ナタリー PowerPush - Base Ball Bear

結成10周年を経て辿り着いた新境地 ニューシングル「yoakemae」制作秘話

今、自分が書きたいのは“歌に乗る言葉”

──僕が「yoakemae」の歌詞に思ったのは、ソングライターが音楽を生む瞬間を描いたドキュメントのようだなということで。

小出 ああ、そこをいきなり突いてきた人は今回の取材で初めてですね。

インタビュー風景

──思い当たる節はある?

小出 ありますね。自分の詞世界のリアリティっていうのは、インディーズ初期のときは青春だけだったんですよね。そもそも自分のリアリティが青春だったから。

──そうですよね。

小出 それと、少しの理想と少しの物語があって、だんだん小説っぽくなっていって。それがメジャー1stアルバムの「C」まで続いて。次の「十七歳」は自分の原点を振り返って、次の「(WHAT IS THE)LOVE & POP?」はメジャーデビューから3年経っていろんなフラストレーションや悩みもあって、ズブズブと深みにハマって、自分に溺れていった。そういう流れがあって3.5thはさっき言ったように音楽脳で作ったアルバム。だから歌詞の内容がどうこうというより、歌詞の書き方や歌詞の在り方とか技術的なところを主に考えたんです。それを経て、改めて今自分が何を歌いたいか考えたときに、今僕が見つめたいのは自分の日常だったんです。

──3.5thまでで、青春やそこから派生する拭い切れない孤独感に対して決着がついた感覚があったんですか?

小出 そうですね。自分の孤独感がどうこうというのにひとつの区切りがついたのが「(WHAT IS THE)LOVE & POP?」でした。それから3.5thを経て、自分がバンドをやっているという認識から、自分が音楽を作っているという認識に少しずつ変化していったんです。そういう中で自分が書きたいのは歌に乗る言葉だということに気付いて。小説のようなポエムではなく。

自分の日常を歌詞に反映してる

──つまり「歌詞」なんですよね。

インタビュー風景

小出 そう、歌詞を書きたいと思った。で、その歌詞に何を乗せるかは、さっき言ったとおり自分の日常で。こういうことを言うとガッカリする人もいるかもしれないけど、もう青春どうこうはあまり考えてなくて。自分は10代でもないし、なんなら20代後半に差しかかっているし、もう振り返ることはあまりないなと。逆に10代のことを振り返ったら、そこから抽出されるのは、なんとなく寂しいとか、なんとなく物悲しいとか、そんなものしか出てこないから。それも自分の内側からにじみ出てくるんじゃなくて、ある事実を客観的に気付くみたいなことで。そうなったときにさんざん青春にとらわれてきた僕だけど、今自分が歌う対象ではないなと思って。やっぱり今の自分が書きたいと思うことを書きたいから。

──ええ。

小出 で、「yoakemae」の歌詞を書くってなったときに、何日も歌詞を考えながら夜中から朝になる時間帯を経験して。陽が昇って、チュンチュンチュンって小鳥の鳴き声が聞こえてきて、やる気が削がれていくみたいな(笑)。でも、それを繰り返しているうちに、ひとりぼっちの部屋の外が真っ暗から少しずつ青くなっていく、その時間帯にすごくリアリティを感じたんです。自分が一番生きている、自分と向き合っている時間帯ってここなんだなって。そう思ったときにこの歌詞が出てきたんですよ。

──自分で自分の明日に旗を立てていますよね。音楽とともに。

小出 うん、そうなんですよ。

──で、小出くんの今は、バンドの今でもあるということも示されている。

小出 そう、重なってきましたね。

──そうなったのも3.5thで音楽的なところに振り切ったからですよね、絶対。

小出 そうなんですよ。一回音楽的なところに振り切れたのはホントに大きい。音楽的なところ……ホントに楽しいことをやりたいというところに立ち返ったときに、今度はもっとフラットに自分の日常を見つめることができたんです。

インタビュー風景

ニューシングル「yoakemae」 / 2011年6月29日発売 / 1000円(税込) / EMI Music Japan / TOCT-40335

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CD収録曲
  1. yoakemae PV視聴
  2. Fragile Baby

CD-EXTRA ドキュメント2011「僕の目(仮)」 Directed by 小出祐介

Base Ball Bear(べーすぼーるべあー)

2001年、同じ高校に通っていた4人のメンバーにより、学園祭に出演するために結成。高校在学中からライブを行い、2003年11月にインディーズで初のミニアルバム「夕方ジェネレーション」を発表。その後も楽曲制作、ライブと精力的な活動を続け、2006年にメジャーデビュー。「GIRL FRIEND」「ELECTRIC SUMMER」「STAND BY ME」などシングルを連発し、同年11月にアルバム「C」をリリースした。2007年には「抱きしめたい」「ドラマチック」「真夏の条件」「愛してる」といったシングルや、アルバム「十七歳」を立て続けに発表。その後も順調にリリースを重ね、2010年1月には初の日本武道館単独公演を開催する。2010年9月、3.5thアルバムと位置付けたコンセプトアルバム「CYPRESS GIRLS」「DETECTIVE BOYS」を発表。