ナタリー PowerPush - DEAD END
MORRIE×清春、MORRIE×HYDE 2つの対談から読み解く超豪華トリビュート
MORRIEと清春の対談に続いては、MORRIEとHYDEの対談を掲載する。イベントを通じてステージ上で競演することはあったものの、2人が一緒にインタビューを受けるのはこれが初めて。今回はお互いの第一印象やアーティストとしての魅力を語ったほか、HYDEが80年代のDEAD ENDのレコーディング方法についてMORRIEに質問するなど、興味深い話を聞くことができた。
取材・文 / 西廣智一 撮影 / 広川智基
DEAD ENDの曲は自分の中に染み込んでいた
──HYDEさんはいつ頃DEAD ENDを知りましたか?
HYDE 「SHAMBARA」(1988年発売メジャー2ndアルバム)の頃です。音楽的に枠にとらわれてないところに一番グッときましたね。その当時ってメタルはメタル、パンクはパンクじゃなきゃダメというか、ジャンルを限定しがちだったというか。その点DEAD ENDはすごく自由でカッコよくて、そこに一番惹かれたかな。
──ではご自身としても、かなり影響を受けたと。
HYDE そうですね。あと、L'Arc-en-CielのメンバーもみんなDEAD ENDが大好きだったので、「じゃあこの曲やるよ」って言うとみんなすぐ弾けるんです。別にコピーしようと意識しなくても、自分の中に染み込んでいて。かなりやりまくってましたね。
──なるほど。ではボーカリストとしてのMORRIEさんの魅力ってどういうところでしょう?
HYDE 耳なじみがよい歌声なんだけど、自由奔放でカッコいいところかな。その両方を一緒に表現するのって実はなかなか難しくて、どちらかに寄ってしまうケースが多いと思うんですけど、どちらも高いレベルで表現できるからこんなに愛されてるんじゃないですかね。もちろん声質っていう根本的な要素もあると思うけど。
──MORRIEさんはL'Arc-en-Cielを初めて聴いたときの印象を覚えてますか?
MORRIE 最初は「DUNE」っていうアルバムです。1993年くらいだったと思うんですけど、周りから「これ、DEAD ENDみたいですよ?」といって聴かせてもらったんですけど、あんまりDEAD ENDっぽくは思わなくて。でも彼らが作っていた世界観はけっこう気に入りましたね。その後もチラチラと聴いてましたけど、HYDEが独特のいい声をしてるので、僕は好きでしたよ。
──ライブを初めて観たのはいつ頃でしたか?
MORRIE 実は最初にHYDEをライブで観たのはVAMPSなんですよ。ちょうどニューヨークに来たときで、さっきもちょっとHYDEに言ったんだけど、歌の中でいかに自由になれるか、自由に表現できるかっていうのは難しいことで。でもHYDEはHYDEなりのやり方でそれを実践していて、そういうところに共感を覚えました。
DEAD ENDの楽曲はメロディが美しくてキャッチー
──HYDEさんが言うように、80年代の音楽シーンってメタルはメタル、パンクはパンクという時代でしたが、そんな中でもDEAD ENDはいろんな要素を取り入れて、アルバムごとに違う色を放つ面白い存在だったと思います。今回のトリビュートアルバムを聴いて、その点は改めて実感しました。
HYDE DEAD ENDの楽曲はメロディが美しいんですよ。美しくてキャッチー。基本的にはメタルの楽曲の作り方ですよね。ギターリフがあって、そこにメロディを乗せていくっていう。
MORRIE そうね。いつもメロディは最後に乗せて。
HYDE ですよね。そのやり方で、よくここまでできるなって思います。メタルの場合だとリフにあわせてユニゾンでメロディを付けるのが一番スタンダードなやり方だと思うんですけど、DEAD ENDの場合はそうならずによりキャッチーで耳触りのよいメロディが出てくるっていう。
──YOUさんがリフや楽曲の軸を作って、バンドで肉付けして、MORRIEさんがメロディを付けて歌詞を書いて楽曲を完成させていると思いますが、その曲作りの方法自体は80年代と再結成以降では一緒なんですか?
MORRIE 基本的には同じですね。足立くん(YOU)が作ってきたものに対して、あとは皆さん好きにしてくっていう(笑)。そのへんはまったく変わってません。だから僕もメロディを好きに付けられるし、歌詞も好きに書けるし。
1+1+1+1が月や宇宙になるのがバンド
──DEAD ENDはメンバーそれぞれ個性がバラバラなのに、ちゃんと1本筋の通った音楽を作り上げていたのがすごいですよね。
MORRIE バンドって基本的には化学反応であって、1+1+1+1が5とか6とか数字になるのではなくて月になったり宇宙になったり、まったく質が違うものになるのがバンドの醍醐味なんです。そういう意味ではDEAD ENDのやり方って、ある意味一番理想に適ってるとは思います。もちろんある程度割り切っておかないと難しいところもありますけどね。だから足立くんは曲の土台みたいなものを作ってきて、メンバーはいかに自分の中の振れ幅を広げながら自由にやれるか、実験をしていく。僕はDEAD ENDのほかにもCreature Creatureもやってますけど、DEAD ENDのほうが無責任になれるというか、楽ですね。
──そうなんですね。
MORRIE Creature Creatureやソロのほうがはるかにしんどい(笑)。
──HYDEさんはL'Arc-en-CielとVAMPSで活動してますけど、今のMORRIEさんの話を聞いてどうですか?
HYDE L'Arc-en-CielはDEAD ENDに近いですね。ただ、僕の場合はメロディはもう放棄しました。「そこまでやってたら僕、時間的に無理」って言って(笑)。途中で放棄して、「作曲者はメロディまで作ってきて」って言うようになりました。でもDEAD ENDほどじゃないんですけど、それぞれアイデアを出しあって、面白い方向に転ぶケースもありますよ。逆にVAMPSは僕とK.A.Zくんの2人だけなんで、自分たちだけの美意識を作り上げていく感じ。だから僕は両方とも楽しめてるんですよ。
- V.A.「DEAD END Tribute -SONG OF LUNATICS-」/ 2013年9月4日発売 / 3150円 / motorod / AVCD-38651
- [CD] 3150円 / AVCD-38651
-
収録曲
- Embryo Burning
(Words:MORRIE Music:YOU)
Vocal:HYDE(L'Arc-en-Ciel / VAMPS)
Guitar:HIRO(La'cryma Christi)
Bass:岡野ハジメ
Drums:Shinya(DIR EN GREY) From The Album “shámbara”(1988) - I Can Hear The Rain
(Words:MORRIE Music:YOU)
Vocal:RYUICHI(LUNA SEA)
Guitar:咲人(NIGHTMARE)
Bass:SHUSE(†яi¢к / La'cryma Christi)
Drums:shuji(Janne Da Arc) From The Album “shámbara”(1988) - The Godsend / 清春 (Words & Music:MORRIE) From The Album “GHOST OF ROMANCE”(1987)
- Night Song
(Words:MORRIE Music:"CRAZY" COOL-JOE)
Vocal:栄喜(SIAM SHADE)
Guitar:室姫深
Bass:tetsuya(L'Arc-en-Ciel / TETSUYA)
Drums:山崎慶(Venomstrip) From The Album “shámbara”(1988) - Serafine
(Words:MORRIE Music:YOU)
Vocal:宝野アリカ(ALI PROJECT)
Guitar:SUGIZO(LUNA SEA / X JAPAN / JUNO REACTOR)
Bass:TOKIE(unkie / LOSALIOS)
Drums:ササブチヒロシ(東京酒吐座 / Creature Creature) From The Album “ZERO”(1989) - So Sweet So Lonely
(Words:MORRIE Music:YOU, Hajime Okano)
Vocal:yasu(Janne Da Arc / Acid Black Cherry)
Guitar:Shinobu(Creature Creature / The LEGENDARY SIX NINE)
Bass:人時
Drums:真矢(LUNA SEA) From The Album “ZERO”(1989) - Spider In The Brain
(Words:MORRIE Music:TAKAHIRO)
Vocal:高野哲(ZIGZO)
Guitar:you(Janne Da Arc)
Bass:FIRE(the Badasses)
Drums:MOTOKATSU MIYAGAMI(THE MAD CAPSULE MARKETS) From The Album “DEAD LINE”(1986) - Dress Burning
(Words:MORRIE Music:YOU)
Vocal:越中睦士(†яi¢к / Λucifer)
Guitar:HIZAKI(Jupiter)
Bass:燿(摩天楼オペラ)
Drums:HIROKI(D) From The Album “METAMORPHOSIS”(2009) - Perfume Of Violence
(Words:MORRIE Music:TAKAHIRO)
Vocal:BAKI(GASTUNK / MOSQUITO SPIRAL)
Guitar:Marty Friedman
Bass:Luna(Eins:Vier / RaFF-CuSS / R2Y+J リリィ・ジョーカー)
Drums:YUKI(Jupiter)
Keyboard:都啓一(SOPHIA / Rayflower) From The Album “DEAD LINE”(1986) - Blind Boy Project / cali≠gari (Words:MORRIE Music:YOU) From The Album “shámbara”(1988)
- Sacrifice Of The Vision
(Words :MORRIE Music:TAKAHIRO)
Vocal:aki(ex Laputa)
Guitar:千聖(PENICILLIN)
Bass:IKUO(BULL ZEICHEN 88 / Rayflower)
Drums:LEVIN(La'crima Christi)
Keyboard:kiyo(Janne Da Arc) From The Album “DEAD LINE”(1986) - 冥合 / Boris (Words :MORRIE Music:YOU) From The Album “METAMORPHOSIS”(2009)
- Embryo Burning
(Words:MORRIE Music:YOU)
Vocal:HYDE(L'Arc-en-Ciel / VAMPS)
DEAD END(でっどえんど)
1984年に結成されたロックバンド。1986年に1stアルバム「DEAD LINE」をインディーズで発表し、当時のインディーズシーンでは破格のセールスを記録する。1987年にはMORRIE(Vo)、YOU(G)、"CRAZY" COOL-JOE(B)、MINATO(Dr)という布陣でアルバム「GHOST OF ROMANCE」でメジャーデビュー。メタルやグラムロック、ゴス、パンク、プログレなどを取り入れた多彩な音楽性と、MORRIEがつづる独特な世界観で人気を博す。1988年に「SHAMBARA」、1989年に「ZERO」とアルバムを発表するも、1990年にMINATOの脱退とともに解散。その後はそれぞれ音楽活動を続けていたが、2009年にMORRIE、YOU、"CRAZY" COOL-JOE、MINATOの4人で再結成を発表。同年8月に開催されたイベント「JACK IN THE BOX2009 SUMMER」で、約20年ぶりに復活を果たした。さらに11月には5thアルバム「METAMORPHOSIS」を発売。以降はMORRIE、YOU、"CRAZY" COOL-JOEにサポートドラマーという布陣で定期的にライブ活動を続ける。2012年3月に6thアルバム「Dream Demon Analyzer」を発表。同年9月にはメジャーデビュー25周年を記念したライブ「Kaosmoscape」を渋谷公会堂などで行った。そして2013年9月、DEAD ENDをリスペクトするアーティストたちが一堂に会したトリビュートアルバム「DEAD END Tribute -SONG OF LUNATICS-」をリリース。
HYDE(はいど)
L'Arc-en-Ciel、VAMPSのボーカリスト。1994年7月、L'Arc-en-Ceilのフロントマンとしてビデオシングル「眠りによせて」でメジャーデビューを果たす。その後多数のヒットシングルを連発。ハイクオリティなサウンドとキャッチーなメロディ、シングル3枚やアルバム2枚の同時リリースなどでも話題を集めた。2001年からはソロ活動を開始。2008年にはK.A.Z(G)とともにVAMPSを結成し、精力的なライブ活動を展開している。
2013年9月5日更新