音楽ナタリー PowerPush - GLAY

「MUSIC LIFE」特集

TAKUROインタビュー

自分へのご褒美が「MUSIC LIFE」

──さてつい先日、13枚目となるアルバム「MUSIC LIFE」がリリースされました。いちリスナーとして非常にポップで聴きやすい、フレッシュな1枚という印象を受けました。

自分たちでもそう思ってて、長さも49分くらいなのかな? ちょうどいいサイズだと思います。JIROは、曲をちゃんと3分間のポップソングとして成立させていこうとアレンジを作ってましたね。

──2013年に同時リリースされた「JUSTICE」と「GUILTY」は、それぞれ異なるコンセプトが設けられていましたが(セルフプロデュースの「JUSTICE」は「GLAYの新しい挑戦」、佐久間正英プロデュースの「GUILTY」は「王道のGLAY」がテーマ)、今回はどんなイメージを持って制作していったんですか?

僕個人としては、GLAYを結成して25年が経ち、今年デビュー20周年を迎えて、自分の何もかもを捧げてここまで走ってきた自負もあるんです。あと、GLAYのサウンドもだいたい見えてきたんですね。だからこそ、デビュー20周年に出すアルバムは自分にご褒美をあげたいなと思って。ファンの人たちが求める“GLAY像”を考えたり、「前回はあんな感じだったから、今回はこうしよう」とか考えたりすることをやめて、「今回は俺は誰になんと言われようと自分のやりたいことしかやりません。メインソングライターとして、ポップなシングル向きの曲を書くということは引き受けません。次回はやるかもしれませんけど、今回はやりません」って決めたんですね。それで、やりたいことのクオリティが高かろうが低かろうが関係ない。自分の音楽的欲求をすべて満たす。外界のしがらみと縁を切るってことが今回のテーマで。ほかのメンバーは違うかもしれませんが(笑)。今回はこんなに素敵なご褒美をもらってもいいのかってくらいワガママを言わせてもらいました。

TAKURO

──音楽家としてのTAKUROさんの欲求を満たすのが、今作のテーマということなんですね。

そうですね。

──とは言え、私はとても開かれた作品だと感じたんです。新しい一面もたくさん知ることができましたし。決して自己満足に終わってはいない。

今までGLAYの幅を広げたいとか突き抜けたいと思って、自分の引き出しをがちゃがちゃ引っ掻き回して曲を作ってきたこともあったんですけど、自分たちの思いとは逆に「王道ですね」って言われることも多かったんです。でも今回は「突き抜けましたね」「広がりましたね」って言われることが多くて。自分の気持ちに従ったほうがいいのかなってデビュー20周年で気付くっていう(笑)。

──まだまだ探求の余地がありそうですね。

「MUSIC LIFE」がそういうアルバムになったのは、亀田さんっていう信頼できるパートナーを得られたっていうのが一番大きいですね。アルバムの選曲もお任せしたんですよ。4人で50曲くらい提出して、「僕らがやりたい曲はこれです」「アルバムの中に収まるアイデアをGLAYにください」と。だから「百花繚乱」や「浮気なKISS ME GIRL」も俺はやりたいけど、GLAYは俺のものではないので選ばれないかな?とも思ってたんです。だからアルバムに入ったのはうれしい誤算でしたね。

──今挙げた2曲は、非常にエッジが立ってて、かつGLAYの意外性も出てると思います。特に「百花繚乱」は、社会風刺を織り交ぜたパンチの効いた歌詞も話題を集めてますし。

でも、僕からしたらこの2曲って当たり前に暮らしてる大人が感じること、新橋のおっちゃんたちがニュースを観ながら言うようなことを、ポップミュージックの枠の中で歌ってるだけなんです。あと、TERUが書いた「BLEEZE」と「疾走れ!ミライ」の2曲があれば、大きく誤解されることはないだろうなという確信もあって。「GLAYもそういうことを歌うのね」って、受け止められるだけの成熟度はこの市場にはあるだろうし。特に「百花繚乱」のような時事ネタが入った曲はライブでどんどん変化していくし、時代によって歌詞の意味が変わっていくのでこれからが楽しみですね。

「俺たち柄じゃないし……」を覆した亀田誠治

──GLAYと亀田さんは2013年に発表されたシングル「DARK RIVER」からタッグを組んでいますが、初めてアルバムを作ってみて発見したことはありますか?

TAKURO

亀田さんの音作りはどこまでも紳士的で、俺たちにはないものを持ってるのでありがたかったですね。例えば、いつも行ってる居心地のいい店があるんだけど、「ホテルのレストランもたまに行ってみたら?」っていうようなアドバイスをもらって、「俺たち柄じゃないし……」って思いながらも行ってみたら意外と楽しめたみたいな。人間って、鏡を見るときに自分の好きな角度を選ぶし、好きな顔をすると思うんですよ。GLAYも曲の選び方や制作方法にもそういう傾向があるんですけど、世界中には才能のある連中、才能のある音楽家がいて、彼らとの出会いを拒むほどGLAYは愚かではない。だから今回は亀田さんとアルバムを作る中で、いろんなドラマーとセッションしてみたり、エンジニアさんを起用してみたりしましたね。

──確かに今回はいろんなコラボが実現しましたよね。クラウス・フォアマンさんが描いたアルバムジャケットもしかり。

11月下旬から「MIRACLE MUSIC HUNT」っていうツアーが始まるんだけど、実はアルバムタイトルも「MUSIC HUNT」っていうアルバムタイトルにしようと思ってたんですよ。それがもっと大きな意味を帯びて「MUSIC LIFE」に変わったんだけど。

──そうでしたか。

だから亀田さんが入ったことによる影響は大きいです。平井堅くんやいきものがかりとの仕事を見てて、今の時代に対して的確に批評する目とかポップさには絶大な信頼を置いていたんですけど、そういう人と北海道から出てきて、もがきながらやってきた自分たちと気が合うのかどうか不安はありましたね。でも「DARK RIVER」を作ったときに、今まで歩んできた道は違えども、音楽に対する思いや愛情は一緒なんだなって感じて。すごいアルバムができるかもっていう確信が生まれました。

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TAKUROインタビュー
「MUSIC LIFE」参加ドラマーインタビュー
ニューアルバム「MUSIC LIFE」 / 2014年11月5日発売
「MUSIC LIFE」
2CD豪華盤 BALLADE BEST☆MELODIES / 3996円 / ポニーキャニオン / PCCN-00017
2CD豪華盤(G-DIRECT限定)BALLADE BEST☆MEMORIES / 3996円 / loversoul music & associates / LSCD-0018
1CD盤 / 2700円 / ポニーキャニオン / PCCN-00018
CD収録曲
  1. BLEEZE(Album Ver.)
    [作詞・作曲:TERU / ドラム:永井利光]
  2. 百花繚乱
    [作詞・作曲:TAKURO / ドラム:松下敦]
  3. Only Yesterday
    [作詞・作曲:TAKURO / ドラム:村石雅行]
  4. 疾走れ!ミライ
    [作詞・作曲:TERU / ドラム:永井利光]
  5. 祭りのあと
    [作詞・作曲:TAKURO / ドラム:永井利光]
  6. 浮気なKISS ME GIRL
    [作詞・作曲:TAKURO / ドラム:高橋まこと]
  7. 妄想コレクター
    [作詞・作曲:HISASHI / ドラム:永井利光]
  8. Hospital pm9
    [作詞・作曲:TAKURO]
  9. DARK RIVER
    [作詞・作曲:TAKURO / ドラム:村石雅行]
  10. TILL KINGDOM COME
    [作詞・作曲:TAKURO / ドラム:中村達也]
  11. MUSIC LIFE
    [作詞:TAKURO / 作曲:JIRO / ドラム:永井利光]
GLAY(グレイ)

函館出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年から活動を開始し、1989年にHISASHI(G)が、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年にシングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブ「MAKUHARI MESSE 10TH ANNIVERSARY GLAY EXPO '99 SURVIVAL」を開催。この人数は単独の有料公演としては、日本のみならず全世界での史上最多動員記録となっている。その後も数多くのヒット曲やヒットアルバムを生み出し、2010年4月には自主レーベル「loversoul music & associates」を設立。メジャーデビュー20周年を迎えた2014年9月20日には、宮城で大型ライブ「GLAY EXPO 2014 TOHOKU 20th Anniversary」を敢行した。同年11月5日、1年10カ月ぶりとなるオリジナルアルバム「MUSIC LIFE」をリリース。


2014年11月26日更新