音楽ナタリー PowerPush - angela

2人を形作りし「ファフナー」のためatsukoとKATSUが生み出した「イグジスト」

「お帰り」感を発揮するスタジオエンジニアリング

──今atsukoさんがおっしゃっていた「流れ」って?

KATSU(G, Key)

KATSU 「暗夜航路」は、テレビ第1シリーズのエンディングだった「Separation」や、15話限定のエンディングだった「Proof」、テレビスペシャルの挿入歌だった「果て無きモノローグ」に続く楽曲という位置付けだなってイメージだったんです。だからけっこうスムーズに曲を作れましたし。実際は一本道の流れというよりは、円を描いて、また帰ってきた感じ。聴感的には2004 年頃に戻っている。最初に「ファフナー」のために作ったバラード「Separation」に近づけてるんですけどね。

──それはなぜ?

KATSU やっぱり「お帰り」って思ってもらいたかったからですね。だから「Shangri-La」と「Separation」もそうだし、あとデビュー曲の「明日へのbrilliant road」も録ってくれた北城“博士”浩志さん、僕が師匠だと思っているエンジニアさんにまたお願いしてるんです。やっぱりこれも「ファフナー」のイメージソングだった「DEAD SET」の頃(2005年)から曲ごとにいろんなエンジニアさんにお願いしてたんですけど、今回はあれから10年以上経って、いろんな経験をしてテクニックも積んだつもりの今の僕たちの音を、当時お世話になった“博士”に委ねてみたらどうなるんだろう?っていう興味もあったので。

──10数年ぶりの北城さんとの仕事はいかがでした?

atsuko ある種の懐かしさはあったんですけど、緊張感もあって。レコーディングしてミックスダウンするとき感想を聞けなかったんですよ。「歌、全然うまくなってないよね」って言われたらショックだから(笑)。

KATSU 当時は僕もatsukoもスゲー怒られてましたから。エンジニアさんの中には職人タイプ……ミュージシャンがやりたいこと、鳴らしたいサウンドをそのまま記録するタイプの人と、アーティストタイプ……サウンドはもちろん歌詞なんかについても積極的に意見というか提案をするタイプの人もいて。“博士”は完全に後者なんですよね。これは僕らの詞についてっていうわけではないんだけど、流行りの曲全般の詞について「そんなどうでもいいことはブログにでも書いとけ」って言っちゃうような人というか(笑)。で、音作りもけっこう個性的で、レコーディングやミキシングをしてもらうと、僕の音ではあるだけど、“博士”の音でもあるっていうサウンドになるんですよね。その音を作るためのマイクの立て方、ミックスの仕方、アレンジの仕方を教えてくれたから師匠ではあるんだけど、それがちょっと悔しくもあったし……。

atsuko 怖かった(笑)。

angelaの骨格を作りし者との共同戦線は続く

KATSU でもatsukoのこと、めっちゃホメてたよ。ボーカルもそうだし、歌詞も「『ファフナー』の世界をよく捉えてていいと思う」って。「いや、オレたちのほうが『ファフナー』のこと詳しいはずなんだけどな」とは思ったけど(笑)。

angela

atsuko よかったあ(笑)。で、やっぱり北城さんの音作りって面白いし、1つの正解なんですよね。今回の「暗夜航路」のボーカルにしても1音1音本当に太くしてくれていて。楽器隊はシンプルな編成だし、メロディも儚い感じなんだけど、ただ素朴で儚いだけじゃない。ちゃんと1本芯の通ったブレない曲に仕上げてくれますから。

KATSU “博士”のサウンドってシンプルな曲で一番映えるんですよ。だから「暗夜航路」については曲ができた時点で「これは“博士”に録ってもらうしかない」って決め打ちでお願いしたんですけど、本当にこっちの期待を超えるサウンドを作ってくれて。だから今も僕にとって“博士”は師匠でありライバルなんです。自分で「“博士”しかない」って思っておきながら、仕上がった音を聴いたときやっぱり悔しかったから(笑)。

atsuko そのライバルに10年以上の時を経て再会できたのもうれしいんですよね。お互い別の環境で積み上げたテクニックを持ち寄って、また新しいことができたわけですから。こういうことってお互いがちゃんと現役のまま生き残ってないとできないことじゃないですか。

──そうですね。

atsuko で、私たちは幸運なことにまた巡り会うことができたし、いい仕事ができた。しかもそれが「ファフナー」のおかげでっていうのが本当にうれしくて。

──お2人にとって「ファフナー」は本当に特別。もちろん「ファフナー」と、ほかのテーマソングを担当したアニメのどちらが上とか下ではもちろんないんだけど、向き合う姿勢は明らかに違いますよね。

atsuko そうですね。「K」や「シドニアの騎士」がangelaの筋肉を作ってくれた作品だとしたら、「ファフナー」はその筋肉が付く骨格を作ってくれた作品ですから。もちろんほかの曲も長く歌い続けていくことになるし、長く歌っていきたいと思うんですけど、「イグジスト」や「暗夜航路」についてはむしろ予感がするんですよ。この10年間「Shangri-La」や「Separation」がそうであったように、今回もまた長く歌うことになる未来がすでに見えている感じというか。

angela

KATSU 2人ともその予感であり、覚悟でもありっていう感じのものを「ファフナー」に対しては抱いてるんですよね。歌い続けていくこと、演奏し続けていくこともそうだし、求められれば今後も是が非でも作り続けていかなきゃなって。

atsuko 正直「ファフナーの曲を」ってお話をもらうたびに「今度はどうしよう……」って悩むんですけどね(笑)。

KATSU 確かに若干消耗戦の様相を呈してはいるんだけど(笑)、それでもこれからも「ファフナー」と一緒に戦っていくことになるんだろうし、戦いたいなとは思ってますね。

ニューシングル「イグジスト」2015年2月11日発売 / スターチャイルド
限定生産盤 [CD+Blu-ray] 1944円 / KICM-93286
アニメ盤 [CD]1296円 / KICM-3286
CD収録曲
  1. イグジスト
  2. 暗夜航路
  3. イグジスト off vocal version
  4. 暗夜航路 off vocal version
限定生産盤Blu-ray収録内容
  • 「イグジスト」Music Clip
angela(アンジェラ)

岡山県出身のatsuko(Vo)とKATSU(G, Key)による2人組ユニット。それぞれ音楽を志し上京したのち結成し、2003年にテレビアニメ「宇宙のステルヴィア」のオープニング主題歌「明日へのbrilliant road」でメジャーデビュー。1stシングルながらオリコン週間シングルランキングで15位をマークし、瞬く間にアニメソングシーンで存在感を示す。以来「蒼穹のファフナー」シリーズ、「アスラクライン」、「K」シリーズなど、多くの人気アニメの関連楽曲を担当。また「Animelo Summer Live」やアメリカの「SAKURA-CON」、カナダの「CANADIAN NATIONAL EXPO」、フランスの「Japan Expo」など、国内外の大型アニメ系イベントにも多数出演する。2014年には5月にシングル「シドニア」、ベストアルバム「宝箱2 -TREASURE BOX II-」、同作と2007年のベスト盤「宝箱 -TREASURE BOX-」の楽曲を収録したBDM(Blu-ray Disc Music)盤「宝箱と宝箱2が入ったブルーレイで聞くやつ」、7月にシングル「Different colors」を発表した。2015年2月、テレビアニメ「蒼穹のファフナー EXODUS」のオープニング主題歌「イグジスト」をシングルとしてリリースした。