音楽ナタリー Power Push - ART-SCHOOL

暗闇の時代に鳴らす“デビューアルバム”

生きづらい人を包んであげたい

──新作「Hello darkness, my dear friend」は、2014年4月発売の「YOU」以来、2年ぶりのフルアルバムです。制作はいつ頃始まったんでしょうか?

木下理樹(Vo, G)

去年の夏くらいですね。レーベルを運営していこうっていう頭から作品を作るモードに切り替えるのがけっこう大変だったけど、結局3、4カ月で19曲くらいできて。

──3、4カ月で19曲ってけっこうハイペースな気がするんですが、難産な曲はあまりなく?

断片的にあったアイデアをまとめ上げる作業を夏にしたっていう感じなんですよ。だから難産なものはあまりないかな。活動休止中も曲を作ってSoundCloudに上げたりしてたので。

──「今のメンバーで、今の状態でもう一度デビューアルバムを作ろう」というコンセプトで制作したアルバムとのことですが、このテーマは最初からあって、そこに向けて曲を作っていったんですか?

僕は前作(「YOU」)が今のメンバーの集大成だったと思っていて。ある種そこで1つART-SCHOOLが終わったんですよね。集大成の先ってないから、今回は初期のART-SCHOOLの持っていた繊細でメロウな部分をこの4人で表現したらどうなるんだろう?という気持ちで作っていった結果、こういうコンセプトにたどり着いたという感じですね。

──タイトル「Hello darkness, my dear friend」は直訳すると「闇よ、こんにちは。私の親愛なる友だち」ですが、なぜこういうタイトルを付けたんでしょうか。

今の日本が闇の時代だと感じるからというのと、ART-SCHOOLはそういう闇を見ているバンドなんだよっていうのを改めて示したかったからですね。

──具体的に闇というのは?

木下理樹(Vo, G)

ニュースとか見てると、今の大人ってどうなってんの?っていうのがちょっと表面化し始めてきてますよね。もちろん大切に子供を育てている人たちもいるのでなんとも言えないですけど、なんだか嫌な話も多い。SNSの流行によって陰湿さが増したのかもしれないけど、結局子供は大人を見て成長していくわけだから、全部大人の教育のせいだと思ってるんです。僕はそういう闇がいっぱいある世の中で、生きづらいと思っている人をART-SCHOOLの音楽で包んであげたくて。僕がやり続けている表現はずっと変わらずそういうことなんです。僕らの音楽を聴いているその瞬間は楽になってくれればいいとか、そういうことをずっと考えているし、僕が音楽を続ける理由はそれでしかない。さすがに30代になってくると「もういいのかなあ」って感じたりもしてきますけど。

──「もういいかなあ」というのは?

30代にもなって暗闇について歌っていると、「イタい」という表現をされがちなんです。でも暗闇について歌っているものに対して聴いた人が「イタいなあ」と感じるというのは僕からしたら品がなく感じるんですよね。それに曲がよければそんなふうには言われないと思うんですよ。そういう意味でART-SCHOOLの音楽は品があるものでありたいと思っていますね。

映画のエンドロールで流れたら

──アルバムの中で気に入ってる曲はありますか?

個人的には「broken eyes」「Ghost Town Music」「Melt」「Julien」「TIMELESS TIME」ですね。

──収録曲の半分近くですね。

本当は全部気に入ってるんですよ。中でも8曲目の「TIMELESS TIME」はなんかいいなあって思います。

──刹那について歌った歌詞や切ないメロディが印象的で心にグッと来る楽曲だと思いました。あと、11曲目の「NORTH MARINE DRIVE」は1999年に木下理樹名義でリリースしたミニアルバム「TEENAGE LAST」に収録されていた曲ですよね。なぜ今リメイクしようと思ったんでしょうか。

木下理樹(Vo, G)

みんなに曲出しをしたときに「この曲いいんじゃないかな」という話になって、ちょうどハマったという感じですね。あと弾き語りでライブに出るときにこの曲のリクエストがわりと多かったので、そういうのも加味してます。

──改めてこの曲を歌ってみてどうでした?

いやあ……恥ずかしかったですね(笑)。

──なぜこの曲をアルバムの最後に?

この曲については自分的に映画のエンドロールの音楽みたいな感覚があったので、最後に置きました。ロードムービーの終わりに流れてきたらいいなと思いましたね。

家に帰ってきたときに聴きたくなるアルバム

──前作の「YOU」は環ROYさんとのコラボ曲があったり、思わず口ずさみたくなるようなポップな曲が入っていたり、多くの人とつながることを前提にしたサウンドが多かったですよね。でもこのアルバムの曲は「broken eyes」にしても「Melt」にしても、悲哀に満ちてていて、従来のART-SCHOOLらしいというか、木下さんらしいなと思いました。

木下理樹(Vo, G)

みんな忙しくてなかなか合わせる時間がなくて、1人で作り込んだものをメンバーにプレゼンしたから、個人的な感じが出ているのかもしれないです。

──過去の音源よりも声が柔らかくなっていて、優しさを感じました。

優しく歌うっていうのはすごく心がけましたね。あと家に帰ってきたときに聴きたくなるアルバムを作りたかったという思いがありました。僕はいつも虫けらのような気持ちで生きているんですよ。だからこのアルバムが同じような気持ちで生きてる人たちの癒やしになればいいなと思っています。それは自分にとっての癒やしでもあるし。そういうのがART-SCHOOLらしさなのかなと、このアルバムを作って改めて思いました。

ニューアルバム「Hello darkness, my dear friend」/ 2016年5月18日発売 / 2592円 / WARS-002 / Warszawa-Label
「Hello darkness, my dear friend」
収録曲
  1. android and i
  2. broken eyes
  3. Ghost Town Music
  4. Melt
  5. Julien
  6. Paint a Rainbow
  7. R.I.P
  8. TIMELESS TIME
  9. Luka
  10. Supernova
  11. NORTH MARINE DRIVE

ART-SCHOOL TOUR 2016/Hello darkness, my dear friend

  • 2016年6月11日(土)千葉県 千葉LOOK
  • 2016年6月14日(火)京都府 京都MOJO
  • 2016年6月16日(木)岡山県 IMAGE
  • 2016年6月17日(金)福岡県 THE Voodoo Lounge
  • 2016年6月21日(火)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
  • 2016年6月23日(木)新潟県 CLUB RIVERST
  • 2016年6月24日(金)宮城県 enn 2nd
  • 2016年6月26日(日)北海道 COLONY
  • 2016年7月1日(金)大阪府 Shangri-La
  • 2016年7月3日(日)愛知県 ell.FITS ALL
  • 2016年7月9日(土)東京都 LIQUIDROOM

ART-SCHOOL & THE NOVEMBERS presents「KINOSHITA NIGHT×首」

2016年7月10日(日)東京都 LIQUIDROOM
<出演者> ART-SCHOOL / THE NOVEMBERS / polly / Burgh
ART-SCHOOL(アートスクール)
ART-SCHOOL

2001年に木下理樹(Vo, G)を中心に結成されたギターロックバンド。幾度かのメンバーチェンジを繰り返し、現在は木下、戸高賢史(G)、そしてサポートメンバーの中尾憲太郎(B)と藤田勇(Dr / MO'SOME TONEBENDER)という4人体制で活動している。2001年9月にインディーズレーベルからリリースした1stアルバム「SONIC DEAD KIDS」が好評を博し、2002年10月にシングル「DIVA」でメジャーデビュー。2007年2月発売のアルバム「Flora」がロングヒットを記録し、2008年には初のベスト盤「Ghosts & Angels」をリリースした。2012年5月に所属レーベルをKi/oon Musicへ移籍し、同年8月にアルバム「BABY ACID BABY」を、2013年3月にROVOの益子樹をエンジニアに迎えたミニアルバム「The Alchemist」を発売。2014年4月にアルバム「YOU」をリリースし、全国ツアーを回ったあと、2015年2月に新木場STUDIO COASTでのライブをもって一時的に活動休止期間に入った。2015年末の「COUNTDOWN JAPAN 15/16」にて活動再開し、2月に活動休止前ラストライブを行った新木場STUDIO COASTで単独公演を開催し、完全復活を果たす。また木下は2015年3月に自主レーベル・Warszawa-Labelを設立。ART-SCHOOLは同レーベルより2016年5月にアルバム「Hello darkness, my dear friend」をリリースする。