ナタリー PowerPush - Chara

移籍第1弾シングル テーマは「恋と革命」

昨年のデビュー20周年というアニバーサリーイヤーを経て、キューンミュージックへの移籍を発表したChara。心機一転となる移籍第1弾シングル「オルタナ・ガールフレンド」は、ポップなイメージの歌詞とタイトル、生音と打ち込みを交えながらアップテンポに弾けるオルタナティブサウンドが、新しい扉を開ける感覚を与える1枚だ。2012年、Charaに何かが起こる!? そんな予感を感じながら、彼女に話を訊いた。

取材・文 / 小野田雄

他の人がやらないことをやらなきゃダメだな

──昨年、Charaさんは20周年を迎えられて、ベストアルバム「Very Special」、そして、2枚のオリジナルアルバム「Dark Candy」と「うたかた」をリリースされました。昨年を振り返ってみていかがですか?

私は職業欄に「女」って書きたい人というか、1人の男性に「僕の“Very Special”だね」って言われたくて歌っているんです。それで、昨年末の20周年ツアーで会ったファンやバンドメンバー、スタッフを含めて、本当にたくさんの方がCharaを愛してくれているんだな、ということを改めて実感しましたね。それから、去年は自宅で録音した「うたかた」を自主制作で発表したんですけど、あの作品は自分の中で「どうしても出さなければいけない」っていう必要に迫られてリリースしたものなんです。そういう作品を発表できたことで、地面が平らにならされたというか、レーベル移籍を前に種をまくためのいい土壌ができたなと思いますね。

──ソウルのルーツも感じられるポップアルバム「Dark Candy」に対して、「うたかた」はパーソナルな“シンガーソングライターとしてのアルバム”でしたよね。

そうですね。「うたかた」をリリースしたことで平らになった地面の下には、過去に植えたもの、知らないうちに飛んできたもの、愛し愛された気持ちも埋まっているんだけど、そういうものは捨てずに全部持ってきたつもりで、その先に「恋と革命」をテーマにした「オルタナ・ガールフレンド」があるんですよ。この作品もまた、自分にとって必要に迫られてリリースするものだし。今の日本に革命的な何かがあるといいなと思ってるけど、思っているだけじゃダメだから。そして、私は一番得意とする音楽で何かができると思うし。だから、最初の質問に戻ると、この20年を振り返ったとき、ありがとうという気持ちと誰でもない自分らしいもの、他の人がやらないことをやらなきゃダメだなって。そういう意味で、Charaの役割を改めて意識しましたね。

メジャーな存在でいることのほうがオルタナなのかも

──その、誰でもないCharaさんならではの表現が、今回のシングル「オルタナ・ガールフレンド」である、と。

今回レーベルを移籍して、制作は初めてだけど素晴らしい情熱を持っているフレッシュなディレクターと組んで。まずはミーティングしたんですね。で、私のデモテープにはいろんな形があって、今回のデモテープは携帯レコーダーにアカペラで吹き込んだものだったんです。それをディレクターが聴いて、「これ、面白いっすよね」って。今まで私のアカペラをいいって言ってきた人はいなかったので(笑)、「キミは面白い! いいね!」ってことになったんですよ。移籍したし、新しい人とクリエイティブな作業を一緒にやりたいし、「じゃ、これ、アレンジしてみるから聴いてみて」っていうことでアレンジを仕上げたら、それを気に入ってくれたんですよ。

──なるほど。

息子も「ママはもう少しゆっくりなほうがいい」って言うように(笑)、自分の声にはミディアムテンポの曲が合うし、それはそれでいいと思うんです。でも、私は生涯ガーリーでいたいし、ティーンエイジャーの頃にはチアガールをやっていたことがあったり、「恋と革命」を起こしたいっていう気持ち、それから「オルタナ・ガールフレンド」っていうタイトルを使いたかったこともあって、アップテンポの曲に仕上げたんです。

──「オルタナ・ガールフレンド」っていうのは、ストックされていたタイトルだったんですか?

実はちゃこちゃん(田渕ひさ子・bloodthirsty butchers, toddle, LAMA)とバンドをやろうって言ってて、今回の「オルタナ・ガールフレンド」とは全く違うメロディ、違う詞の曲を用意してあるんだけど、お互い忙しくて、なかなか取りかかれていないので、今回、その曲のタイトルだけ持ってきちゃったんです。なんかかわいいし。私はずっと戦っているようなところがあるけど、今はインディーズで簡単にCDが出せる一方で、メジャーで作品を出し続けることができるのは一握りだったりして。そうなると、メジャーな存在でいることのほうがオルタナなのかもしれないとも思うんですよね。

──そうですね。

そして3月11日以降の日本は、いろいろとひっくり返ってしまったところがあるというか。何が本当なのかわからなくなってしまいそうで不安な中、自分を含めて音楽に救われる人も少なくないと思うんです。そういういろんな思いのせいで「恋と革命」っていう、ちょっと太宰治的ともいえるイメージが頭の中にあったんですよ。

収録曲
  1. オルタナ・ガールフレンド
  2. 大切をきずくもの(2012年2月17日 東京文化会館小ホール)
Chara(ちゃら)

1991年9月にシングル「Heaven」でメジャーデビューを果たした女性シンガーソングライター。1994年発売のシングル「あたしなんで抱きしめたいんだろう?」がテレビCMに起用され、大ヒットを記録。1995年には岩井俊二監督作品「PICNIC」で映画初主演を務め、翌1996年の同監督作品「スワロウテイル」にも出演。ボーカルとして参加したYEN TOWN BANDのシングル「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」はオリコンウィークリーチャート1位を記録する。2006年には東京スカパラダイスオーケストラとのコラボシングル「サファイアの星」を発表した。デビュー20周年を迎えた2011年には、ベストアルバムと2枚のオリジナルアルバムをリリース。2012年、所属レーベルをキューンミュージックに移籍し、第1弾となるシングル「オルタナ・ガールフレンド」を発表する。