ナタリー PowerPush - DEAD END
MORRIE×清春、MORRIE×HYDE 2つの対談から読み解く超豪華トリビュート
清春には独特の暗さ、哀愁をいつも感じる
──MORRIEさんは黒夢の初期音源を聴いたという話がありましたが、その後の清春さんのアルバムを聴く機会もあったと思うんです。
MORRIE もちろんあるよ。毎回、送ってくれてますからね。
──清春さんは、どんなボーカリスト、存在と言えるんでしょう?
MORRIE そうね……独自の世界があるよね。歌い方も歌詞の内容も。俺、清春が好きなのは、なんというのかなあ……語弊があるかもしれないけど、独特の暗さとか、哀愁をいつも感じるんですよ。それはソロでの音源に一番出てるんじゃないかな。
清春 感激です。暗さ、影響されてますから。
MORRIE いやいや。例えば「UNDER THE SUN」(2012年発売7thアルバム)の「流星」みたいに聴かせるタイプの曲とかね。この前、大阪でタイミングが合ったんで、アコースティックでやってるライブを観に行ったんですけど、井上陽水のカバーをやってて(笑)。
清春 突然いらっしゃって(笑)。
MORRIE そこで何かちょっとだけわかった気がするね。俺もそうやけど、清春も歌い方はクセがあるし、そこは好き嫌いの分かれる感じの歌い方ではあるんだけど、歌詞もすごくセンスがいいし、歌そのものの暗さに彼独特のものがある。僕が言うまでもなく、みんなわかっていると思いますけど。だから、すごいことなんですよ。ラルクとかLUNA SEAもそうですけど、デビューしてずっと一線でやってるじゃないですか。やっぱりいい刺激になるよね。僕が勉強させてもらってる。
清春 いえ、 全然そんなのあり得ません!
MORRIE それはすごくいいことだと思いますよ。たぶん清春はね、海外に行ったほうがウケるよ。ちょっと日本人っぽくないんですよ。本格的に行ったことないでしょ?
清春 ないです。うれしいです。僕にとってはMORRIEさんですけど、誰かをずっと好きだって言えるのは、その人がずっとカッコいいからじゃないですか。それは素晴らしいことなんだなと思うし、「その人みたいになりたい」と思ったことが、自分でも間違ってなかったと思えるし。やっぱ、今も(MORRIEの音源を)変わらず聴いてますし、影響というか……まんまなんです。でも、そう思われても恥ずかしくない。ただ、僕らの世代を聴いてる子たちの場合、若い子になればなるほど、ちょっとマネっぽくなってる印象はあるんですよね。MORRIEさんに影響されてる僕とかHYDEくんとかRYUICHI(LUNA SEA)くんとかは、なんとなくそれぞれ昇華させて、結果的には今の自分になっていると思うんですけど、もっともっと若い人たちをMORRIEさんから見ると、たぶん「俺のマネのマネのマネなんじゃない?」みたいなのはあると思うんですよ。
──そうなってくるとなんだかわからないですよね。
清春 わからない。例えば、海外ではオジー(・オズボーン)が崇拝されていて、若いヤツでも「オジー最高!」なんて言ってるじゃないですか。日本はなぜそれがないんだろうって思ったりするんですよ。またさっきの話に戻りますけど、オリジネーターがどなたで、影響を受けているということは全然恥ずかしいことじゃないのに、日本だとどういうわけか、そういう話をせずに「自分が作りましたよ」みたいなことになっちゃう(笑)
MORRIE そうなの?
清春 はい。売れてくると、たいていそうなっちゃってる気がします(笑)。
MORRIE 正直じゃないと?
清春 そう、嘘っぽいんです。
──確かに自分のルーツを隠すようなところは、少なからずありますね。
清春 皆さんなぜか(笑)。
MORRIE なんで? まあまあ、わからなくもないけど……。
清春 その子たちの事務所がNGにしてる場合もあるんですよね。雑誌に載ってるMORRIEさんのインタビューやプロフィールにも、BAKIさんとかロニー・ジェイムス・ディオとか、影響を受けたアーティストが普通に書いてありましたよね。それを見て、僕らもそれを言っていいんだと思ってたんですけど、だんだんそれがなくなっていって……言っちゃいけないんだみたいな雰囲気になってるのかもしれないですよね。
MORRIE それは男らしくないですね(笑)。
清春 そうなんですよ。そこを隠しちゃうと、自分がなんで始めたのかって理由がなくなっちゃうじゃないですか。もちろん、誰を好きになるか、そのチョイスで印象も全然違ってくるとは思うんですけどね。僕はそれがMORRIEさんで、こうやってお会いできるようになってからも、よかったなあとヒシヒシと感じてますけど。
日本のロックは猿マネから始まってる
──MORRIEさんは自分の遺伝子がいろんな形で受け継がれているわけですが、今のシーンを見て何か感じることはありますか?
MORRIE ここ数年は日本にもけっこう来てますけど、いわゆるヴィジュアル系と言われている若いバンドに対してひとつ思うのが、ジャンルとして確立されていて……まあ、そこでビジネス的に成立しちゃってるという部分もあるんでしょうけど、硬直したら面白くないですからね。そのへんはブチ破ろうとしている人たちをやっぱり見たいと思いますね。ヴィジュアル系の路線のみでやろうが、いくらうまかろうが関係なくて、何か根本的なところですよ。そうなってくると、自分のアティテュードが一番重要になってくる。そういうものは(表現として)出るからさ。
──その意味では、個々のルーツも含めて、DEAD ENDはそれぞれのよさが面白いバランスで表れていたバンドでしたよね。
MORRIE ふふふ(笑)。客観的に見たらそうかもしれませんけど(笑)、やってる側にしてみたら、わかりませんよ。
清春 でも影響下って話だと、MORRIEさんではなくて、僕らやもっと下の世代だったりが意識しなきゃいけないことだと思うんです。その人を目指している人が、心の師は誰だとか、あの人みたいなものを作りたいといったことを言い忘れると、その後の人たちはどんどん言い忘れていく。それはよくない。もちろん、今回のこういうトリビュート盤は1つの形ですけど、僕らが本当はもっとやるべきなのかなあって。
MORRIE そうねえ……。すごく簡単に言うと、猿マネから始まってるんでね、日本のロックというものは。でも、ヴィジュアル系が面白いのは、僕はアメリカにいるからそれなりにわかるんですけど、やっぱりヴィジュアル系って、日本が誇る文化なんですよ。一般的な浸透はしないでしょうけど、ある種確立したところはある。ただ、40年、50年とやっていればそれなりの歴史とかもあるんでしょうけど、それをきっちり体系化して、伝統として残すという感じの動きはあまりないでしょ。逆にアメリカはなんでもかんでも博物館を作って歴史にしたがるところがあるんですよ。歴史の塊であるヨーロッパに対抗するという気持ちがあるのかどうかわかりませんけど。だからケーブルテレビなどでは、頻繁に、ロックの教科書としてBLACK SABBATHだったりLED ZEPPELINだったりが流れる。そうすると、若い子でも(ロックのクラシックを)すぐに弾けたりするんですよね。
──確かにアメリカの若いアーティストと話すと、PINK FLOYDなどの名前も当たり前のように出てきますからね。
MORRIE そうそう。そういう中で伝統化されてるんですよ。やっぱり、クラシックでベートーベンを知らんとか、モーツァルトを知らんとか、ちょっとあり得へんでしょ。それがいいか悪いかは置いといて。これを知っておかないとモグリだぜっていう。
- V.A.「DEAD END Tribute -SONG OF LUNATICS-」/ 2013年9月4日発売 / 3150円 / motorod / AVCD-38651
- [CD] 3150円 / AVCD-38651
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収録曲
- Embryo Burning
(Words:MORRIE Music:YOU)
Vocal:HYDE(L'Arc-en-Ciel / VAMPS)
Guitar:HIRO(La'cryma Christi)
Bass:岡野ハジメ
Drums:Shinya(DIR EN GREY) From The Album “shámbara”(1988) - I Can Hear The Rain
(Words:MORRIE Music:YOU)
Vocal:RYUICHI(LUNA SEA)
Guitar:咲人(NIGHTMARE)
Bass:SHUSE(†яi¢к / La'cryma Christi)
Drums:shuji(Janne Da Arc) From The Album “shámbara”(1988) - The Godsend / 清春 (Words & Music:MORRIE) From The Album “GHOST OF ROMANCE”(1987)
- Night Song
(Words:MORRIE Music:"CRAZY" COOL-JOE)
Vocal:栄喜(SIAM SHADE)
Guitar:室姫深
Bass:tetsuya(L'Arc-en-Ciel / TETSUYA)
Drums:山崎慶(Venomstrip) From The Album “shámbara”(1988) - Serafine
(Words:MORRIE Music:YOU)
Vocal:宝野アリカ(ALI PROJECT)
Guitar:SUGIZO(LUNA SEA / X JAPAN / JUNO REACTOR)
Bass:TOKIE(unkie / LOSALIOS)
Drums:ササブチヒロシ(東京酒吐座 / Creature Creature) From The Album “ZERO”(1989) - So Sweet So Lonely
(Words:MORRIE Music:YOU, Hajime Okano)
Vocal:yasu(Janne Da Arc / Acid Black Cherry)
Guitar:Shinobu(Creature Creature / The LEGENDARY SIX NINE)
Bass:人時
Drums:真矢(LUNA SEA) From The Album “ZERO”(1989) - Spider In The Brain
(Words:MORRIE Music:TAKAHIRO)
Vocal:高野哲(ZIGZO)
Guitar:you(Janne Da Arc)
Bass:FIRE(the Badasses)
Drums:MOTOKATSU MIYAGAMI(THE MAD CAPSULE MARKETS) From The Album “DEAD LINE”(1986) - Dress Burning
(Words:MORRIE Music:YOU)
Vocal:越中睦士(†яi¢к / Λucifer)
Guitar:HIZAKI(Jupiter)
Bass:燿(摩天楼オペラ)
Drums:HIROKI(D) From The Album “METAMORPHOSIS”(2009) - Perfume Of Violence
(Words:MORRIE Music:TAKAHIRO)
Vocal:BAKI(GASTUNK / MOSQUITO SPIRAL)
Guitar:Marty Friedman
Bass:Luna(Eins:Vier / RaFF-CuSS / R2Y+J リリィ・ジョーカー)
Drums:YUKI(Jupiter)
Keyboard:都啓一(SOPHIA / Rayflower) From The Album “DEAD LINE”(1986) - Blind Boy Project / cali≠gari (Words:MORRIE Music:YOU) From The Album “shámbara”(1988)
- Sacrifice Of The Vision
(Words :MORRIE Music:TAKAHIRO)
Vocal:aki(ex Laputa)
Guitar:千聖(PENICILLIN)
Bass:IKUO(BULL ZEICHEN 88 / Rayflower)
Drums:LEVIN(La'crima Christi)
Keyboard:kiyo(Janne Da Arc) From The Album “DEAD LINE”(1986) - 冥合 / Boris (Words :MORRIE Music:YOU) From The Album “METAMORPHOSIS”(2009)
- Embryo Burning
(Words:MORRIE Music:YOU)
Vocal:HYDE(L'Arc-en-Ciel / VAMPS)
DEAD END(でっどえんど)
1984年に結成されたロックバンド。1986年に1stアルバム「DEAD LINE」をインディーズで発表し、当時のインディーズシーンでは破格のセールスを記録する。1987年にはMORRIE(Vo)、YOU(G)、"CRAZY" COOL-JOE(B)、MINATO(Dr)という布陣でアルバム「GHOST OF ROMANCE」でメジャーデビュー。メタルやグラムロック、ゴス、パンク、プログレなどを取り入れた多彩な音楽性と、MORRIEがつづる独特な世界観で人気を博す。1988年に「SHAMBARA」、1989年に「ZERO」とアルバムを発表するも、1990年にMINATOの脱退とともに解散。その後はそれぞれ音楽活動を続けていたが、2009年にMORRIE、YOU、"CRAZY" COOL-JOE、MINATOの4人で再結成を発表。同年8月に開催されたイベント「JACK IN THE BOX2009 SUMMER」で、約20年ぶりに復活を果たした。さらに11月には5thアルバム「METAMORPHOSIS」を発売。以降はMORRIE、YOU、"CRAZY" COOL-JOEにサポートドラマーという布陣で定期的にライブ活動を続ける。2012年3月に6thアルバム「Dream Demon Analyzer」を発表。同年9月にはメジャーデビュー25周年を記念したライブ「Kaosmoscape」を渋谷公会堂などで行った。そして2013年9月、DEAD ENDをリスペクトするアーティストたちが一堂に会したトリビュートアルバム「DEAD END Tribute -SONG OF LUNATICS-」をリリース。
清春(きよはる)
1968年生まれ、岐阜県出身。1991年にロックバンド・黒夢を結成し、ハードかつグラマラスなサウンドで人気を集める。1994年にメジャーデビューを果たし、1999年に活動停止。その後自身のレーベルを立ち上げ新バンド・サッズとして活動を行う。2003年からはソロ活動を開始。また、自身のアパレルブランドを手がけるなど多方面での活動も知られている。
2013年9月5日更新