ナタリー PowerPush - ACIDMAN
熱狂の武道館公演をパッケージ あのライブに込めた思いを今明かす
一番しっくりくるのはイチゴくんが喋ること
──役割分担が年々はっきりしてきてますよね。DVDにも収録されている、イチゴさんのMCにしても。
イチゴ ツアーのドキュメンタリー映像のほうには、ほんと食傷気味になるくらい僕が出てくるんで。
サトマ イチゴが苦手な人はやめたほうがいい(笑)。
オオキ ライブの説得力も、ゼロどころかマイナスになります(笑)。
イチゴ そうそうそう(笑)。まぁヒドいですよ。俺に酔う(苦笑)。
──そういうのを企画するのはオオキさん?
オオキ そうです。プロデュースは全部僕です(笑)。カッコつけるのって簡単なんですよ。でも、DVDにライブだけ収めたり、オフショットもいいシーンだけとかって、なんか嘘ついてるような気になっちゃって。本当に自分たちの裏側も見せたかったんだけど、最近はそれが過剰になり過ぎてて(笑)、イチゴくんが想像以上に面白い人になっちゃってて、今はそれに追いつくのにせいいっぱい(笑)。
イチゴ そうそうそう(苦笑)。困ってるんですよ。映像のほうが先に行っちゃってるから。普段の俺なんか、全然面白くないですよ!
オオキ 素をさらけ出そうという意味のドキュメンタリーが、お笑いとして一流の作品になっていて(笑)。
──ユルいMCから緊迫感ある演奏への流れは、徐々にスムーズになってきてる気がしましたが。
サトマ いや、できてないときもありますよ(笑)。
イチゴ かなり強引でございますね(苦笑)。しかもこれ、武道館だけだし。ツアーでいろんなところを廻ってますから。まぁ酷ですよ! あんなMCの後に歌わせるのは(苦笑)。
──でも、MCなしでライブをやる方向には行かないですよね。
オオキ そうですね。それも経験ですね。いろいろやってきて、何が一番しっくりくるかっていったら、イチゴくんが喋ることだと俺の中ではイメージができて。せっかく面白い顔面をお持ちなので(笑)、だったら面白いことを言ってみなって。そうしたら、ことのほかポテンシャルが高くて、今では名物にもなって。
イチゴ いじられるほうに行っちゃってるんですけど、自分から面白いことを言うスキルは低くてですね(苦笑)。そっちを伸ばしていかないと、バランスが相当悪いものになってる。
──イチゴさん、リハではドラムを指摘され、MCで求められるレベルは上がり、考えなきゃいけないことがいっぱいですね。
イチゴ そうなんですよ! ふとした時に、面白いことを思いついたら携帯にメモったりとかしてるしね。でも、思いのほかウケないっていう(笑)。あれー!? って。
──でも、それも多角的なACIDMANの重要な一部であるという。
オオキ そうですね(笑)。
曲を煮詰めるときは苦しくて苦しくてしょうがない
──ACIDMANって常にギリギリ感があるんですよね。曲からは理知的なイメージも受けるし、演奏力もついてきてるのに、ライブになるとハラハラするエモーションがある。
オオキ やっぱり、満足したいんですよね、自分の中で。だから全部やりたいし。俺は、曲の核に対してなるべく全員が100個くらいアイデアを出して、そのアイデアの中で3人が納得する1個を探したいっていう性格なんですよ。曲は感覚的に作るけど、そこから煮詰めたり詞を書いたりするときは、本当に理知的に作るし。最大公約数じゃなくて、絶対が欲しいから。そういうふうに曲作りやリハーサルを進めるので、疲れるバンドではあるんですけど(苦笑)。でもそれだからこそ、独特な感じを出せてるから。常に攻めの姿勢をなくさないようにしてますね。
──疲れることも楽しかったりする?
オオキ いや、俺は、楽しくもなんともないですね。苦しくて苦しくてしょうがない。作った瞬間は楽しいし、全部できあがって録る瞬間も楽しいけど、だけどその間はものすごく嫌ですね。
──でもやるんですね。
オオキ そうですね。いいものができたから。そして、いいレコーディングがしたいから。その間は何がなんでも耐えるっていうか、甘えたくないんで。俺、いろんなバンドと知り合ってるけど、楽しくてたまらないって曲を作ってるバンドは1つもいないですね。もし言ってるとしたら、インタビューで嘘ついてるんだと思います(笑)。だって、何万人の前でライブをやって、最高に気持ちいいことやれてるってことは、それと同じくらい裏側があるんですよ。世の中、プラスマイナスはゼロだから。
──でも、楽しさだけを見せようとしてるバンドはいるのでは?
オオキ そうかもしれない。でも、俺たちは全部言っちゃう(笑)。言わなきゃいいのにって言われるんだけど。そのへんが不器用なんでしょうね。全部見せないと、嘘ついてる気分になっちゃうんで。
DISC 1
- 日本武道館ライブ 本篇(19曲)
DISC 2
- 日本武道館ライブ アンコール(4曲)
- ツアードキュメンタリー映像
- 「HUM」ビデオクリップ<完全版>
収録楽曲
- ±0
- world symphony
- Who are you?
- Bright & Right
- FREE STAR
- Colors of the Wind
- スロウレイン
- 星のひとひら
- ファンタジア
- 銀河の街
- ucess (inst.)
- Slow View
- HUM
- I stand free
- Under the rain
- CARVE WITH THE SENSE
- 造花が笑う
- 飛光
- OVER
- 赤橙
- ある証明
- Your Song
- 廻る、巡る、その核へ
ACIDMAN(あしっどまん)
1997年に結成された、オオキノブオ(Vo,G)、サトウマサトシ(B)、ウラヤマイチゴ(Dr)の3人からなるロックバンド。2002年に限定シングル3作(「造花が笑う」「アレグロ」「赤橙」)を連続リリースし、2002年10月にアルバム「創」でメジャーデビュー。2007年7月に初の日本武道館公演を開催し、2009年のアルバム「A beautiful greed」発表後には、2度目の日本武道館単独公演を実施する。生命をテーマにした独特の詞世界、静と動の両面を表現する幅広いサウンド、映像とリンクした演出を盛り込んだライブなどが高い評価を得ている。またオオキはビデオクリップ集「scene of "LIFE"」で、自身の楽曲をモチーフとした18分におよぶ映像作品の監督を務めるなど多角的な活躍をみせている。