ナタリー PowerPush - DEAD END

MORRIE×清春、MORRIE×HYDE 2つの対談から読み解く超豪華トリビュート

安住するのではなく何か突破したいという欲求はものすごくあった

──その第1世代は確かにそうなんですが、MORRIEさんと同世代の人たちでも、DEAD ENDの影響を受けているケースは少なくなかったですよ。「DEAD ENDっぽくしよう」みたいなあり方でしたけどね。

清春 雑誌を見てもそうでしたよね。髪型とか衣装、バンドのロゴとか、パッと見たときに似てるインディーズバンドがいたら、CDとかを買ってみるじゃないですか。曲調とか一瞬のコード感とかも似てたりするんですけど、歌い出すと違うという。当時のインタビューでも、同じ世代の方がDEAD END派とREACTION派みたいなことを言ってましたね。いかにもメタル、MOTLEY CRUEみたいなほうがREACTIONで、パンクとかハードコアとか、DEAD ENDはそういう人も大丈夫みたいな(笑)。

MORRIE

MORRIE 当時はヘヴィメタルとパンク / ハードコア連中は犬猿の仲だったんですよ。よくライブ会場でもケンカとかあって。俺はどちらにも知り合いがいたし、どちらの音楽も好きだったけど……86年やったかな。アムホール(大阪・梅田)でGASTUNKとDEAD END、あとはCOBRA、CITY INDIANと一緒にやったんですよ。

清春 それ、危険なライブですよね(笑)。

MORRIE 足立(祐二)さんが入る前ね。香川(前任ギタリストのTAKAHIRO)の最後のライブ。だから時期としては「DEAD LINE」を作ったあとかもしれない。それも当時としては、けっこう画期的というか。

清春 普段交わらないですもんね。その時代ならなおさら。

MORRIE 普通はね。僕がGASTUNKが好きだったんで、「一緒にやらへん?」って声をかけたら、やろうって話になって。ジャンルができあがっていたら、そこに安住するのではなく、何か突破したいという欲求はものすごくあったから。それは今でもあるんですけどね。

──ええ。だからこそ、DEAD ENDは新しい流れを作ることになった。それは当時もはっきりと認識できるものでしたよ。

MORRIE いやあ、実感としては僕はないですね。

清春 いや、僕らはそれに影響されて出てきたんですから(笑)。曲調のベーシックな部分にはメタル、ハードロックっぽいものもあるんですけど、MORRIEさんは違ってるっていう印象ですね、僕からすると。

MORRIE 「ヘビメタをやろう」と言って集まったバンドじゃないからね。DEAD ENDの成り立ちは、こんな音楽をやりたいとかじゃなくて、「お前、面白いから一緒にやろう」っていう(笑)、それだけなんですよ。

清春 僕も勉強不足でそんなに詳しくないですけど、BAUHAUSっぽくもありますよね。JOEさんはグラムロック、YOUさんはハードロック、MORRIEさんはまた違うという。

「生きていた中絶児」を聴かされて「コイツ、キテるなあ」と思って

──MORRIEさんが清春さんの存在を知ったのはいつ頃なんですか?

MORRIE 鹿鳴館でさっきも言った伊集院のバンドと黒夢が一緒にやったんですよね。そのときが初対面?

清春 そうですね。僕は名古屋のライブハウスで活動してたんですけど、縁があってその伊集院さんのレーベルに入ったんです。レーベルのイベントも月に1回ぐらいあって、その鹿鳴館の日は、伊集院さんは俺がMORRIEさんを大好きなのをもちろん知っていて、「呼ぶよ」って言ってくれてたんです。俺は「マジですか!?」って信じてなかったんですけど……。

MORRIE そのときは僕はもうニューヨークに行ってるときやね。

清春 そうですね。たまたま日本にいらして。鹿鳴館の階段を降りた廊下のところにMORRIEさんがいらっしゃったときには、もうガチガチでした(笑)。その日はセッションに参加されてギターを弾かれて。

MORRIE それに前後して、伊集院の車に乗っているときに、「生きていた中絶児」(1992年発売)を聴かされたんですよ。そのときも「コイツ、キテるなあ」と思って(笑)。

──その後はどういう付き合いになっていくんですか?

MORRIE まあ、僕はアメリカに行って、その後は音信不通状態に入ったんで……。だからそれ以降は全然会ってないよね。

清春 会ってないです。その鹿鳴館のときに握手していただいて。CDにサインもしていただきました。

MORRIE 清春のみならず、僕は10年ぐらい、ほとんど誰にも会わなかったんでね。それから清春がソロをやるというときだから……「poetry」のときやね。

清春 はい。その間も僕は伊集院さんに会うたびに「MORRIEさんは何されてるんですかね?」って聞いてましたけど。

──当時、ニューヨークにいるということしか情報はないぐらいでしたよね。

清春 ええ。黒夢の最後のときにニューヨークでPVの撮影をやったんですよ。僕、街をブラブラしながら、まさかMORRIEさんに会えたりしないかなあとか思ってたんですよね(笑)。それで黒夢とサッズが一旦終わってソロになったときに……ソロって、自分のリスタートというか、原点に戻れるという意味もあるから、なんとかMORRIEさんになんらかの形で参加していただきたいと思ったんですよ。そのときの僕の発想が、ボーカルじゃなくてギターだったんです。

──ええ。その話を知ったときには驚くと同時に、清春さんはさすがだなと思いましたよ。自らファンであるからこその案で。

清春 歌だったら、断られるかなあと思ってたんですよ。あとは、かなりの年数、音源を出していらっしゃらなかったので、ひさしぶりに歌う歌が僕のCDじゃダメだと勝手に思ってたんです。ギターの腕も卓越されてるのは当然知ってたので。

MORRIE 「ギターで」というのがまず面白かったんですけど、僕も電話で言ったんですよ。「俺なんてダメでしょう? 足立祐二とかいいギタリストはいっぱいおるでしょ」と。そのあとに一応、曲を送ってもらってね。弾けるかどうかもわからないし(笑)。まあ、清春がさっき言ってたけど、「歌で」ということだったら、ちょっとあれだったんで……。

清春

清春 いや、ファン的にもそれはないなと思ったんですよ。もし、僕が逆の立場だったとすれば。僕はあのとき、MORRIEさんはちょっと神の領域というか……MORRIEさんが日本にいらっしゃらない時の流れに何か違和感があったんですよ。音楽ファンの人たちもそうだし、ライターさんも雑誌の人もそうですけど、いろんなアーティストがDEAD ENDに影響されたのを、みんな知ってるんですよ。ただ、それを知ってはいるけど、どういうわけかなかったことになってるみたいな風潮ってあるじゃないですか。僕らはさっきも言ったようにリアルな影響を受けた世代ですけど、いつの間にか僕らがヴィジュアル系の第一人者になっちゃってるところがあって。実際にそういうふうにも書かれてますし。でも、それ全然違うんじゃないかって、ずっと疑問に思ってて。だからこそ、なんとかMORRIEさんの存在というか、影みたいなみたいなものを、僕のソロアルバムにちょっと参加していただくことで表せないかなあと。それと同時に、ミュージシャンの間で「えっ!? MORRIEさんが!?」「マジ!?」っていうことになりますしね。僕のファンの人たちは、僕がいかにMORRIEさんを好きかよく知ってるから、「よくやったね、清春さん」って言ってくれましたけど(笑)。

MORRIE 実際には(インターネットを介して)ファイルでやりとりしてたから、そのときも清春に直接会ったわけじゃないんだよ。

清春 そのときも電話で、日本の近況とかのお話をさせていただいて。もちろん、ちょいちょい「MORRIEさんはまた日本でやらないんですか?」ってことはお聞きしてましたね、いちファンとして。「やらへんなあ」みたいな感じでしたけど(笑)。

──その後に会ったのはいつになるんですか?

清春 DEAD ENDが復活した「JACK IN THE BOX 2009 SUMMER」(2009年8月15日 千葉・幕張メッセ)ですね。

──そんなに間が空いていたんですか!?

清春 日本にいらっしゃらなかったですからね。そのときも僕はステージで復活バージョンを観るまでは、楽屋に行って挨拶するのをずっと我慢してたんですね。ちゃんと拝見させていただいてから、勇気を出して行こうと。そういえば、あの日HYDEくんも同じ上手からステージを観てました。

V.A.「DEAD END Tribute -SONG OF LUNATICS-」/ 2013年9月4日発売 / 3150円 / motorod / AVCD-38651
[CD] 3150円 / AVCD-38651
収録曲
  1. Embryo Burning (Words:MORRIE Music:YOU) Vocal:HYDE(L'Arc-en-Ciel / VAMPS)
    Guitar:HIRO(La'cryma Christi)
    Bass:岡野ハジメ
    Drums:Shinya(DIR EN GREY)
    From The Album “shámbara”(1988)
  2. I Can Hear The Rain (Words:MORRIE Music:YOU) Vocal:RYUICHI(LUNA SEA)
    Guitar:咲人(NIGHTMARE)
    Bass:SHUSE(†яi¢к / La'cryma Christi)
    Drums:shuji(Janne Da Arc)
    From The Album “shámbara”(1988)
  3. The Godsend / 清春 (Words & Music:MORRIE) From The Album “GHOST OF ROMANCE”(1987)
  4. Night Song (Words:MORRIE Music:"CRAZY" COOL-JOE) Vocal:栄喜(SIAM SHADE)
    Guitar:室姫深
    Bass:tetsuya(L'Arc-en-Ciel / TETSUYA)
    Drums:山崎慶(Venomstrip)
    From The Album “shámbara”(1988)
  5. Serafine (Words:MORRIE Music:YOU) Vocal:宝野アリカ(ALI PROJECT)
    Guitar:SUGIZO(LUNA SEA / X JAPAN / JUNO REACTOR)
    Bass:TOKIE(unkie / LOSALIOS)
    Drums:ササブチヒロシ(東京酒吐座 / Creature Creature)
    From The Album “ZERO”(1989)
  6. So Sweet So Lonely (Words:MORRIE Music:YOU, Hajime Okano) Vocal:yasu(Janne Da Arc / Acid Black Cherry)
    Guitar:Shinobu(Creature Creature / The LEGENDARY SIX NINE)
    Bass:人時
    Drums:真矢(LUNA SEA)
    From The Album “ZERO”(1989)
  7. Spider In The Brain (Words:MORRIE Music:TAKAHIRO) Vocal:高野哲(ZIGZO)
    Guitar:you(Janne Da Arc)
    Bass:FIRE(the Badasses)
    Drums:MOTOKATSU MIYAGAMI(THE MAD CAPSULE MARKETS)
    From The Album “DEAD LINE”(1986)
  8. Dress Burning (Words:MORRIE Music:YOU) Vocal:越中睦士(†яi¢к / Λucifer)
    Guitar:HIZAKI(Jupiter)
    Bass:燿(摩天楼オペラ)
    Drums:HIROKI(D)
    From The Album “METAMORPHOSIS”(2009)
  9. Perfume Of Violence (Words:MORRIE Music:TAKAHIRO) Vocal:BAKI(GASTUNK / MOSQUITO SPIRAL)
    Guitar:Marty Friedman
    Bass:Luna(Eins:Vier / RaFF-CuSS / R2Y+J リリィ・ジョーカー)
    Drums:YUKI(Jupiter)
    Keyboard:都啓一(SOPHIA / Rayflower)
    From The Album “DEAD LINE”(1986)
  10. Blind Boy Project / cali≠gari (Words:MORRIE Music:YOU) From The Album “shámbara”(1988)
  11. Sacrifice Of The Vision (Words :MORRIE Music:TAKAHIRO) Vocal:aki(ex Laputa)
    Guitar:千聖(PENICILLIN)
    Bass:IKUO(BULL ZEICHEN 88 / Rayflower)
    Drums:LEVIN(La'crima Christi)
    Keyboard:kiyo(Janne Da Arc)
    From The Album “DEAD LINE”(1986)
  12. 冥合 / Boris (Words :MORRIE Music:YOU) From The Album “METAMORPHOSIS”(2009)
DEAD END(でっどえんど)
DEAD END

1984年に結成されたロックバンド。1986年に1stアルバム「DEAD LINE」をインディーズで発表し、当時のインディーズシーンでは破格のセールスを記録する。1987年にはMORRIE(Vo)、YOU(G)、"CRAZY" COOL-JOE(B)、MINATO(Dr)という布陣でアルバム「GHOST OF ROMANCE」でメジャーデビュー。メタルやグラムロック、ゴス、パンク、プログレなどを取り入れた多彩な音楽性と、MORRIEがつづる独特な世界観で人気を博す。1988年に「SHAMBARA」、1989年に「ZERO」とアルバムを発表するも、1990年にMINATOの脱退とともに解散。その後はそれぞれ音楽活動を続けていたが、2009年にMORRIE、YOU、"CRAZY" COOL-JOE、MINATOの4人で再結成を発表。同年8月に開催されたイベント「JACK IN THE BOX2009 SUMMER」で、約20年ぶりに復活を果たした。さらに11月には5thアルバム「METAMORPHOSIS」を発売。以降はMORRIE、YOU、"CRAZY" COOL-JOEにサポートドラマーという布陣で定期的にライブ活動を続ける。2012年3月に6thアルバム「Dream Demon Analyzer」を発表。同年9月にはメジャーデビュー25周年を記念したライブ「Kaosmoscape」を渋谷公会堂などで行った。そして2013年9月、DEAD ENDをリスペクトするアーティストたちが一堂に会したトリビュートアルバム「DEAD END Tribute -SONG OF LUNATICS-」をリリース。

清春(きよはる)
DEAD END

1968年生まれ、岐阜県出身。1991年にロックバンド・黒夢を結成し、ハードかつグラマラスなサウンドで人気を集める。1994年にメジャーデビューを果たし、1999年に活動停止。その後自身のレーベルを立ち上げ新バンド・サッズとして活動を行う。2003年からはソロ活動を開始。また、自身のアパレルブランドを手がけるなど多方面での活動も知られている。


2013年9月5日更新