音楽ナタリー PowerPush -go!go!vanillas

目指すは普遍的音楽 メジャーで変わった意識

今年2月、KANA-BOON、キュウソネコカミ、SHISHAMOとともに「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2014」に参加。「SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2014」「RUSH BALL 2014」などの大型フェスにも出演し、タワーレコード限定シングル「エマ」をリリースするなど、急激に注目を集めているgo!go!vanillasがメジャー1stアルバム「Magic Number」を完成させた。2000枚限定シングルとしてリリースされた「オリエント / ホラーショー」を含む本作には、彼らのルーツである1960~70年代のロックンロールと現代的なポップミュージックが結びついた、きわめて魅力的なナンバーがたっぷりと収められている。

今回ナタリーではメンバー4人にインタビュー。バンドのターニングポイントとなる本作の制作プロセス、ロックンロールに対するスタンスなどを率直に語ってもらった。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 藤田二朗

曲作りにおける意識の変化

go!go!vanillas

──バンドのルーツミュージックを反映させながら、現代的なポップミュージックとして成立させる。理想的なメジャーデビューアルバムだと思うのですが、皆さんの手応えはどうですか?

ジェットセイヤ(Dr) 手応えはすごくありますね。まず、曲の作り方自体が前回(インディーズ時代にリリースした1stアルバム「SHAKE」)とは変わっているんですよ。基本的に牧(達弥)が曲を書くんですけど、今回は“この曲をどう作り上げていくか”というイメージが牧の中にあらかじめあって。そこに対して、どんな音を乗せるか?ということが試された制作だったんですよね。

牧達弥(Vo, G) 以前はテーマを決めず、アコギを弾いてるときに出てきたメロディやコード進行から作ることが多かったんです。どちらかという突発的に曲を生み出していたんですが、今回は「どういう曲にするのか、どういう歌詞を伝えるのか」をあらかじめ考えたんですよね。例えばシングル曲の「エマ」は、ポップなダンスチューンなんだけど、ただのハッピーな歌ではなくて、「楽しさの根本の部分にあるものを表現したい」というテーマがあって。そういうことをちゃんと意識しながら曲を書いたんです。

──その変化はどうして生じたんでしょうか? ポップであることを心がけて意図的に変わったのか、ソングライティングの力量が上がってきたのか……?

 両方だと思います。曲を書くペースも早くなってきたし……。ライブが増えて、たくさんのお客さんがいる前で演奏できるようになったことも影響してると思いますね。

長谷川プリティ敬祐(B) うん。

 僕は海外のバンドが好きなんですけど、あっちのバンドって、すごくマイペースじゃないですか。

──リリースのペースも日本とは全然違いますよね。2、3年に1枚が当たり前というか。

牧達弥(Vo, G)

 そうそう。あと、ライブもそこまで気合いを入れる感じでもないし。それに比べると日本のバンドはライブに対して貪欲だと思うんです。対バンライブのときも「この中で一番印象に残るライブをやる」という気持ちが強いというか……。僕らもこの1年くらいで「このままマイペースでやっていくのはよくないな」と思うようになったんですよね。他のバンドとの違いを見せつけたいし、「今の音楽シーンにないものはなんだろう」とか「僕らが持ってるものは?」ということも考えるようになって。それを示すためには、意志を持って曲を作らないといけないなって。

長谷川 自分たちのやり方だったり、自分たちにしかできない曲で、今の日本のシーンで戦っていきたいっていうことですよね。もちろん、ライブでお客さんの心をつかむことや、いろいろなものを共有したいという意識も強くなったし。

宮川怜也(G) スペシャ列伝のツアーだったり、自分たちよりも格上のバンドと共演させてもらう中で勉強したこともたくさんあって。それも今回のアルバムに生かされてると思うし、前回よりもリスナーと共有できる部分が多くなってると思います。

長谷川 さっき牧が言った通り、最初から方向性を見据えながら作っていったんですけど、それをほかの3人(長谷川、宮川、セイヤ)がどれだけ共有できるかも大事だったんです。それができないと、このアルバムは作れなかったと思いますね。俺も自分のパートだけではなく、ドラムやギターにも目を向けるようになったし、今回の制作を通して、メンバーそれぞれの役割、立ち位置も浮き彫りになって。個々もかなり成長できたと思います。

 アルバム全体を見据えて作れたこともよかったんじゃないかな。1枚目はガムシャラだったし、1曲1曲がんばって作って、それをまとめたという感じだったんです。今回はアルバムを通して自分たちの色を出せたと思うし、より伝わる作品になりましたね。

この曲の賞味期限は?

──アレンジや演奏も当然、変わってきますよね。「なぜこの音を出すのか」が明確になるというか。

 そうですね。実際かなり勉強したし、音楽の聴き方も変わりましたね。前は「いいじゃん」とか「この曲、微妙だね」くらいだったんですけど、「このバンドはこういう新しいことをやろうとしている。俺らがやるとしたら、どうだろう?」ということも考えるようになって。職業病みたいですけどね(笑)。

──参考になるのは、上の世代のバンドが多い?

長谷川 上のバンドもそうだし、同世代のバンドから刺激を受けることもありますね。

 「MUSIC TAGS」もそうですよね。キュウソネコカミはスペシャ列伝でも一緒に回って「破天荒でカッコいいな」って思ってたんですけど、あのときよりもさらに成長していて。いい意味で余裕とか自信が見えるというか。KEYTALKはお客さんを完全に味方に付けていて、本当に好きなようにやっている雰囲気なんですよ。その中で僕らがどうやって勝負してるかっていうことも、このアルバムに詰まってると思います。アルバムの新曲もかなりライブでやってるので。

──オーディエンスの反応はどうですか?

 しっかり受け取ってくれてるという手応えはありますね。ちゃんと音楽を聴いてくれている感覚があるというか。真摯に音楽を追求しているので、そういうふうに感じられるのがすごくうれしいんですよ。リスナーの音楽の聴き方を変えられるようなバンドになりたい、という気持ちもあるし。

──すごい志ですね、それは。

 目先の盛り上がりだけになっちゃうと「後々まで記憶に残るのかな?」って疑問に思うこともあるので。曲を作るときは毎回、「この曲の賞味期限はどれくらいだろう?」って考えるんです。来年は聴けるか? 10年後にも聴けるか?っていう……つまり、普遍性がテーマなんですよね。例えばThe Beatlesの曲は、今でも世界中で愛されてるじゃないですか。曲が持ってるエネルギーがすごいから、全然古くならないし、今も革新的で。今の若いバンドでそういうところを目指している人たちはあんまりいないと思うんですよね。

長谷川プリティ敬祐(B)

──そういうストイックな姿勢で制作に臨むと、スタジオの中がシビアな空気になることもあると思うんですが……。

セイヤ けっこうありましたね(笑)。

 まあ、“まじめに楽しく”という感じで(笑)。

長谷川 そうだね(笑)。普遍性を目指しながら、今の日本のリスナーにも届けたいと思ってるわけだから、どうしてもシビアになりますよね。

 でも、その2つは切り離されているものではないと思うんですよ。その時代に爆発的に響いたものだけが、後々まで残る曲になると思ってるから。Arctic Monkeysは、まさにそうですよね。ちゃんとルーツミュージックのテイストを持ちながら、ダンスミュージックの感触もあって。1stアルバム(「Whatever People Say I Am, That's What I'm Not」)で持ち上げられた後も、ちゃんと自分たちを貫いて、グラミー賞を獲得して。すごく救われましたね、あのバンドには。

ニューアルバム「Magic Number」/ 2014年11月5日発売 / Getting Better
「LIGHT」
初回限定盤 [CD+DVD] 3240円 / VIZL-734
通常盤 [CD] 2700円 / VICL-64209
CD収録曲
  1. セルバ
  2. エマ
  3. マジック
  4. トワイライト
  5. オリエント(新録バージョン)
  6. 春眠
  7. サマータイムブルー
  8. ドアー
  9. ホラーショー
  10. ライクアマウンテン
  11. ティーンネイジャーズノイズ
初回限定盤DVD収録内容

インディーズ最後のワンマン“8/20=バニラの日”のライブ映像5曲

2014年8月20日「エマージェンシーパーティー」新宿red cloth ワンマンライブ映像

  • アクロス ザ ユニバーシティ
  • ハイテンション
  • エマ
  • 人間讃歌
  • オリエント
初回限定盤には“マジックナンバー”封入
  1. 「Magic Number」Tour 東名阪公演チケット抽選最終先行予約に使用可能(11月16日まで)。
  2. 最新デモ音源“マジックトラック”(タイトル未定)WEB試聴用パスワードとして使用可能(12月31日まで)。

※“マジックトラック”はgo!go!vanillasが制作している新曲のデモ音源で、制作途中段階の“スケッチ”の状態にあたるもの。新曲として改めて発表される予定。

インストアレコーディングイベント
「Rock! On! バニラズ」
  • 2014年11月29日(土)東京都 タワーレコード渋谷店
  • 2014年12月5日(金)大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店

※“マジックトラック”のレコーディングイベント。詳細はオフィシャルサイトで確認を。

「Magic Number」Tour 2014
  • 2014年11月17日(月)埼玉県 Livehouse KYARA
    <出演者>go!go!vanillas / 忘れらんねえよ
  • 2014年11月19日(水)新潟県 CLUB RIVERST
    <出演者>go!go!vanillas / 忘れらんねえよ
  • 2014年11月21日(金)岩手県 Club Change WAVE
    <出演者>go!go!vanillas / フラワーカンパニーズ
  • 2014年11月22日(土)宮城県 PARK SQUAREA
    ※ワンマンライブ
  • 2014年11月24日(月・祝) 北海道 BESSIE HALL
    <出演者>go!go!vanillas / Drop's
  • 2014年11月28日(金)長野県 長野CLUB JUNKBOX
    <出演者>go!go!vanillas / POLYSICS / THE NEATBEATS
  • 2014年12月6日(土)香川県 DIME
    <出演者>go!go!vanillas / ザ50回転ズ / LAMP IN TERREN
  • 2014年12月7日(日)岡山県 PEPPER LAND
    <出演者>go!go!vanillas / ザ50回転ズ / LAMP IN TERREN / ドラマチックアラスカ
  • 2014年12月9日(火)広島県 CAVE-BE
    <出演者>go!go!vanillas / ザ50回転ズ / LAMP IN TERREN / ドラマチックアラスカ
  • 2014年12月11日(木)長崎県 DRUM Be-7
    <出演者>go!go!vanillas / 空想委員会 / LEGO BIG MORL
  • 2014年12月13日(土)大分県 DRUM Be-0
    <出演者>go!go!vanillas / 空想委員会 / LEGO BIG MORL
  • 2014年12月14日(日)福岡県 DRUM Be-1
    <出演者>go!go!vanillas / 空想委員会 / LEGO BIG MORL
  • 2015年1月9日(金)愛知県 APOLLO BASE
    ※ワンマンライブ
  • 2015年1月10日(土)大阪府 Shangri-La
    ※ワンマンライブ
  • 2015年1月16日(金)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
    ※ワンマンライブ
go!go!vanillas(ゴーゴーバニラズ)

牧達弥(Vo, G)、宮川怜也(G)、長谷川プリティ敬祐(B)、ジェットセイヤ(Dr)による4人組バンド。どこかノスタルジックで心地よいメロディ、骨太なバンドサウンドが魅力。2013年1月に7inchシングル「人間讃歌 / アクロス ザ ユニバーシティ」を、同年7月に1stアルバム「SHAKE」をSEEZ RECORDSよりリリースする。2014年2~3月にはスペースシャワーTVが企画するライブツアー「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR」に参加し注目を集める。また2月に2000枚限定シングル「オリエント / ホラーショー」を発表し完売させる。8月にはタワーレコード限定シングル「エマ」を発表。11月5日にビクターエンタテインメント内のレーベルGetting Betterよりメジャーデビューアルバム「Magic Number」をリリース。