNG-FU GENERATION「新世紀のラブソング」や忘れらんねえよ「忘れらんねえよ」などのビデオクリップにも登場している。


2014年11月10日更新