ナタリー PowerPush - クラムボン
進化するバンドの“現在”をレコーディング「Re-clammbon 2」の制作意図を解き明かす
会わない期間があるほうが、次に会ったときにいい演奏ができる
──ところで、さっきから飽きっぽいという話が出てますけど、メンバー同士、お互いがお互いに飽きることはないですか?
ミト 会わないからなあ、あんまり。それはないですね(笑)。
郁子 そうかもしれない(笑)。ギューッと集まって四六時中一緒にいたりするわけじゃないからね。例えばミトくんが大ちゃんに電話して「明日お前何やってんの?」って……。
ミト それはないよね(笑)。今聞いてて笑っちゃうけど。
大助 ははははは。
郁子 「靴一緒に買いに行こうよ」とか、そういうの1回もないですから。 どういう人たちでどういう暮らしをしてるかっていうのにあんまり頓着してない。
ミト 結成当初からそうなんですよね。
郁子 そう。で、こういう場でインタビューされて「あ、そういう音楽聴いてたんだー」って。ミトくんが「ほんとは魚博士になりたかったんだ」っていうことを後から知る。
──なるほど、インタビュー前にも言ってましたよね。そんな感じで伊藤さんのソロ活動の予定をミトさんがネットで初めて知ったりとか。
ミト そうそうそう(笑)。
郁子 どうしたら新鮮でいられるか。いつも、一緒に演奏してて、「おー!」とか「わぁー!」ってビックリしたり感動したりしたいなぁと思うから。私たちは会わない期間があるほうが、次に会ったときにいい演奏ができる。そういう法則があるんです(笑)。
ミト ネガティブな発想ではないんですけど、何カ月ぶりに会ってうちらの曲をやると、めちゃめちゃヘタなんですよ。それが楽しいんですよね。
郁子 マイナスからのスタート(笑)。
ミト でもお互いが飽きる前のギリギリのところで、寸止めがうまいこと効いてるんですよね。ツアーも何10カ所もやんないし。今日もこれからリハですけど、2、3時間以内に必ず「帰りたい」って思いますから。
──早いですね(笑)。バンドはよく恋愛や夫婦関係に例えられると思うんです。結成は出会いであり結婚であって、その愛が盛り上がってる頃はいいけども、だんだん倦怠期になって、今度はそれを打破しようとソロに走ると。で、そこで得た新鮮さによって、またバンド内での恋が再燃するとか……。
郁子 うーん。いや、最初がものすごく遠かったんで。恋愛期間に盛り上がって、そっから離れてくんじゃなくて、遠ーいところから徐々に近づいてる途中、です。まだ(笑)。
──えっ、まだ近づいてる途中!? 10年以上やってるバンドなのに?
郁子 「まだまだお互い知らないこといっぱいあるよな」みたいな(笑)。まったく違うルーツで、まったく違う国の3人が集まったって感じなんですよね。最初の始まりから。
──でもその最初に、やっぱりお互い盛り上がるようなものはあったんですよね。
郁子 うん、やっぱり楽器を一緒にやったときの楽しさはものすごくありました。話さなくていいというか、読み合う力があるというか。で、とにかく音楽をやりたい、というのは、みんな共通してて。
ミト うん。で、まあやっぱり相性がよかったんでしょうね。たまたまその場所が音楽の専門学校だったから、よけいそういうのが集まるチャンスもあったんだろうし。これが普通の学校だったら、この流れで会うっていうのはなかったと思う。いくら軽音部に3人いたとしても、ね。今流行りの軽音でね(笑)。アニメで「けいおん!」ってのがあるんですけどすごいんですよ! そのおかげで今、楽器業界が面白いことになってて──(以下、萌え文化の熱い分析が長々続くも、残念ながらカットさせていただきます)。
──わ、わかりました(笑)。で、その関係がまだ近づいてる途中?
郁子 そうですね。だからバンド=結婚という例えにはまったくハマらない。
──うん、そうみたいですね。クラムボンの場合、さっきの夫婦云々のことは例え話として全然機能しないと思いました。
ミト (笑)そこはそうですね。だいたい「すごく遠くから近づいて」って、まずそれ、恋じゃないからね! 合うも合わないもないじゃない(笑)。
郁子 砂漠の向こうからやって来た人たちだからね(笑)。でも、だから面白い。自分とあまりにも違う人たちだから、一緒にやってて面白い。そういうバンドだと思います、クラムボンは。
CD収録曲
- Re-Re-シカゴ
- Re-THE NEW SONG
- Re-Bass,Bass,Bass
- Re-意味はない
- Re-Re-華香るある日
- Re-090
- Re-Folklore
- Re-雨
- Re-Re-サラウンド
- Re-メロウトロン
- Re-アホイ!
※予約限定初回盤にはスタジオライブを収録したDVDが付属
クラムボン
原田郁子(Vo.key)、ミト(B,etc)、伊藤大助(Dr)によるスリーピースバンド。1996年に同じ専門学校に通っていた3人により結成。1999年にシングル「はなればなれ」でメジャーデビュー。自由で浮遊感のあるサウンドと、強力なライブパフォーマンスで人気を集め、コアな音楽ファンを中心に高い支持を得る。ポップでありながら実験的な側面も強く持つ楽曲は、シーンの中でもひときわ輝く希有な存在。クラムボンとしての活動を主軸に据えつつ、原田郁子は ohana、ミトはFOSSA MAGNA、dot i/o、micromicrophone、伊藤大助はThe Sun calls Stars、LOTUS GUITARなど各々の活動も行い、ハイクオリティな音楽を生み出している