ナタリー PowerPush - ACIDMAN
熱狂の武道館公演をパッケージ あのライブに込めた思いを今明かす
俺は不器用だからなんでもドタドタやりたくなる
──確かに、今回のDVDでもシンプルに見せたと思ったら映像を多用してみたり、3ピースでダイナミズムを表現したと思ったら繊細なアコースティックナンバーがあったり。いろんな点で幅広いんですよね。
オオキ そこは意識してるところではある。自分たちで自分たちのカラーを決めちゃうことが、一番作り手としては怖いことで。それをやっちゃうと全部が萎縮しちゃうんですよ。音楽が好きでギターを始めたんだし、曲作りが好きで曲を作ってるんだから、なるべくジャンルを決めないで、やりたいことがあったらやっちゃう。ヒップホップとかはできないから作らないだけで、もし俺がラップがうまかったらやってると思うんです。この3人でできることなら全部やりたいなと思ってるし、まだまだやれてないことがいっぱいある。うちらの音楽は、結局ロックとしてくくられちゃうけど、それはちょっとつまんないなって思ってる。例えば、俺がピアノが弾けたら、クラシック的なこともやってると思うんですよ。歌なんか歌わずに、何十分のクラシックみたいな曲を。自分たちの鳴らしてる音はいつも、ロックではなく音楽として捉えてるので、そこを絶対曲げないように、そして負けないようにしてますね。
──そう考えられるってことは、器用なんですか?
サトマ オオキは器用ですよ。
オオキ でもねぇ、不器用だと思いますよ。器用だったら1つのことをバーッてやって、そっちを貫くんだろうけど、不器用だからドタドタなんでもやりたくなる。人生はあっという間だから、やりたいことをやらなくてどうするんだって考えなんで。これはACIDMANっぽくないから止めちゃおうって思ったら、それで音楽やってる意味がなくなっちゃう。自分からメロディが生まれて興奮しちゃったら、やるしかないじゃないですか。そういう気持ちは失わないように、大事にしてますね。
──武道館のMCでも「今を生きるのが大事」っておっしゃってましたけど、オオキさんの中にそういう意識はずっとあるものなんですか?
オオキ 基本は、昔から感じてることと一緒ですね。わかりやすく伝えるようになったとは思うんですけど。どんな人間においても、どんな生物においても、瞬間を生きることがすべて。過去でも未来でもなく、今にいかに本気で向かい合うかが生きてるってことだと思うので。それを伝えるために詞を書いてるような感じですね。
オオキが怒るのは全部愛だと思ってる
──瞬間を生きてるって日々感じてます?
オオキ それはありますね。壮絶なリハをいつも繰り返してるんで(笑)。
サトマ・イチゴ んふふふふ(笑)。
オオキ 見て引かない人はいないくらいの。残酷なシーンを見ている気分にさせてしまうような。
──残酷って結構過激な言葉ですけど!?
オオキ イチゴくんに対して怒ったりしますからね。
イチゴ 全部愛だと思ってますけどね。はっはっはっは(笑)。自分も低俗な人間なんで、言われたらくやしいとか、なんでだよとかいう感情がないわけじゃないですよ。だけどそこで冷静になって考えたときに、オオキがそういうことを言うのはバンドのため、俺のためを思ってだし、実際怒るのってすごくエネルギーがいるわけだし。最近は怒られてるっていうよりは、俺のためにそこまでしてくれてるって思うようになりましたね。前は「俺ばっかり!」って思ってたけど。
オオキ 俺も、泣きながら殴ったりしますもん。
──サトマさんは、その間でどうなってるんですか?
サトマ イチゴに対して助けてあげられることはなくて。自分で乗り越えてもらわなきゃいけないことだから……がんばれって気持ちで(笑)。どっちの気持ちも俺はわかるから。バンドのことなのでやんなきゃいけないし。
ライブで煽ることも重要なこと
──ACIDMANが瞬間の爆発力をオーディエンスにわかりやすく伝えられるようになった要因って、サトマさんのパフォーマンスが激しくなったところにもあると思います。
サトマ まぁ、やらなきゃいけない自分の仕事だなっていう認識はあるんですけど。空間全体を持ち上げて、よりいい歌をうたってほしいと思ってるんですよ、いつも。あの場では、オオキがいい歌を歌うことが、何よりもいいことだと思うので。お客さんが「わぁっ」てなったらオオキも力が入ったりもするし、陶酔もできるし。そのために俺ができることは煽ることで、それもあの場では重要なことかなって。
──その役割を見つけたキッカケはあったんですか?
サトマ 最初はオオキに、動けるのが俺だけだから、盛り上げ役とかをやんなよって言われたんですよね。でも俺は、引っ込み思案なんで(苦笑)。しばらくやんなかったの。
オオキ 俺のスタイルじゃないって言ってね(笑)。寡黙に弾くのが好きだったみたいで。
サトマ ずっと固辞してたんだけど、あるときふと一歩踏み出せたライブがあって。
オオキ だんだん今みたいな形になったというよりは、その日から急に変わったんですよ。
サトマ よく覚えてる。初めてMUSIC ON! TVの「GG」ってイベントに出たときですね。終わった後の打ち上げで「弾けてねぇじゃん!」って言われたのまで覚えてるんですよ(笑)。でも、全然気にしなかったですね。「だよねぇ」みたいな(笑)。そこからはどんどん、戻れないというか、加速するだけで(笑)。
オオキ 絵が浮かんでたんですよ、ずっと。サトマが動いたらいいなって思ってて、2年くらい言い続けたの。でもこの人、超頑固だから(笑)。ライブビデオとか見せて、こっち側行ったら絵が広くなるじゃんって言っても、いや俺は……って返されてて。それでも……。
サトマ 言い続けてくれたんですよ。
──オオキさん、イチゴさんにもサトマさんにも、言い続ける役割なんですね。
オオキ そうですね(笑)。俺は決して諦めないんで。
DISC 1
- 日本武道館ライブ 本篇(19曲)
DISC 2
- 日本武道館ライブ アンコール(4曲)
- ツアードキュメンタリー映像
- 「HUM」ビデオクリップ<完全版>
収録楽曲
- ±0
- world symphony
- Who are you?
- Bright & Right
- FREE STAR
- Colors of the Wind
- スロウレイン
- 星のひとひら
- ファンタジア
- 銀河の街
- ucess (inst.)
- Slow View
- HUM
- I stand free
- Under the rain
- CARVE WITH THE SENSE
- 造花が笑う
- 飛光
- OVER
- 赤橙
- ある証明
- Your Song
- 廻る、巡る、その核へ
ACIDMAN(あしっどまん)
1997年に結成された、オオキノブオ(Vo,G)、サトウマサトシ(B)、ウラヤマイチゴ(Dr)の3人からなるロックバンド。2002年に限定シングル3作(「造花が笑う」「アレグロ」「赤橙」)を連続リリースし、2002年10月にアルバム「創」でメジャーデビュー。2007年7月に初の日本武道館公演を開催し、2009年のアルバム「A beautiful greed」発表後には、2度目の日本武道館単独公演を実施する。生命をテーマにした独特の詞世界、静と動の両面を表現する幅広いサウンド、映像とリンクした演出を盛り込んだライブなどが高い評価を得ている。またオオキはビデオクリップ集「scene of "LIFE"」で、自身の楽曲をモチーフとした18分におよぶ映像作品の監督を務めるなど多角的な活躍をみせている。