ナタリー PowerPush - 秦基博

弾き語りアルバムが伝える秦基博の魅力と本質

“アコギと歌”が持つ無限の可能性

──そういう気概は必要だと思いますけどね。

結局、何もわかってなかったんですよね。「ひとりでやれば、思いどおりにできるはず」って思ってたんですけど、ひとりじゃ何もできないんですよ。いろんなミュージシャンとコミュニケーションを取りながら「ここはこの人にお任せして……」っていうことができないと、自分の思っていることは具現化できないんですよね。そういうことにも気付いてきたんですけどね、ライブをやっていく中で。まわりのみんなといろんなアイデアを出し合いながら、より良い方向を探していく。それはすごく音楽的なことだと思うし、何よりも楽しいですからね。

──もちろん、周囲の人たちも含めて、根本の部分は歌とギターで成立しているっていう共通認識もあって。

そうですね。弾き語りはやっぱり、僕の表現のコアな部分なんですよ。今回のアルバムはまさにそれが凝縮されている作品だと思う。なんていうか、感覚としてはシンガーソングライターであることがすごく大事なんですよね。そのためにはギターが必要不可欠なんですよ。ギターを弾く、曲を書く、歌を歌うってことは切り離せないし、それがひとつになったときに僕の音楽が始まると思ってるので。

──他の楽器には見向きもせず?

いや、そんなことはないですよ(笑)。例えばピアノで曲を作れば、また違った感触になるんだろうなって思うし。ただ、今はアコギだけで精一杯というか、まだまだ探っていく余地があると思うんですよね。

──アルバムに収録されている「Theme of GREEN MIND」も、新しい可能性ですよね。

インストは初めてですからね。普段からインストを作ってる人と同じようにはできないので、「歌を歌うように弾けたらいいな」と思いながら作ってたんですけど。Disc 1では、11曲目の「dot」までが去年のツアーの音源なんですけど、そこで終わらせたくなかったんですよね。弾き語りのライブは毎年続けていこうと思ってるし、2010年以降への橋渡しというか、次のツアーへの招待状みたいなものを入れたいなって。「Theme of GREEN MIND」の最後のコードが(その後に収録されている)「アイ」のコードと同じっていうのも、ストーリーがつながっていく感じがあると思うし。

3rdアルバムの制作過程に今度のツアーがある

──5月には「GREEN MIND 2010」が開催されますが、今回はすべて野外ライブっていう。これも新しい試みじゃないですか?

去年のツアーファイナルが野外だったんですけど、鳥が飛んだり、風が吹いたり、ざわざわ木が揺れたりする……その中に音楽があるのって、すごく鮮明に記憶に残るんですよね。それがステキだなって思って。「GREEN MIND」は毎年いろんなカタチ、いろんな解釈で続けていけたらいいなって思ってるんですけど、今年は野外でゆったり音に浸ってもらえたらいいなって。あと、去年は“ひとりでやる”っていうのがコンセプトだったんですけど、今回は僕以外のミュージシャンの方を呼ぼうと思ってて。もちろん弾き語りが中心ですが、アコースティックセッションみたいなものをやりたいな、と。枠を小さくしてもしょうがないですからね。そのことも徐々に考え中です。

──なるほど。で、そのあとは3枚目のオリジナルアルバムですよね……?

はい! 今、すごいがんばってやってます(笑)。夢の中で曲を書いたりしてますから。絶対にいいものにしたいので……。

──「GREEN MIND」ツアーでの経験も反映されそうですか?

“こういうアルバムにしたい”って思いは当然、今年の「GREEN MIND」ツアーにも入ってくると思います。そういう意味では、もう始まってるんですよね、3rdアルバムが。その過程の中に「GREEN MIND 2010」があるっていう。お互いに引っ張り合いながら進んでいくんだと思います。

──期待してます。ところで秦さんって、アコースティックギターは何本くらい持ってるんですか?

えーと、3本くらいかな。

──あ、意外と少ない。

そうかもしれないですね。で、新しいアコギが欲しいんですよ。ずっと使ってるアコギはかなりの年代モノだから、あまり酷使できなくなってきてて。そのギター、デビューするときに事務所からお金を借りて買ったんです。ずっといっしょに戦ってきたっていう思いがあるから、もしネックが折れちゃったりしたら、きっと泣いちゃうと思うんで。

ライブ写真

ニューアルバム『BEST OF GREEN MIND '09』 / 2010年3月3日発売 / 3360円(税込) / アリオラジャパン / AUCL-21/22

  • Amazon.co.jpへ
DISC 1
  1. やわらかな午後に遅い朝食を
  2. 虹が消えた日
  3. シンクロ
  4. Lily
  5. 君とはもう出会えない
  6. 僕らをつなぐもの
  7. 最悪の日々
  8. 赤が沈む
  9. サークルズ
  10. (うろこ)
  11. dot
  12. Theme of GREEN MIND ※新録
  13. アイ(弾き語りVersion) ※新録
DISC 2
  1. 朝が来る前に
  2. フォーエバーソング
  3. Halation
  4. プール
  5. ファソラシドレミ
  6. Baby, I miss you
  7. キミ、メグル、ボク
  8. 花咲きポプラ
  9. 青い蝶
  10. 風景
秦 基博(はたもとひろ)

1980年生まれのシンガーソングライター。横浜を中心に弾き語りでのライブ活動を展開。2006年11月にシングル「シンクロ」でメジャーデビュー。強さを秘めた柔らかな声と、耳に残るポップなメロディで大きな注目を浴びる。2007年9月に発表した1stフルアルバム「コントラスト」がチャート・トップ5入りを記録し、ブレイク。2008年には「キミ、メグル、ボク」「虹が消えた日」「フォーエバーソング」といったヒットシングルを続けてリリースし、2ndアルバム「ALRIGHT」発売後の全国ツアーから2009年3月に行われた日本武道館公演、そして5月から7月にかけて行われた弾き語りツアーのチケットすべてを即日ソールドアウトさせた。最近では冨田ラボ×松本隆とのコラボ作「パラレルfeat.秦 基博」やTHE YELLOW MONKEYトリビュートアルバムへの参加も話題に。