SUMIRE×HIMIインタビュー|アナログ盤選曲を通じて再認識した母・Charaからの影響

Charaのデビュー30周年記念第3弾として、彼女の娘であるSUMIREと息子のHIMIがそれぞれ選曲を手がけたアナログ盤「CHARA'S TIME MACHINE(Selected by SUMIRE)」と「CHARA'S TIME MACHINE(Selected by HIMI)」が3月14日に2枚同時リリースされた。

SUMIREは現在、モデル、女優として活躍。HIMIは俳優として活動しつつ2020年クリエイティブレーベル・ASILISを立ち上げ、初音源「STEM」を配信リリースして音楽活動を本格的にスタートさせている。幼少時からCharaの音楽をもっとも身近に聴いて育った2人に聞く、アーティスト・Charaの魅力とは? インタビューの最後には2人に向けたCharaのコメントも掲載する。

取材・文 / 佐野郷子

誰よりも先にCharaの新曲を聴いていた

──今回、アナログLP「CHARA'S TIME MACHINE(Selected by SUMIRE)」と「CHARA'S TIME MACHINE(Selected by HIMI)」が2枚同時にリリースされますが、選曲はどのように?

SUMIRE 自分が小さいときからずっと聴いてきた曲が中心になりましたね。「やさしい気持ち」や「ミルク」は特にそうですが、今でも大好きで、これからも聴いていたい曲ばかりです。

HIMI 僕も好きな曲を素直に選びました。

──「ミルク」「タイムマシーン」「Duca」はお二人とも選んでいますね。

HIMI 事前にどの曲を選ぶか2人で話したわけではないんだけど、たまたまそうなりましたね。

SUMIRE そう。自分たちが小さいときから聴いていた代表的な3曲なんです。

HIMI うん。「ミルク」と「タイムマシーン」は、かぶるかなとは思った。

──「ミルク」と「タイムマシーン」は1997年のアルバム「Junior Sweet」、「Duca」は1999年のアルバム「STRANGE FRUITS」からの曲ですが、その当時のSUMIREさんは幼少時代、HIMIさんは「Junior Sweet」のリリース時はまだ生まれる前ですよね。

Chara「Junior Sweet」ジャケット

Chara「Junior Sweet」ジャケット

Chara「STRANGE FRUITS」ジャケット

Chara「STRANGE FRUITS」ジャケット

HIMI そうですね。自分が生まれたのは1999年だから。

SUMIRE 私もアルバムがリリースされたときの記憶はないんですが、もう少し大きくなった5、6歳の頃から90年代の曲を聴くようになって。母が家で歌っていたりしたので、その時代の曲に自然と馴染んでいったんだと思いますね。

HIMI 自分が覚えているのは、Charaのセルフカバーアルバム(2004年にリリースされた「A Scenery Like Me」)に入っていた「Happy Toy」。子供の頃にスーちゃん(SUMIRE)とコーラスでレコーディングに参加したし、家で制作しているところも見ていたから。

Chara「A Scenery Like Me」ジャケット

Chara「A Scenery Like Me」ジャケット

SUMIRE 私も「Happy Toy」は覚えている。家にスタジオがあったので、そこで練習したような気がする。

HIMI 物心がついたときには自宅にスタジオがあったし、そこでレコーディングもしていたので、まだリリースされる前からCharaの曲を聴いていて、発売する頃にはもう曲を覚えていたり(笑)。

SUMIRE アルバムが出ると、「ああ、あの曲だ」って。今思えば、私たちは誰よりも先にCharaの新曲を聴いていたんですよね。

──自宅のスタジオにミュージシャンが来ることもあったり?

HIMI Charaのバンド、Aurora Bandのメンバーは、レコーディングや曲作りのためによく家に来ていましたね。

SUMIRE そう。メンバーの名越由貴夫さんや高桑圭さんには子供の頃からよく遊んでもらいました。

HIMI この話が来る前から、僕はiPhoneにCharaのプレイリストを入れていたんですよ。自分のお母さんだからというわけじゃなくて、今はCharaというアーティストのいちファンとして聴いている感じですね。

SUMIRE 私も何曲かiPhoneに入れていて、その中から特別好きな曲を選んだんです。私が選んだ曲は、バラード系や優しい曲が多いかもしれない。

HIMI 小さい頃から音楽が身近にあったから、いろんな音楽を聴いて育ったんですが、子供の頃はまだCharaのよさに気がついていなかったかもしれない。

東方神起にハマって一緒にライブに行ったり

──Charaさんによれば、HIMIさんはマイケル・ジャクソンが大好きなお子さんだったとか。

HIMI めっちゃ好きでしたね。

SUMIRE そうそう。よく真似して、踊っていた。

HIMI ミュージックビデオやDVDを夢中になって観ていました。たぶん、最初に好きになったアーティストはマイケルだったと思う。

SUMIRE 私はHIMIくんと違って、小学生の頃は、海外の音楽ではなく周りの友だちの影響もあってSMAPさんとか嵐さんを聴いていました。

HIMI あ、でも、俺も東方神起は大好きだったよ。

SUMIRE そうだった。東方神起には母もハマって、一緒にライブに行ったりしましたね。

HIMI お母さんが聴いていたダンサブルな音楽も好きだったけど、僕はお父さんが聴いていたパンクやレゲエ、オルタナティブロックなんかも子供の頃から聴いていたんで、その両方の影響を受けて育ちましたね。

SUMIRE 父もバンドをやっていたり、音楽は大好きでしたから。

HIMI 親は2人それぞれ車の中で聴く音楽が違っていたよね。僕たちはその中から自分の好きな音楽を見つけていった感じです。

女性としての変化が音楽に自然に出ちゃうところが母らしい

──今回、選曲するにあたり、Charaさんのアルバムを聴き直して、改めて気がついたことはありましたか?

HIMI 90年代の曲も違和感はまったくないし、今はああいう個性的な人ってあまりいないから、貴重な存在だと思いましたね。

SUMIRE 確かに。今聴いてもいい曲だなって思えるし。

──HIMIさんは、1991年発売の1stアルバム「Sweet」から「Break These Chain」を選曲していますが、デビュー当時のCharaさんにはどんなイメージがありますか?

HIMI やっぱり、声が若いなあって。本人も昔のアルバムを聴いて、「私、こんな声だったんだ!」ってよく言っていますけど、当時ああいう歌声は新鮮だったんじゃないかな。曲の感じも今とは違うけど、僕は好きですね。

SUMIRE 母も若かったんだなって。母自身も「あの頃のような声はもう出ない」っていう小さな悩みはあるみたいですけど、今は今のよさがあると思うんで。

──Charaさんのボーカルスタイルや音楽性はそれまでの音楽シーンにはなかったので、デビューしたときには鮮烈な印象がありました。

HIMI それはなんとなくわかります。ああいう人が出てきたら「なんかスゲエな」って思っただろうし、たぶん、自分もファンになっていたんじゃないかな。だから、今の耳で聴いても面白い。アーリーCharaでは、「Violet Blue」(1993年)も好きな曲です。

──初期のエモーショナルで切実なオリジナリティのある表現は、今聴いても刺激的ですね。

SUMIRE そうですね。それまでにはなかった女性シンガー像というか、すごく個性があって強いものがありますね。

──SUMIREさんは「あたしなんで抱きしめたいんだろう?」(1994年)のようなダンサブルなナンバーも選んでいますね。

SUMIRE 私は母やHIMIくんと違って、そんなに音楽に詳しいわけじゃないんですけど、ああいうハジけた曲もあの頃の母らしいと思うし、今の時代はそういう曲が少ないような気がして選びました。

──SUMIREさん自身、当時のCharaさんと年齢が近くなり、1人の女性として見られるようになってきたようなところもありますか?

SUMIRE そうですね。音楽活動をしながら自分たちを育てて、きっと大変なこともたくさんあったんだと思いますが、母親としても、女性としても尊敬できるし、憧れるところはありますね。

──「やさしい気持ち」(1997年)はSUMIREさんが生まれてからのヒットナンバーですが、その頃から作風も徐々に変化していきました。

SUMIRE 母親になって、若い頃のパンキッシュな面が少し落ち着いて、優しい、穏やかな曲が増えていったのかもしれないですね。そういう女性としての変化が音楽に自然に出ちゃうところが母らしいなと思います。