ナタリー PowerPush - クラムボン
進化するバンドの“現在”をレコーディング「Re-clammbon 2」の制作意図を解き明かす
「カルアミルク」も「シカゴ」も同じ感覚でやっている
──でもお話を聞いてると、クラムボンの姿勢ってジャズに近いような気がしますね。この曲の何年何月何日時点でのセッションを記録した、みたいな。
ミト ジャズというよりブルースですかね。ジャズの場合だと、うちら以外の人との発展性があるというか、コミュニケーションの一環として扱われると思うけど、でもブルースだったら、例えば「フーチー・クーチー・マン」(マディ・ウォーターズの代表曲)は「この人がいるから」ってのがあるわけじゃない? この人がいるから、このバンドだから、っていう太さは、ジャズよりもブルースのほうがある。そういうのに近い感じがしますね。
郁子 「カルアミルク」(岡村靖幸のカバー)も「シカゴ」も、同じラインの上にあって。「カルアミルク」は確かに岡村ちゃんの曲なんだけども、でもやってる感覚としては、同じところにあるんですよね。
ミト うん。その曲から導き出そうとしてるものがあって、ただ演奏するだけじゃなく、何かを探ってるというか。うちらが作った曲じゃなくても、その見えない何かをたぐり寄せようと思ってるところがあるんですよね。
──うーむ。では、その作業をその都度やってる感じなんですか? 常にアレンジが変わってるということは。
ミト そう。時代によって変わっていく部分もたぶんあるでしょうし。そういうものを意識しながらアップデートしていく感覚ですかね。でもこの作業ってすごくいいんですよ。
郁子 新鮮だって思います。よく「肩ならし」とか「助走」とか言ってるんだけど(笑)。でもオリジナルでできないことをやってるっていうのもわかってるし。いろんな時期に作ったアルバムがあって、特にクラムボンって1枚1枚ごとにすごく変わってきてるから。それがライブをやっていくことによって、新曲も10代の頃に作った曲も全部がフラットになっていくようなところがあるんですよね。地固めというか、地層みたいになってきてて (笑)。だから、どこの曲をチョイスしても、今の3人でリアレンジすれば、今の曲になるっていう。
絶えず泳ぎ続ける魚みたいなバンドがいてもいい
──伊藤さんは何か思うことあります? 今までの話で。
大助 僕の場合だったらリズムなので、やっぱり時代(ごとの違い)とかもあると思うし。あと、どの曲もそうなんですけど「オリジナルをこうやって録った」という形にとらわれずに、「でも今はこう思うんだよな」っていうのを出せる状態をどのぐらい作っとくか、みたいな。
──出せる状態?
大助 「まあ、いつもこう決まってるんで」っていうふうにならない頭を作っておくというか。そういう感じを保ちたいなというのはありますね。
──それは精神状態のお話なんですか?
大助 それもあると思いますし……。
郁子 身体的なことも。
大助 うん、身体的なこともあると思います。「まあ、こうやってやってきちゃったから、こうなるよね」っていうのを自分が許さないようにしたいですね。そうすれば飽きなくていいかなって。昔からずっとやってきてる曲から新しいものが得られることもいっぱいあると思うし……、というつもりではいるんですけど。
──そうですか、うーむ。皆さん、どうもひとつところにいたがらない傾向が見えますね。
郁子 あ、うん。それをそのまま書いてください、ぜひ。「ここで何かを結論づけなくてもいい」って。絶えず泳ぎ続ける魚みたいなバンドってのも、いていいと思うし(笑)。
ミト そうね。回遊魚なのかも。例えば「海にしかいない」っていう魚じゃないんですよね。
──気がついたら川を上ってた、みたいな。
ミト あ、そうですね。川を上って、また下りちゃう。有名な幻の鮭みたいな(笑)。ウナギもそうなんだよね。ウナギって川から海に行って、ある程度してから戻ってくるんだけど、その生態はまだわかってないんですよ。ものすごい深海にいるか、すごく冷たいところにいるか、対流して回ってきてるのか誰もわからないんだって。その間にいったい何をしてたのか!? と──(以下、熱い魚談義が長々続くも、残念ながらカットさせていただきます)。
──えーと、じゃあクラムボンは魚なバンドということで(笑)。
郁子 (笑)そういう習性はあると思います。とにかく泳ぎ続ける。そうやってしか、わからない人たちというか。
CD収録曲
- Re-Re-シカゴ
- Re-THE NEW SONG
- Re-Bass,Bass,Bass
- Re-意味はない
- Re-Re-華香るある日
- Re-090
- Re-Folklore
- Re-雨
- Re-Re-サラウンド
- Re-メロウトロン
- Re-アホイ!
※予約限定初回盤にはスタジオライブを収録したDVDが付属
クラムボン
原田郁子(Vo.key)、ミト(B,etc)、伊藤大助(Dr)によるスリーピースバンド。1996年に同じ専門学校に通っていた3人により結成。1999年にシングル「はなればなれ」でメジャーデビュー。自由で浮遊感のあるサウンドと、強力なライブパフォーマンスで人気を集め、コアな音楽ファンを中心に高い支持を得る。ポップでありながら実験的な側面も強く持つ楽曲は、シーンの中でもひときわ輝く希有な存在。クラムボンとしての活動を主軸に据えつつ、原田郁子は ohana、ミトはFOSSA MAGNA、dot i/o、micromicrophone、伊藤大助はThe Sun calls Stars、LOTUS GUITARなど各々の活動も行い、ハイクオリティな音楽を生み出している