「花の唄」のデモを聴いた瞬間は忘れられない
──2曲目の「花の唄」は梶浦由記さん作詞・作編曲で、劇場アニメ「『Fate/stay night [Heaven's Feel]』I.presage flower」の主題歌でもあります。
以前から私は梶浦さんの曲を一方的に好きで聴いていて。それこそKalafinaさんとライブでご一緒する機会もあったりもして、憧れの存在だったので今回、念願叶いました。それで「いったいどんな曲になるんだろう?」と思っていたら、ある日、デモ音源と歌詞を一緒に送ってくださって。初めて聴いたときのことは忘れられないですね。「わああ!」ってなりました。
──「わああ!」って。
メロディラインも衝撃的で、でもそれはある意味すごく梶浦さんらしくもあり。歌詞も追えば追うほど世界が広がっていくと言うか、最終的に「そういうことだったのか!」って合点がいくんです。「本当にこんな素敵な曲をありがとうございます」という気持ちになって、プリプロで初めてご本人にお会いしたときもそれを真っ先にお伝えしました。
──梶浦さんは、レコーディングにも立ち会われたんですか?
はい。と言っても、プリプロの段階で「『花の唄』はAimerさんの曲なので、自由に歌ってください」と言ってくださって。私はいつも、歌の設定を決めるんですね。激しいのか冷めているのか、みたいな歌の温度感や、若い人の歌なのか老いた人の歌なのか、男性の歌なのか女性の歌なのか、といったことを事前にある程度固めてから歌うんです。その設定に関してだけ、例えば私が「AというアプローチとBというアプローチがあります」みたいに提案して、梶浦さんから「Bのほうが好き」とお返事をいただくようなやり取りをして。そうやって設定が固まってからはもう「え、これで終わり?」っていうくらい、つるっと。
──もうちょっと歌いたかった?
はい(笑)。「何度でも歌いますよ!」と意気込んでいたんですけれど、「大丈夫です」と。ボーカリストとしては、とてもうれしい気持ちのままレコーディングを終えました。
ねっとりする激しさで
──今おっしゃった「花の唄」の設定に関して、もう少し具体的にお聞きしてよいですか?
やっぱり曲調が、サビに向かうにつれて激しさを帯びてくるので、歌声にも激しさが求められると、梶浦さんも私も感じていたんですね。ただ、激しさを出そうと思って歌ったら、私のもともとの声質から、ちょっと男性っぽい、荒々しい感じの激しさになったんです。それを自分で聴いて違和感を覚えたと言うか。「花の唄」は「Fate」のヒロインの1人である間桐桜さんの心情を歌った曲、つまり女性性を感じさせる曲なんですね。なので、そこに宿る激しさも、荒々しいと言うよりは、うーん……ねっとりする感じです。
──ねっとり?
すごい表現になっちゃいましたね(笑)。なんて言ったらいいんだろうな……例えば「後ろ髪を引かれる」という表現があるじゃないですか。あれって、短い髪だとあんまり引かれてる感がなくないですか?
──言われてみればそうですね。
そういう感じです。すごく、後ろ髪を引かれてる感じの、激しさ。執着があるというか。
──情念めいた、エモーショナルなもの?
それです! その女性的な情念みたいなものを、マイルドに包み込むような方向で……っていう設定を提示したら、「それでいきましょう」と。で、ミックスされた音源を聴かせていただいたら、予想外に自分の声がくっきりしてるというか、ぜんぜん手を加えていない、生々しい質感にびっくりして。そうやって梶浦さんが私の声を、レコーディングのときの温度感のまま閉じ込めてくださったことが、すごくありがたいと言うか、ボーカリストとして誇らしいです。ここまで歌にライブ感がある音源は私には今までなかったと思いますね。
ここまで女性的な振り切り方をした曲はなかった
──曲調の話に戻りますが、アッパーでダンサブルな「ONE」とは対照的に、「花の唄」はダークで重々しいバラードです。ここでも “blanc”と“noir”のように両極に振れている。
その通りですね。この2曲が同じシングルに入ってるのは、自分でもすごいなって。だからけっこう曲間を空けました。さらに言えば、残りの2曲も含めて面白い顔ぶれになったなと思います。
──4曲とも濃いですね。
それぞれ思い入れが強いぶん、アクも強いと言うか。そういう曲が集まってるなと思います。
──Aimerさんは、ベスト盤 “noir”に収録された「zero」で「より激しい表現に挑戦した」とおっしゃっていましたが、「花の唄」はまた別のベクトルで激しさを突き詰めた感があります。
そうですね。ここまで女性ならではのおどろおどろしさを内包した、ある意味、あまりにもピュアすぎて救いようがないっていう、そういう振り切り方をした曲はなかったので。これまでは自分が女性であるがゆえに、逆に女性性を強く打ち出せなかった部分もあるかもしれません。ただ自分としてもこういう曲を歌ってみたかったし、だから、すごくうれしいですね。ホントに、振り切ってます。
──梶浦さん様様ですね。
まさに。メロディも歌詞も、梶浦さんにしか書けないものなので。そういう意味では、梶浦さんに背中を押していただく形で、ここでもまた新たな一歩を踏み出せました。
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「ちょっと、隣に座らせてください」
- Aimer
「ONE / 花の唄 / 六等星の夜 Magic Blue ver.」 - 2017年10月11日発売 / SME Records
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初回限定盤 [CD+DVD]
1620円 / SECL-2209~10 -
通常盤 [CD]
1350円 / SECL-2211 -
期間生産限定盤 [CD]
1620円 / SECL-2212
- 初回限定盤、通常盤CD収録曲
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- ONE
- 花の唄
- 六等星の夜 Magic Blue ver.
- 糸
- 期間生産限定盤CD収録曲
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- 花の唄
- ONE
- 六等星の夜 Magic Blue ver.
- 糸
- 花の唄 Movie ver.
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 「zero」MUSIC VIDEO
- 「歌鳥風月」MUSIC VIDEO
- Aimer「LIVE TOUR 17/18 "hiver"」
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- 2017年11月16日(木)埼玉県 和光市民文化センター サンアゼリア
- 2017年11月23日(木・祝)北海道 わくわくホリデーホール
- 2017年11月26日(日)静岡県 アクトシティ浜松
- 2017年12月2日(土)新潟県 新潟県民会館
- 2017年12月8日(金)岡山県 岡山市民会館
- 2017年12月10日(日)兵庫県 神戸国際会館
- 2017年12月16日(土)宮城県 東京エレクトロンホール宮城
- 2017年12月17日(日)群馬県 ベイシア文化ホール
- 2017年12月24日(日)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2018年1月14日(日)長野県 レザンホール
- 2018年1月20日(土)広島県 上野学園ホール
- 2018年1月21日(日)京都府 ロームシアター京都
- 2018年1月23日(火)大阪府 フェスティバルホール
- 2018年1月27日(土)福岡県 福岡サンパレスホテル&ホール
- 2018年2月21日(水)東京都 NHKホール
- Aimer(エメ)
- 女性シンガーソングライター。幼少期よりピアノやギターでの作曲や英語での作詞を始め、15歳のとき声が一切出なくなるというアクシデントを経験し、それがきっかけとなり独特の歌声を獲得する。2011年から音楽活動を本格化させ、同年9月にシングル「六等星の夜 / 悲しみはオーロラに / TWINKLE TWINKLE LITTLE STAR」でメジャーデビューを果たした。以降、「夏雪ランデブー」「機動戦士ガンダムUC」といったアニメ作品のテーマソングを担当。2014年6月に2ndアルバム「Midnight Sun」と、澤野弘之とのコラボレーションアルバム「UnChild」を同時発売し、同年9月には菅野よう子、青葉市子らが参加する新作「誰か、海を。」を発表した。2015年7月に3rdフルアルバム「DAWN」をリリース。2016年7月にONE OK ROCKのTaka(Vo)と凛として時雨のTK(Vo, G)が提供およびプロデュースした楽曲を収めた両A面シングル「insane dream / us」、8月にRADWIMPSの野田洋次郎(Vo, G)制作の「蝶々結び」を収めたシングルをリリース。9月にTaka、野田のほか、andropの内澤崇仁(Vo, G)、スキマスイッチが楽曲提供およびプロデュースをした新曲を含むアルバム「daydream」を発表し話題を集める。2017年5月にベストアルバム「BEST SELECTION "blanc"」と「BEST SELECTION "noir"」を同時リリース。8月に初の東京・日本武道館単独公演を行い、1万3000人を動員した。10月にトリプルA面シングル「ONE / 花の唄 / 六等星の夜 Magic Blue ver.」を発表。