24人組K-POPガールズグループ・tripleSを擁する韓国の芸能事務所・MODHAUSから、新たに24人組のボーイズグループ・idnttが始動した。
idnttは、メンバー構成や楽曲をファン投票で決定するユニークなシステムのもと歩みを進めていく。音楽ナタリーでは、その全貌が徐々に明かされつつあるidnttを特集。グループが描く世界観から「COSMO」「Gravity」「Objekt」「COMO」といったキーワードが飛び交う独自の応援システムまで、idnttにまつわるトピックを多角的に解説する。
加えて、先陣を切って今年8月にデビューした最初のユニット・unevermetとそのメンバーも紹介。unevermetは、1stミニアルバムを初動で30万枚超売り上げ、日本では東京・Zepp DiverCity(TOKYO)で初のショーケースを成功させた7人組だ。2ページ目では、彼らの素顔が垣間見えるインタビューも掲載する。
取材・文 / 岸野恵加
COSMO、Objekt、COMO、Gravity……MODHAUS独自のスタイル
目まぐるしく変化するK-POPシーンの中で、今ひときわユニークな存在として注目を浴びている芸能事務所がある。24人組ガールズグループ・tripleSを世に送り、まったく新しい活動スタイルを打ち出したMODHAUSだ。idnttは、そのMODHAUSが新たに放った24人組ボーイズグループである。
MODHAUSはJYPエンタテインメントとWoollimエンタテインメントでA&Rを務め、LOONA(今月の少女)の生みの親として知られるチョン・ビョンギが、ジョセフ・ベクと共同で2021年末に設立。所属アーティストの活動における意思決定にファンが積極的に関わることができる、“ファン参加型”の運営スタイルを構築している。
アーティストの活動の核になるのは、MODHAUS独自のプラットフォーム「COSMO」。ここではさまざまな情報が発信されるほか、「Objekt」と呼ばれるデジタルトレカが販売される(※リアルで販売されるCDには、フィジカルのObjektが封入されている)。ファンはObjektを購入することで「COMO」と呼ばれる投票権を獲得し、COSMO内のファン投票イベント「Gravity」で自分の意思を示すことができる。
先例となるtripleSではこれまで、ユニットのメンバー構成やカムバック活動の際の中心となるリード曲、さらにはユニット名からペンライトのデザイン、ファンダム名に至るまで、さまざまな要素がファンによる投票で決定されてきた。このような仕組みによってファンがプロデュースに携わり、アーティストを直接的に応援できる関係性を作ることで、MODHAUSはシーンに革新をもたらした。
tripleSに続く「24人組K-POPグループ」
tripleSは2022年5月以降、段階的にメンバーが発表されていき、まず1つ目のユニット・Acid Angel from Asia (AAA)が同年10月にデビューした。そこから少しずつメンバーが増え、さまざまなユニットが続々と作品をリリース。2023年には「2023 MAMA AWARDS」で「Best New Female Artist」に選ばれ、ルーキーとしての強い存在感を示した。そして、ついに24人全員が2024年5月に集結。デビューから2年の時を経て完全体となり、同月リリースされた初のフルアルバム「ASSEMBLE24」のタイトル曲「Girls Never Die」は韓国の音楽番組で1位を獲得するヒットを飛ばした。2024年11月には、選抜された8人によるユニット・tripleS ∞!が日本でメジャーデビューを果たしている。
なおtripleSは今年5月にアルバム「ASSEMBLE25」を発売し、初動売上が51万枚を超えるキャリアハイを達成。タイトル曲「Are You Alive」も韓国の音楽番組で1位を獲得し、その人気を証明した。
idnttも、メンバーが徐々に公開されていくプロセスはtripleSと共通だ。unevermet(ユーネバーメット)、yesweare(イエスウィーアー)、itsnotover(イッツノットオーバー)の3つのユニットで構成され、そのうち7人組のunevermetが最初にベールを脱ぎ、2025年8月にデビューを果たした。今後は新たにメンバーが加わってから、yesweareで新曲を発表。さらにitsnotoverが加わり最後のピースがそろうと、24人全員による完全体での活動がスタートする。その後は、Gravityでのファン投票によって各ユニットのメンバー構成の再編が予告されている。
グループ名のidnttは独自性、主体性という意味を持つ英単語「identity」に由来し、「自分だけのIDを発見していく」という意味が込められている。アイデンティティを固定化せず、常に変化を遂げていくグループにぴったりの名前と言えるだろう。unevermetの7人はデビューの際、グループ名に言及しつつ「より鮮明な自分を見つけるため、そして世界のルールを超えるため、ファンとともに歩んでいきたい」と力強くコメントしていた。
idnttの始まり・unevermet
では最初のユニット・unevermetのデビューミニアルバム「unevermet」では、どのような世界が描かれたのか。同作のテーマは「まだ完成していない少年が、アイデンティティを探していく過程」。“トリプルタイトル曲”「You Never Met」「Storm」「BOYtude」ではそれぞれ、明日何が起こるかもわからないまま生きている“偶然”に対するときめき(「You Never Met」)、正解のない世の中に自分を投げ出す少年の“挑戦”(「Storm」)、そして毎回倒れるたびに勲章のように増えていく“傷”(「BOYtude」)について歌われている。このうち「BOYtude」が、Gravityを通じて“スーパータイトルトラック”に選ばれた。
デビュー時の平均年齢19.1歳のメンバー7人は、こうした「unevermet」の世界観をみずみずしい感性で表現している。自身が歩んできた少年時代の経験や、練習生として鍛錬を重ねる中で刻まれた傷と成長──そうした経験がありのままに歌唱やパフォーマンスに反映されているがゆえに、リアリティを帯びた彼ら自身の物語として、楽曲がリスナーの心に響くのだろう。トリプルタイトル曲ではそれぞれで異なるコンセプトを表現しているが、これは今後、さまざまな表情を披露していくidnttの序章に過ぎない。
「You Never Met」と「BOYtude」には、SUGA(BTS)、IU、NCTなどの楽曲を手がけ、tripleS「Girls Never Die」の生みの親であるヒットメーカー・EL CAPITXNが参加。また「Storm」の制作にはSMエンターテインメントに所属するベテラン作家であり、aespa「Supernova」やRIIZE「Memories」など多数のヒット曲を世に送り出してきたKENZIEが携わっている。tripleSも楽曲のクオリティの高さでたびたび話題を呼んできたが、idnttもデビュー盤からすでに、完成度の高い楽曲群で幅広い層を惹き付けている。アルバムは約33万6000枚の初動売上を記録し、idnttに寄せられている期待の大きさを証明した。
9月14日、unevermetは日本で初となるショーケースイベントを開催(参照:“成長型”24人組グループidnttの旅の始まり、日本初ショケで藤井風や嵐のカバーも披露)。パフォーマンスや素顔を見せるゲームコーナーはもちろん、EXOやBTSといったK-POPレジェンド、そして嵐と藤井風のカバーステージまでも披露し、「ファンを全力で楽しませたい」という彼らの思いがにじみ出た充実のステージを展開した。筆者も現地で鑑賞したが、ダイナミックでシンクロ率の高いダンス、安定した生歌の歌唱に、圧倒的なエネルギーと無限の可能性を感じた。
idnttの旅路は、ここから本格的に始まっていく。あなたもCOSMOに飛び込み、彼らの成長を支える一員となってみては。