ナタリー PowerPush - ACIDMAN
熱狂の武道館公演をパッケージ あのライブに込めた思いを今明かす
裏側に圧倒的な悲しさがあるから美しい
──先程、このDVDでは歌ってる表情も捉えるようにしたとおっしゃってましたけど、そこも切羽詰まった感じが映し出されてますね。
オオキ うん、格闘技みたいな感覚というか、一生懸命やってる人の姿が感動を呼ぶと思うんで。楽しくやってる姿は楽しみは与えると思うけど、感動はあまり与えないと思ってて。俺は、人間が必死になってる、死ぬか生きるかその瞬間のきらめきに感動するから。そういうのを追求したいんですよね。もちろん笑っててもいいんだけど、本気を出してる感じは、本当に本気を出さないと画面を通して伝わらないから。俺、スイッチが入ったら入りっぱなしですからね。瞳孔も開いてるし(笑)。まぁ、ハッピーな曲ばっかり作れる人間だったらニコッと笑ってやってたかもしれないけど、自分が作る曲には悲しみが強くあるので、それにどんどん寄り添っていっちゃうんですよね。
──どうして悲しみが強い曲が生まれてくるんでしょうか。
オオキ それはわからないですね(笑)。そっちに感動があるからかな。幸せになりたいんでも、楽しい気分になりたいんでもなくて、心震えたいんですよね。裏側に圧倒的な悲しさがあるから美しいっていうか。夜空と一緒ですよね。暗ければ暗いほど星が明るいでしょ? その明かりに感動しますよね。ウワーって幸せ感よりも、真っ暗闇の恐怖も全部受け止めながら光を目指したい。そういうことを曲を作ってるときに感じたい。
──そう考えると、100%ハッピーな曲にはならないですね。
オオキ そうですね。それは俺にとっても課題ではあるんです。普通のことというか、ハッピーな曲も作りたいなぁといつも思ってるんですけどね。
──でも、「A beautiful greed」からは、みんなを包み込むような懐の深さも感じましたよ。
オオキ そうですよね……そうなると、突き放したくなるんですよね、性格的に(笑)。
──天の邪鬼ですね!(笑) うまくいったから、そっちの道に突き進もうとは思わないんですか?
オオキ ならないですね。「わかりやすいね」って言われたらわかりにくくしたいし、「わかりにくいね」って言われたら、そんなことないよって言っちゃうんですよね。
──そう考えると、ACIDMANの進む道のりは果てしないですね。
オオキ そうですね。飽きないですよ、自分にもバンドにも。
イチゴ 毎日が新鮮です(笑)。
サトマ 挑戦できる機会をもらえてると思うので。
──オオキさんは、もちろん対バン相手やそのほかいろんなものに影響は受けて、こういうスタイルになってるんですよね?
オオキ それはめちゃめちゃありますね。でも俺、CDは1年に1枚買うか買わないかくらいなんですよ。音楽も家でほとんど聴かないので。音楽を聴かないのって、もしかしたら頑固すぎるからかもしれないですね。影響され過ぎちゃうから、無意識的に拒絶してるのかなって。昔はすごく聴いてたんだけど。でも、映画を観たときや本を読んだときの感じは、なんとか音楽にできないかなって思うんですよね……嫉妬するんですよ。うまいこと書いてるなって。そういう音楽を作りたい。
──なるほど。では最後に、今年のACIDMANの動向を教えてもらえますか?
オオキ まだ決まってないんですよ。曲は作ってるんですけど。あと春からはフェスにも出るし。毎年同じだなって(笑)。いいことですけどね。
DISC 1
- 日本武道館ライブ 本篇(19曲)
DISC 2
- 日本武道館ライブ アンコール(4曲)
- ツアードキュメンタリー映像
- 「HUM」ビデオクリップ<完全版>
収録楽曲
- ±0
- world symphony
- Who are you?
- Bright & Right
- FREE STAR
- Colors of the Wind
- スロウレイン
- 星のひとひら
- ファンタジア
- 銀河の街
- ucess (inst.)
- Slow View
- HUM
- I stand free
- Under the rain
- CARVE WITH THE SENSE
- 造花が笑う
- 飛光
- OVER
- 赤橙
- ある証明
- Your Song
- 廻る、巡る、その核へ
ACIDMAN(あしっどまん)
1997年に結成された、オオキノブオ(Vo,G)、サトウマサトシ(B)、ウラヤマイチゴ(Dr)の3人からなるロックバンド。2002年に限定シングル3作(「造花が笑う」「アレグロ」「赤橙」)を連続リリースし、2002年10月にアルバム「創」でメジャーデビュー。2007年7月に初の日本武道館公演を開催し、2009年のアルバム「A beautiful greed」発表後には、2度目の日本武道館単独公演を実施する。生命をテーマにした独特の詞世界、静と動の両面を表現する幅広いサウンド、映像とリンクした演出を盛り込んだライブなどが高い評価を得ている。またオオキはビデオクリップ集「scene of "LIFE"」で、自身の楽曲をモチーフとした18分におよぶ映像作品の監督を務めるなど多角的な活躍をみせている。