ナタリー PowerPush - 相川七瀬
彼女が変化した“必然的”理由
本当の意味での“夢見る少女じゃいられない”
──アルバムのタイトル「今事記」からして、思いっきり“和”ですからね。
今、自分が思っていることを記すっていう、そのまんまの意味ですね。去年がちょうど古事記編さん1300年だったんですけど、古事記(ふるごとのふみ)はそこから今事記(いまごとのふみ)になるっていう話を聞いたので、ちょうどいいじゃんと思って。
──ほんとに好きなんですね、そういう世界が。
そうなんですよね。大きな神社のことならたいてい語れるかも(笑)。実際に全国の神社に訪れていますし。数年前から神社を旅した本を書いて、温めてたりもするんですよ。日本のそれぞれの地域に昔から根ざしてる文化とか歴史だったりするので、スピリチュアルという枠ではなく、歴史と地域、人という3つの世界観を大切にしながらいつか出せたらいいなと思います。
──スピリチュアルな方向に寄せるのは本意ではないと。
そうですね。私自身、セラピストとしてスクールなども主催してきましたがスピリチュアルなことだけですべては動かない。現実があるからこそ動いていくわけだから。いきいきと生きていくためには、そこが絶妙のバランスでミックスされていることが大事なんじゃないかなって思うんですよね。今回のアルバムを作るときにも、そこのバランスにはすごく気を付けました。
──ああ、それはほんとにそうですね。さじ加減を間違えると、聴き心地はずいぶん変わってくると思います。
私は日々葛藤したり、いろんなことにつまづくことが生きるための原動力になるので、そういう人間臭い部分はどうしても入れたかったところです。
──現実から目を背け、見えないものばかりにすがっているのは相川さんのロック観に反するってことなんでしょうね。それってまさに“夢見る少女じゃいられない”ってことじゃないですか。
あははは(笑)。そうですね。本当の意味での“夢見る少女じゃいられない”。
40歳目前の今の私が考えていくべきこと
──本作が生まれたことで、この先の活動のビジョンが見えたところもありますか?
とりあえず制作が終わったばかりなので、次どうしようっていうのはまだないですね。でも、このアルバムを持っていろんな場所をライブで回るので、そこで自分の中から出てくる歌詞が楽しみではあります。そのときどきの自分の考え方を歌詞や曲にして残しておきたいなって。ここからまた変化していく部分もあるだろうし。
──でも、本作で描かれた思いっていうのはこれからも大きくは変わらない気がしますよね。相川さんのベーシックな部分がしっかり描かれているので。
そうですね、うん。ただ、今回の作品からどういう枝葉が付いていくかはすごく楽しみ。ある意味、つぼみのようなアルバムでもあると思うから、どんな花を咲かせていくのかなって。それが40歳目前の今の私が考えていくべきことなんだろうなって思いますね。
収録曲
- ヒカリノミ
- カレイドスコープ
- Butterfly
- オトヒメ
- 花のように
- 誰かのためになら
- A message
- ことのは
- Hello
- あっというま
相川七瀬 (あいかわななせ)
1995年「夢見る少女じゃいられない」でデビューして以来、現在までのCDトータルセールスは1200万枚を超えている。毎年7月7日には、「七瀬の日」と題したライブをSHIBUYA-AXで8年連続で実施中。また、音楽活動以外にも処女小説「ダリア」を上梓するなど、活躍の幅を多方面に広げている。デビュー15周年となる2010年には、ベストアルバム「ROCK or DIE」をリリース。その翌年には、新プロジェクトとして「Rockstar Steady」というバンドを結成。2012年9月に第3子を出産。2013年2月6日には”相川七瀬”としては、4年ぶりとなるアルバム「今事記」をリリースする。