ナタリー PowerPush - Chara

移籍第1弾シングル テーマは「恋と革命」

自分の全てが表現された今作のビジュアル

──今回のアーティスト写真やビデオクリップには石膏のマスクをまとったCharaさんのビジュアルが用いられていますが、これまでもさまざまな音楽遍歴があるCharaさんにはさまざまな顔があるから、ということからなんでしょうか。

そうですね。毎回名前は挙がっていたものの、これまでお仕事する機会がなかったデザイナーの長嶋りかこちゃんとご一緒することになって。そのミーティングでいろいろ話したら、「『オルタナ・ガールフレンド』は多面性を持っている」っていうところから、今回のビジュアルが生まれたんですよ。最初に言ったように、これまで影響を受けてきたもの、ジャンルにとらわれず「知りたい!」と思う自分や、愛したり愛されてきたわたし……そういう全てがこのデザインに表現されているんです。ただ、この曲に関して言えば、そんなに新しいことをやってるつもりはないんですけどね。

──とはいえ、この作品のオルタナティブな要素として、ギターでORANGE RANGEのNAOTO、ベースでRIZEのKenKenという初顔合わせのプレイヤーが参加していますよね。

そうですね。来てもらう以上、その人の最大限と私の最大限を引き合わせる必要があるし、それがいろんな人とセッションできるソロの楽しみの1つなんですよ。と同時に、コラボレーションの化学反応と自分のオリジナリティを活かし、プロデュースする力も問われるんですけど、そういう作業が楽しいんですよね。そんな中、今回お願いしたKenKenは、ACOはじめいろんな人から「KenKenはいいよ」って話を聞いていたものの、これまで縁がなかったんです。でも、彼も私もファンクが好きだし、意外と共通点があるなって。そして、NAOTOくんは一緒にやったことのない若手ギタリストを探している中で、ブリティッシュロック好きなところがいいなって思ったし、人柄もいいんですよね。さらに、2人ともリーダーとしてその場を仕切ることもできるし。意外な組み合わせではあったけど、仲良くセッションしてましたよ。

いろんな旅を重ねて原点に戻った

──そして、ドラムが生ではなく打ち込みで、さらにはCharaさんのキーボードが入っているところがまたユニークな曲ですよね。

最初は生ドラムを入れたんです。でも、それだと普通かなって思って、最終的には打ち込みにしたんですけど、キーボードの音を抜くと、普通の80年代パンクロックになるんですよ。逆に言えば、今回入れたキーボードには、80年代はプリンス大好き少女だった私のテイストが出ちゃっていますね。

──つまり、オルタナティブな要素とファンクの融合ということですね。そして、はしゃぎ弾けているタイトル曲に対して、カップリングの「大切をきずくもの」は今年2月にギタリストの鳥山雄司さんと行ったスペシャルライブのテイク。こちらは一転して、しっとり聴かせますね。

そう、いつものオーロラバンドじゃなく、鳥山さんのギターとウッドベース、バンドネオンっていう編成で、東京文化会館っていうクラシックの小ホールでやった演奏なんですよね。「オルタナ・ガールフレンド」が打ち込みでアップテンポなので、それとは違うものをということで選びました。鳥山さんとは一昨年もBillboard Live TOKYOで初めて1日2公演っていうのを経験したんですけど、チャンスがあれば、いろんな形態、いろんな世代のプレイヤーとやりたいし。あと、「私、そういえば弾き語りってやってなかったな」って思ったりもしたし。

──それはぜひ観てみたいです。今お話いただいたように、この先実現したいアイデアやイメージはどういったものをお持ちなんでしょうか?

昔から持っているのは、だんだん楽器と近くなっていくイメージ。それから、当初は曲を作ったり、アレンジするのが一番好きで、作った曲を歌うのは他にいないから自分で歌うっていうくらいに考えていたものが、活動していく中でその2つが近づいていったんですよね。それらをさらにうまくやるには大きい音、大きい声で伝えるだけじゃなく、抑揚が大切だなと思っているんです。あと大切なのは自分の耳ですよね。これは年とともにちょっとずつ退化していくのかもしれないけれど、それを成長と考えたら、そのときどきの作品にポジティブな形で残していけるじゃないですか? それから、私はロックも好きなんだけど、ソウルが好きなんですね、やっぱり。ソウルって、声量がなくちゃいけないと諦めていたところもあったんですけど、ミニー・リパートンやリンダ・ルイス、パトリース・ラッシェンの作品なんかを聴くと、声を張って歌わなくてもいいんだって思うし。バンドのアンサンブルによって、ソウルを歌うこともできるなって思うようになったので、そういう作品は今後ぜひ作ってみたいです。

──おお。Charaさんのソウルアルバム! ぜひ聴いてみたいです。

こういう話って口にしてしまうと叶わなくなってしまうんじゃないかって思っていたこともあるんですけど、最近は口にすることで叶えたいんですよね。だから、なんていうんでしょう、いろんな旅を重ねて、原点に戻ったとでもいうんでしょうかね。今はそんなフレッシュな気分なんですよ。

収録曲
  1. オルタナ・ガールフレンド
  2. 大切をきずくもの(2012年2月17日 東京文化会館小ホール)
Chara(ちゃら)

1991年9月にシングル「Heaven」でメジャーデビューを果たした女性シンガーソングライター。1994年発売のシングル「あたしなんで抱きしめたいんだろう?」がテレビCMに起用され、大ヒットを記録。1995年には岩井俊二監督作品「PICNIC」で映画初主演を務め、翌1996年の同監督作品「スワロウテイル」にも出演。ボーカルとして参加したYEN TOWN BANDのシングル「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」はオリコンウィークリーチャート1位を記録する。2006年には東京スカパラダイスオーケストラとのコラボシングル「サファイアの星」を発表した。デビュー20周年を迎えた2011年には、ベストアルバムと2枚のオリジナルアルバムをリリース。2012年、所属レーベルをキューンミュージックに移籍し、第1弾となるシングル「オルタナ・ガールフレンド」を発表する。