音楽ナタリー Power Push - 映画「バクマン。」特集

山口一郎(サカナクション)×大根仁 音楽と映画で描く「バクマン。」のリアル

曲が上がってきたときにガッツポーズした(大根)

──主題歌「新宝島」の制作にはかなり苦労したとお聞きしました。

大根 劇伴もそれなりに大変だったと思うんですけど、最後に一番大きな試練が待ってたっていう。俺はずーっとできあがるまで待ってただけなんですけど(笑)。

山口 歌詞が書き上がるまで半年くらいかかって……。前のシングル2枚が自分たちの内面のことを歌う曲だったんですよね。テンポがすごくゆっくりで、曲調もマイナーで。その流れの中で「バクマン。」の主題歌を作ったらしんみりしちゃうから、どうしようかと悩んだんです。監督から「次につながるような、あつかましくない卒業ソング」っていうテーマももらってたから、外に開いたものにしなきゃいけないという意識があって。だから自分のモードとの差異を埋めるのに苦労したんですよね。ただ単に映画にあわせて歌うんじゃ意味がないし、自分たちのストーリーと映画のストーリーをどう結び付けるかも考えなきゃいけなくて。最終的にこの曲を通して、サカナクションの音楽を外に広げていく、次につなげていくっていう理由を見出すことで歌詞ができました。

大根仁

大根 俺が言うことじゃないかもしれないけど、去年ぐらいまでで一度サカナクションはピークに達したと思うんですよ。で、この先どうしようか、新しいことやらなきゃっていうタイミングでの「バクマン。」の劇伴と主題歌制作だったと思うから、そりゃ時間かかるわとは思って。再デビューじゃないけど、“新生サカナクション”として曲を作ってるんだなって思って待ってました。

山口 すいませんでした。締め切りを延ばしてから、スタッフの態度が変わって……。

大根 「お前が締め切り延ばしたおかげでいくらかかったと思ってんだ」みたいな(笑)。でも、曲が上がってきたときはもうガッツポーズですよ。完成した曲が「バクマン。」の編集もやってくれてる大関泰幸と一緒にいるときに届いて。聴いた瞬間に2人で「キターッ!」って。でも、俺も実は脚本を半年くらい遅らせちゃってるし。ミュージシャンにとって歌詞を書く苦しみっていうのは、俺たちで言えば脚本を作る苦しみだろうから、気持ちはわかりますよホントに。

山口 映画の中で、最高と秋人がマンガのネタ作りで苦しんでるシーンが出てくるんですよね。映画では2人で一緒に苦しんでますけど、あれの1人バージョンですよ……。とにかく無事完成してよかったです。

「バクマン。」を撮ることがすごいチャレンジ(山口)

──「バクマン。」とサカナクションの共通点ってどんなところにあると思いますか?

山口一郎(サカナクション)

大根 最高と秋人という主人公2人の性格ですかね。最高と秋人って、パッと見はそんなにわかりやすくエモーショナルじゃないし、表向きは熱くないんだけど、中身はめっちゃグツグツ煮立ってる。そういうところはサカナクションの音楽にも感じますね。

山口 ありがとうございます。僕は、大根監督が「バクマン。」っていう映画を撮ったってことに、サカナクションの活動と通じるものを感じたんですね。僕らって、アンダーグラウンドとオーバーグラウンドの間をまたぐことをテーマにずっと活動してて。「バクマン。」で描かれているマンガ家の世界って、普通なら見えないアンダーグラウンドな部分じゃないですか。それを映画として表現することに近い部分を感じたんです。それと、僕らにとっても劇伴はチャレンジでしたが、大根監督にとっても「バクマン。」を撮ることって、すごいチャレンジだったんだろうなと。

左から大根仁、山口一郎(サカナクション)。

大根 確かにチャレンジでしたね。深夜ドラマからキャリアが始まって、ドラマと映画の「モテキ」でちょっと評価されて……。映画も何本か撮ってある程度やりたいことを全部やったあとで、その次どうしようかって時期に「バクマン。」の話が来たんです。「バクマン。」というより、俺とサカナクションの境遇が似てたのかもしれないですね。ネクストステップに進まなきゃいけないタイミングだったという点で。

──「バクマン。」は映画の中で、サカナクションは作品の中で表現者の舞台裏を見せているという共通点もあると思うんですね。サカナクションは映像作品の中で、ライブの舞台裏もしっかり見せてる。舞台裏も含めてそれをきちんとエンタテインメントとして成立させて、リスナーを引き込んでいる。

山口 そうかもしれない。僕、「バクマン。」を観たときにドキュメンタリーを感じたんですよ。原作のマンガもそうだけど、ホントにリアルだなと思ったし共感できるところがあったんです。そういう作品だからこそ、自分も音楽を通して深く関わっていきたいという気持ちになりましたね。あと細かい部分のこだわりもすごいじゃないですか。特に「ジャンプ」編集部のセット! そのまま再現したって知ったときに、すげえなと思って。てっきり編集部で撮ってるんだと思ってたんですけど。

映画「バクマン。」で再現された「週刊少年ジャンプ」編集部の様子。

大根 あのセットは俺から見ても狂ってますよ(笑)。

山口 あれは編集部の写真を参考に作ったんですか?

大根 うん。みんなで編集部に下見に行って図面を作って。美術の都築(雄二)さんは「あの編集部の再現はできる」ってずっと言ってたんだよね。それで実際やってのけたという。

Contents Index

「バクマン。」特集 TOP
大根仁×佐藤健×神木隆之介
小畑健×大根仁
番外編 佐藤健×神木隆之介
山口一郎(サカナクション)×大根仁
新井浩文、ジャンプ編集部へ

About the Movie

「バクマン。」

「バクマン。」2015年10月3日より全国東宝系にて公開

スタッフ

監督・脚本:大根仁
原作:大場つぐみ、小畑健
主題歌:サカナクション「新宝島」

キャスト

真城最高:佐藤健
高木秋人:神木隆之介
新妻エイジ:染谷将太
亜豆美保:小松菜奈
福田真太:桐谷健太
平丸一也:新井浩文
中井巧朗:皆川猿時
服部哲:山田孝之
川口たろう:宮藤官九郎
佐々木編集長:リリー・フランキー

Information

Profile

サカナクション
サカナクション

山口一郎(Vo, G)、岩寺基晴(G)、江島啓一(Dr)、岡崎英美(Key)、草刈愛美(B)からなる5人組バンド。2005年に札幌で活動開始。2013年3月に発表した6枚目のアルバム「sakanaction」が、バンド史上初のオリコンCDアルバム週間ランキング1位を記録。同年12月には「NHK紅白歌合戦」に出場を果たした。2015年8月にはこれまでに発表したシングルのカップリング曲や、さまざまなアーティストによるリミックス音源をまとめた作品「懐かしい月は新しい月~Coupling & Remix works~」をリリース。10月より1年半ぶりとなる全国ツアー「SAKANAQUARIUM2015-2016」を開催する。映画「バクマン。」では主題歌「新宝島」を書き下ろしたほか、初の劇伴にも挑戦。

大根仁(オオネヒトシ)

1968年12月28日、東京都生まれ。「劇団演技者。」「アキハバラ@DEEP」「湯けむりスナイパー」などの深夜ドラマを数多く手がける。2011年には自身が演出を務めたドラマ「モテキ」の劇場版で映画監督デビューを果たし、第35回日本アカデミー賞で話題賞(作品部門)に輝く。近作は「恋の渦」、ドラマ「まほろ駅前番外地」「リバースエッジ大川端探偵社」ほか。電気グルーヴの活動を追ったドキュメンタリー映画「DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧~」が12月26日より公開。

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2015年10月9日更新