ナタリー PowerPush - 秦基博
弾き語りアルバムが伝える秦基博の魅力と本質
ギターの響きによって、情景や匂いが引き出される
──さっき「曲を作るときはいつもアコギ」って言ってましたけど、(最新シングルの)「アイ」もそうだったんですか?
完全にそうですね。「アイ」はまさにアコギがなかったら生まれかったし、自分の音楽のど真ん中にある曲だな、と。アコギを弾いているときに見えてきた情景がそのまま曲になってるんですよね。しかもこのときは、言葉も同時に出てきたので。
──最初は適当にギターを弾いてるんですか?
はい、最初は適当です。すごく感覚的なんですけど、ある瞬間に景色や匂いみたいなものを感じるんですよ、ギターを弾いてると。その感覚が曲になっていくことがほとんどですね。コードの響きにメロディを乗せることで、自分の中にいろんな感情がわいてくるというか。
──秦さんが12歳のときに初めて書いた曲も、そんな感じだったんですか?
そうだと思います(笑)。そのときの状況は全然覚えてないんですけど……。
──タイトルも?
覚えてないんですよ。歌い出しは「♪愛する人へ~」だったんですけどね。
──すごいラブソングじゃないですか。小学生なのに。
(笑)。そういうことが歌いたかったんじゃないですか、多分。そのとき聴いていた曲のマネなのかもしれないけど、当時の自分にとってはそれが自然だったんでしょうね。
──聴いてみたいですねえ、その曲。
それはダメです! お墓まで持っていきます(笑)。
──じゃあ、秦さんの中で「この曲だったら、人に聴かせられるな」って思えるレベルに到達したのはいつなんですか?
18歳のときにライブハウスに出るようになったんですけど、その直前くらいから曲作りが変わってきたんですよね。なんていうか、「このメロディは自分のものなんじゃないか」って思える曲ができてきて。それまでは好きな曲をコピーしたり、オリジナルっていっても、ほかの人の曲の雰囲気の中で作ってたんですよ。
──好きな曲のイメージに寄せて作ってみたり?
そうそう。でも、18歳のときにできた曲のメロディは「これはほかの誰のものでもない」って思えたんです。そこからですね、自分のオリジナリティを意識して作るようになったのは。
──サビで高音のロングトーンがあるとか?
あの、当時からメロディのアップダウンはかなりあったみたいなんです。低いところからワーッと高い音に上がっていく感じとか。まわりの人たちに指摘されて気付いたんですけどね、それは。自分としては気持ち良く歌えるところにいってるだけなんだけど、「アップダウンがあるね」みたいなことをけっこう言われて、「あ、そうなんだ」って。
自然に「じゃあ、ひとりでやろう」って
──その頃からアコギと歌の在り方みたいなことも研究してました? 音楽的な方向性というか。
うーん……リサ・ローブは好きでしたね。アコースティックギターと歌が真ん中にあって、そこにバンドサウンドが自然に加わってるっていう。最近だとテイラー・スウィフトとか。ああいう音はしっくりくるみたいですね、やっぱり。
──なるほど。でも、秦さんのキャリアのスタートは弾き語りだったんですよね。
そうですね。高校の軽音楽部でバンド組んだりはしてたんですけど、オリジナルの曲を初めて人前でやったのは、弾き語りでした。“裸一貫、挑みにいく”みたいな感じで。
──バンドで活動することは全く考えなかった?
高校時代に仲良かった友達は、パンク系だったり、メロコアっぽい音が好きだったんですよ。音楽的にはまったく別のところを向いてたから、「じゃあ、ひとりでやろう」って。わりと自然な感じでしたね、それは。
──「ひとりでやるんだ」っていう強い決意があったわけじゃなく?
なんだか理想だけは高いところはあったんですけどね。ぜんぶ自分でやりたいというか、「自分はこういう音楽がやりたい。そのためにはひとりでやるのがいいだろう」と。何もできないクセに(笑)。
DISC 1
- やわらかな午後に遅い朝食を
- 虹が消えた日
- シンクロ
- Lily
- 君とはもう出会えない
- 僕らをつなぐもの
- 最悪の日々
- 赤が沈む
- サークルズ
- 鱗(うろこ)
- dot
- Theme of GREEN MIND ※新録
- アイ(弾き語りVersion) ※新録
DISC 2
- 朝が来る前に
- フォーエバーソング
- Halation
- プール
- ファソラシドレミ
- Baby, I miss you
- キミ、メグル、ボク
- 花咲きポプラ
- 青い蝶
- 風景
秦 基博(はたもとひろ)
1980年生まれのシンガーソングライター。横浜を中心に弾き語りでのライブ活動を展開。2006年11月にシングル「シンクロ」でメジャーデビュー。強さを秘めた柔らかな声と、耳に残るポップなメロディで大きな注目を浴びる。2007年9月に発表した1stフルアルバム「コントラスト」がチャート・トップ5入りを記録し、ブレイク。2008年には「キミ、メグル、ボク」「虹が消えた日」「フォーエバーソング」といったヒットシングルを続けてリリースし、2ndアルバム「ALRIGHT」発売後の全国ツアーから2009年3月に行われた日本武道館公演、そして5月から7月にかけて行われた弾き語りツアーのチケットすべてを即日ソールドアウトさせた。最近では冨田ラボ×松本隆とのコラボ作「パラレルfeat.秦 基博」やTHE YELLOW MONKEYトリビュートアルバムへの参加も話題に。