音楽ナタリー Power Push - HISASHI(GLAY)×吉田豪
AUTO-MODからエヴァまで 同世代2人のサブカル大放談
GLAYのニューシングル「[DEATHTOPIA]」がリリースされた。
本作はアニメ「クロムクロ」のオープニングテーマ「デストピア」「超音速デスティニー」を収録した作品で、リード曲2曲はいずれもHISASHI(G)が作詞作曲を担当。サウンド、歌詞ともにエッジの効いた、HISASHI節が光るシングルに仕上がった。
今回音楽ナタリーでは、シングルのリリースに合わせてHISASHIをフィーチャーした特集を企画。GLAYきってのサブカル好きとして知られる彼のたっての希望で、“プロインタビュアー”の吉田豪に聞き手を依頼した。同世代でもある2人のディープな会話を楽しんでほしい。
取材・文 / 吉田豪 撮影 / 上山陽介
若さってすごいな
──HISASHIさんと初めてお会いしたのは、5年ぐらい前にボクが一度だけ参加した氣志團の綾小路翔さんの誕生会でしたよね。あのとき「吉田豪さんの『人間コク宝』、読んでますよ」って言われて衝撃を受けました。
GLAYはメンバー全員、「人間コク宝」は読んでます(笑)。
──そう言われて驚いた2トップが新垣隆さんとGLAYですよ!
僕らはサブカル世代というか、函館で情報がない中で育って、「宝島」を隅まで読み漁るようなタイプだったので。もともとそういったカルチャーが好きなんですよ。
──GLAYのサブカル担当はHISASHIさんってイメージですけど、実は全員そっち系の人なんですね。
僕に関しては広く浅くなんですけどね。それが弱点でもあって、均等にいろいろ触れていこうという。ただメンバー全員、情報に関しては本当に貪欲なんですよ。アーティストがテレビにあまり出てない時代だったので、「AUTO-MODってなんだ?」とか言いながら必死で漁って。
──「AUTO-MODではBOØWYの布袋がギター弾いてるらしいぞ?」って感じで。ボクとHISASHIさんって1学年違いだから、たぶん同じような文化を通ってるんですよ。それこそHISASHIさんが最初に買ったレコードは、ザ・ファンクスの入場テーマであるクリエイションの「スピニング・トー・ホールド」みたいですけど、それもすごいわかります。
あのリフは魅力でしたね。クリエイションにはロックとは違う文脈から入りました。
──ロックとの最初の出会いって、プロレスの入場テーマだったりするじゃないですか。
あ、やっぱりそうですか!
──Led Zeppelinの「移民の歌(原題:Immigrant Song)」(ブルーザー・ブロディの入場テーマ)もBlack Sabbathの「Iron Man」(ザ・ロード・ウォリアーズの入場テーマ)も、プロレスが最初の出会いでしたからね。
そうですよね。だからあんまりロックであるとかないとかっていうのは関係なくて。札幌は昔からメタルが強かったんだけれど、そこにパンク的な要素とかも入っていたりとかしてた。
──札幌でメタルとパンクを融合させたバンドといえばFLATBACKERですけど、もちろんボクも大好きです!
いいですよね!
──まだ情報がない時代特有のサウンドですよね。ヘヴィメタルにザ・スターリンとかハードコアパンクが混ざってきちゃうっていう。
だから僕たちも疑問もなく、そこらへんを聴いていて、メタルの友達とかも一緒に「パンクでこういうのがあるんだよ」みたいな。スラッシュメタルとかも、どっちに属するかわからないけどみんなで聴いてたし。一方で、マドンナとかおニャン子クラブとかも聴いちゃうみたいな。札幌はすごく特殊なカルチャーがあったんですよ。
──だからこそHISASHIさんが好きなアルバムとしていつも真っ先に挙げるのがハードコアパンクの超名盤オムニバス「GREAT PUNK HITS」(G.I.S.M.、THE EXECUTE、あぶらだこ、LAUGHIN' NOSE、THE CLAY、G-ZETらが参加)で、それもすごいわかります。
そうですね。だから、社会的な背景とかではなく、スキャンダラスで危険な雰囲気があって、ぱっと見派手で、メロディラインがメロディアスでポップっていうと、もう夢中になりますよね。UKパンクも好きだったんですけど。
──あの時代の、凶悪だけどメロディもちゃんとあるハードコアパンクに惹かれたわけですね。
はい。たぶんリアルタイムでライブハウスとかに行っていたら、恐れ多くて聴けなかったかもしれないけど(笑)。
──ボクもギリギリで間に合わなかった世代だから、上の世代の方々の大変だった話をよく聞きました。
それこそライブ記事が写真週刊誌とかに載っていましたからね。ハナタラシがユンボでライブハウスをぶっ壊したとか、「命の保証はしない」っていう誓約書にお客さんがサインさせられた話とか。
──ハナタラシが会場にダイナマイトを持ち込んでライブが中止になった話とか。ボクも当時はライブハウスが恐ろしすぎて、いざ行くときのための覚悟や外見を整えるための準備期間が2年ぐらいありました。
ははは!(笑) その気持ち、わかります。だから当時インターネットとかなくてよかったなと思って。インターネットがあったら上京とかしてなかったかもしれないですね。
──怖すぎて(笑)。
ええ(笑)。バンドブームが終わった厳しい時期に「函館からやってまいりました」みたいな18、19歳のヤツらを受け入れられるような体制ではなかったと思うから、若さってすごいなと今痛感しています(笑)。
もうバンド辞めていいんじゃないか
──HISASHIさんがよく好きなアーティストとして名前を出されているのがTHE WILLARDとかLAUGHIN' NOSEとかですね。
はい。あまり言葉は好きじゃないんだけど「インディーズ御三家」と呼ばれていたバンドですよね。当時NHKでも特集とかされて。
──「インディーズの逆襲」! と言うことは当然、有頂天も好きなんですよね?
大好きです!
──ボクは有頂天を最初パンクバンドだと間違えてシングルを買ったんですよ。
僕も有頂天はパンクだと思って聴いてましたね。ナゴムでいうと筋肉少女帯の上條淳士先生が描くジャケットとか、なんか夢のコラボなんですね、すべてが。
──最近HISASHIさんはKERAさんともライブで絡んでましたけど。
この前、新宿ロフトで初めて共演させてもらって本当にうれしかったですね。THE WILLARDのメンバーにも自分がラジオ番組をやっていたときにゲストで来ていただいたり、ラフィンともヒゴちゃん(ヒゴ・ヴィシャス)のイベントで競演することができて、「もうバンド辞めていいんじゃないか」ぐらいの状況まで来てるんですけどね。
──その3バンドと絡むのがHISASHIさんのゴール(笑)。ボクはまだTHE WILLARDとは絡んでないんですよ。
THE WILLARDは、いまだにライブを観に行っています。代官山のUNITとか。
──THE WILLARDは過小評価されすぎなんですよね。
本当にそうですよ! いまだに音が鋭いですよね、JUNさんとか。大好きです。
──ガンコすぎて、音源のちゃんとした再発がされないがゆえに再評価されにくいバンドっていう。
うんうん。もしかしたら僕はそういうバンドが好きなのかも。あと当時印象に残ってるのはやっぱり「THE PUNX」(LAUGHIN' NOSE、GAS、G.I.S.M.、THE WILLARD、リップクリーム、コブラが参加)!
──「宝島」のカセットブックですね。
はい。地元の長崎屋っていうデパートで買ったんですけど、これも衝撃的な出会いでしたね。
──ボクもですよ! あのカセットブックのブックレットを作っていたのが「修羅」っていうミニコミ誌で、高校生のときボクはそこに入るんです。それが、今の仕事を始めるきっかけみたいなもので。
へーそうなんですね。
──HISASHIさんはその頃はどんなバンドを?
僕は蟻っていうバンドを当時やっていたんですけど、速ければなんでもいいみたいな感じで、とにかく速い曲をやりまくって、自己満足で盛り上がってたんです。で、「本当のパンクというものは何か?」みたいなところで、いきなり壁にぶち当たったんですよね。
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- GLAY ニューシングル「[DEATHTOPIA]」 / 2016年8月3日発売 / LSG
- [CD+DVD] 2052円 / PCCN-00023
- [CD] 1512円 / PCCN-00024
CD収録曲
- デストピア
- 超音速デスティニー
- JUSTICE [from] GUILTY(GLAY Special Live 2013 in HAKODATE GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.1)
- 微熱Ⓐgirlサマー(GLAY Special Live at HAKODATE ARENA GLORIOUS MILLION DOLLAR NIGHT Vol.2)
- 黒く塗れ!(GLAY ARENA TOUR 2014-2015 Miracle Music Hunt)
- everKrack(GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova")
- coyote,colored darkness(ROCK'N'ROLL SWINDLE at NIPPONBUDOKAN)
- WORLD'S END(GLAY ARENA TOUR 2007 "LOVE IS BEAUTIFUL")
DVD収録内容
- RX-72 -54th SINGLE EDITION- HISASHI×茂木淳一の対談や解説を元に本作を徹底解剖!
- デストピア / 超音速デスティニー MUSIC VIDEO
- デストピア / 超音速デスティニー MUSIC VIDEOメイキング
- 彼女はゾンビ(GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova")
- デストピア(GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova")
- GLAY アンソロジー盤「BEAT out! Anthology」
- 2016年9月9日発売 [CD2枚組+Blu-ray] / 8943円 / LSG / PCCN-90003
DISC 1
「BEAT out!」Remix & Remastering 2016
- More than Love
- Yes,Summerdays
- 原色の空 <Cloudy Sky>
- Trouble On Monday
- Together
- 月に祈る
- 生きてく強さ
- 週末のBaby talk
- グロリアス
- 軌跡の果て
- Miki Piano
- Cynical
- Believe in fate
DISC 2
「BEAT out! Anthology」Demo & Live in 1996
- More than Love Live ver. from 東京厚生年金会館
- More than Love AG Demo
- Yes,Summerdays AG Demo
- Yes,Summerdays Demo
- 原色の空 <Cloudy Sky> Demo
- Trouble on Monday Demo
- Together AG Demo
- Together Demo
- 月に祈る Live ver. from 東京厚生年金会館
- 生きてく強さ Demo
- 週末のBaby talk Demo
- グロリアス Demo
- 軌跡の果て AG Demo
- 軌跡の果て Demo
- Miki Piano Demo
- Cynical Demo
- Believe in fate Demo
DISC 3(Blu-ray Disc)
Live of BEAT out! Days
- 「BEAT out! '96 TOUR」より1996年3月5日 渋谷公会堂公演(全曲収録)
- 「BEAT out! reprise TOUR」より1996年9月9日 日本武道館公演(全曲収録)
GLAY(グレイ)
北海道函館市出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年から活動を開始し、1989年にHISASHI(G)が、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年にシングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には千葉・幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブ「MAKUHARI MESSE 10TH ANNIVERSARY GLAY EXPO '99 SURVIVAL」を開催し、有料の単独ライブとしては世界最多観客動員を記録する。2000年に入ってからも数多くのヒット曲やヒットアルバムを生み出し、2010年4月には自主レーベル「loversoul music & associates」(現:LSG)を設立。メジャーデビュー20周年となる2014年は、9月に宮城・ひとめぼれスタジアム宮城にて単独ライブ「GLAY EXPO 2014 TOHOKU」を行い、11月にオリジナルアルバム「MUSIC LIFE」をリリースした。2015年には5月に10年ぶりとなる東京・東京ドーム公演を2日間にわたって開催。2016年1月にシングル「G4・IV」を発表し、同月より全国ツアー「GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova"」を開催した。8月に54枚目のシングル「[DEATHTOPIA]」をリリース。