音楽ナタリー Power Push - ART-SCHOOL

暗闇の時代に鳴らす“デビューアルバム”

2015年2月に東京・新木場STUDIO COASTでの単独公演をもって活動を休止し、同年末のロックフェス「COUNTDOWN JAPAN 15/16」にて活動を再開したART-SCHOOL。彼らが「YOU」以来、およそ2年ぶりとなるアルバム「Hello darkness, my dear friend」を完成させた。

木下理樹(Vo, G)が昨年3月に立ち上げたレーベル・Warszawa-Labelから発表されるこのアルバムは「今のメンバーで、今の状態でもう一度デビューアルバムを作ろう」というコンセプトのもと制作された作品。音楽ナタリーでは彼らがなぜこのようなコンセプトでアルバムを制作したのかを探るべく、木下理樹(Vo, G)に単独インタビューを実施した。またWarszawa-Labelについても話を聞き、このレーベルから発信していきたいことなどを語ってもらった。Warszawa-Labelのメンバーである中野敬久によるポートレートとあわせてインタビューを楽しんでほしい。

取材・文 / 秋葉萌実 撮影 / 中野敬久

しょうがないから付き合ってやるよ

木下理樹(Vo, G)

──2015年3月に自主レーベル・Warszawa-Labelを設立し、そして5月にレーベルの第1弾作品としてライブDVD「ART-SCHOOL LIVE ~2015.02.13 at STUDIO COAST~」をリリースされましたね。自主レーベルを立ち上げようというのはいつ頃から考えていたんですか?

2014年の秋冬辺りですかね。レーベルといってもクリエイティブチームと名乗っているので、いろんな人が関わっているんです。前の事務所とレーベルを離れることになったときに「自分には何ができるんだろう?」とまず考えて、ART-SCHOOLの居場所を確立して自由な遊び場を作りたいと思ったんですよね。アパレルラインも作りたかったし、写真も好きだから、そういうものが全部そろった総合的なものにしたかった。で、どうせやるんだったらバンド仲間やクリエイターの友人、ライブ制作の人たちなんかがふらっと来て「このバンド面白いんだけど、ちょっと聴いてみてよ」って音源を持ち寄ったりできるような、そういうクリエイティブで自由な空間を築きたかったんです。

──すごく賑やかな空間になりそうですね。

僕はこのWarszawa-Labelで、アンディ・ウォーホルがやっていたようなファクトリーを作りたいと思っているんです。彼がやっていたファクトリーにはThe Velvet UndergroundやThe Rolling Stonesみたいなバンドも来てたでしょ。そういうカルチャーの発信地として機能するような場所にできたらいいなと考えています。

──Warszawa-Labelにはどんな方たちが携わってるんですか?

音源の流通回りを手伝ってくれるUK.PROJECTのダイマス(遠藤幸一社長)さんだったり、今回この記事で写真を撮ってくれた中野(敬久)さんだったり。事務所を離れることが決まって1カ月くらい経って、周りの人に「悪いけど付き合ってくれないかな」と声をかけていってメンバーを集めたんです。

──ART-SCHOOLとゆかりのある方たちばかりですね。皆さんは二つ返事で参加してくれたんでしょうか?

いや、みんな「しょうがないから付き合ってやるよ」っていう感覚でこのチームに参加してくれてると思います(笑)。

Warszawaからカルチャーを作りたい

──今まで演者側にいた木下さんが、レーベルを動かす準備をするために裏方に徹した期間はどういうものでしたか?

非常に刺激的でしたね。何か作品を発表するために必要なものとか、何かを発信するための仕組みを知れたというか。とにかく学ぶことの多い期間でした。メジャーレーベルのような大きな組織だと「こういうことがやりたい」っていう思いがあっても、それを実現するためにたくさんの人を介さないと動けない。でも自分でやればもっとシンプルにできるんだなとも思いました。

──身軽に動ける分、作り手の思いがダイレクトに反映されるんですね。運営するにあたって影響を受けたレーベルはありますか?

木下理樹(Vo, G)

僕が好きなレーベルってイギリスの4ADとかなんですけど、リスナーが“レーベル買い”をしたくなるレーベルなんですよ。そういうのってすごくカルチャー的で、理想的なレーベルのあり方だなと思っていて。

──今はレーベル名が1つのセールスポイントになっているインディーズレーベルが増えてきていますよね。例えば元銀杏BOYZの安孫子真哉さんが立ち上げたKiliKiliVillaやLUCKY TAPESなどが所属するRallye Labelみたいな、きちんとレーベルオーナーの趣味が見えるというか、色があるレーベルが多くなってきたように感じます。

そうですね。僕はLUCKY TAPESももちろん好きだし、D.A.N.やYogee New Wavesがいるbayon Productionもすごくいいなと思う。カルチャーを作りたいっていうのが見えるし、そうやって戦っている人を見ると応援したくなるし。Warszawa-Labelもそういうレーベルの1つになれたらいいなと思っています。

──ART-SCHOOLはWarszawa-Labelの核となってカルチャーを作っていく、ということでしょうか?

いや、カルチャーって20代の子しか作れないんですよ。だから僕はカルチャーが作り上げられていく様子を菩薩のような気持ちで見守ります(笑)。

──なるほど(笑)。

とにかく僕はカッコいい音楽を鳴らしてる人には音楽だけで食べていってほしいと強く思うんです。Warszawa-Labelがそういう人たちの手助けをできたらいいなとは考えてますね。

みんなのスキルがすごすぎて愕然

木下理樹(Vo, G)

──ART-SCHOOLが事実上の活動を再開したのは昨年11月に行ったWarszawa-Labelのイベント(参照:木下理樹のレーベル主催イベントに戸高賢史、中尾憲太郎、藤田勇ら)でしたね。ひさしぶりにメンバーとステージに立ってみていかがでしたか?

ひさびさにみんなに会ったら、全員のスキルがすごく上がっていて「これはヤバい!」って愕然としました(笑)。トディ(戸高賢史)は特にパワーアップしていて。ART-SCHOOLは(藤田)勇さんのカウントで入る曲が多いんですけど、その入りがめっちゃ速いときがあっても、みんなそれにちゃんと対応しているんですよね。僕だけできていなくて、さすがにこれはまずいなと思いました。

──その後、「COUNTDOWN JAPAN 15/16」への出場を経て、2016年2月に新木場STUDIO COASTでワンマンライブ(参照:活動休止から1年、ART-SCHOOL新木場で完全復活)を行いましたね。

すごい緊張したんですよ、このとき。活動休止中もDJや弾き語りでライブには出ていたけど、バンドでガンって音を鳴らすのとは全然違うから。復活ワンマンは本当に緊張した(笑)。

ニューアルバム「Hello darkness, my dear friend」/ 2016年5月18日発売 / 2592円 / WARS-002 / Warszawa-Label
「Hello darkness, my dear friend」
収録曲
  1. android and i
  2. broken eyes
  3. Ghost Town Music
  4. Melt
  5. Julien
  6. Paint a Rainbow
  7. R.I.P
  8. TIMELESS TIME
  9. Luka
  10. Supernova
  11. NORTH MARINE DRIVE

ART-SCHOOL TOUR 2016/Hello darkness, my dear friend

  • 2016年6月11日(土)千葉県 千葉LOOK
  • 2016年6月14日(火)京都府 京都MOJO
  • 2016年6月16日(木)岡山県 IMAGE
  • 2016年6月17日(金)福岡県 THE Voodoo Lounge
  • 2016年6月21日(火)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
  • 2016年6月23日(木)新潟県 CLUB RIVERST
  • 2016年6月24日(金)宮城県 enn 2nd
  • 2016年6月26日(日)北海道 COLONY
  • 2016年7月1日(金)大阪府 Shangri-La
  • 2016年7月3日(日)愛知県 ell.FITS ALL
  • 2016年7月9日(土)東京都 LIQUIDROOM

ART-SCHOOL & THE NOVEMBERS presents「KINOSHITA NIGHT×首」

2016年7月10日(日)東京都 LIQUIDROOM
<出演者> ART-SCHOOL / THE NOVEMBERS / polly / Burgh
ART-SCHOOL(アートスクール)
ART-SCHOOL

2001年に木下理樹(Vo, G)を中心に結成されたギターロックバンド。幾度かのメンバーチェンジを繰り返し、現在は木下、戸高賢史(G)、そしてサポートメンバーの中尾憲太郎(B)と藤田勇(Dr / MO'SOME TONEBENDER)という4人体制で活動している。2001年9月にインディーズレーベルからリリースした1stアルバム「SONIC DEAD KIDS」が好評を博し、2002年10月にシングル「DIVA」でメジャーデビュー。2007年2月発売のアルバム「Flora」がロングヒットを記録し、2008年には初のベスト盤「Ghosts & Angels」をリリースした。2012年5月に所属レーベルをKi/oon Musicへ移籍し、同年8月にアルバム「BABY ACID BABY」を、2013年3月にROVOの益子樹をエンジニアに迎えたミニアルバム「The Alchemist」を発売。2014年4月にアルバム「YOU」をリリースし、全国ツアーを回ったあと、2015年2月に新木場STUDIO COASTでのライブをもって一時的に活動休止期間に入った。2015年末の「COUNTDOWN JAPAN 15/16」にて活動再開し、2月に活動休止前ラストライブを行った新木場STUDIO COASTで単独公演を開催し、完全復活を果たす。また木下は2015年3月に自主レーベル・Warszawa-Labelを設立。ART-SCHOOLは同レーベルより2016年5月にアルバム「Hello darkness, my dear friend」をリリースする。