コミックナタリー PowerPush - 映画「TOKYO TRIBE」

映画化記念!園子温×井上三太「TOKYO TRIBE」大放談

ファッション誌「Boon」で1997年から2005年まで連載されていた井上三太のマンガ「TOKYO TRIBE 2」が、「愛のむきだし」「冷たい熱帯魚」などで知られる映画監督・園子温の手によって実写映画化された。主人公・海を演じるYOUNG DAISをはじめ、漢、D.O.、ANARCHY、KOHH、SIMONなど本物のラッパーが多数出演するラップミュージカルに仕上げられている。

この前代未聞の作品について、監督の園と井上の2人にじっくりと語ってもらった。

取材・文/宮崎敬太 インタビュー撮影/淵上龍一

 
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「TOKYO TRIBE 2」が実写映画化された経緯

──1997年から2005年まで連載されていた「TOKYO TRIBE 2」を、なぜこのタイミングで実写映画化したんですか?

園子温と井上三太。

井上三太(以下、井上) 「TOKYO TRIBE 2」の実写映画化って話は、実はもう10年くらい前からあって。今回プロデューサーを務めてくれた日活の千葉善紀さんが、僕の「隣人13号」というマンガを2005年に実写映画化してくれているんです。そのときから「『TOKYO TRIBE』もやりたいね」って話してたんだけど、なかなかやれる監督さんが見つからなくて10年くらい経っちゃったという。

園子温(以下、園) で、千葉プロデューサーがなぜか僕のところに持ってきて。酒の勢いで快諾しました(笑)。

井上 園監督のお名前が浮上してからは、トントン拍子で話が進んで。

 とはいえ、やっぱり不安でしたよ、マンガを実写化するのは。当たり前だけど原作の時点で物語は完成しているわけじゃないですか。

井上 僕は最初から映画化に何も口出ししないつもりでしたよ。

 いやいや。原作者が許しても、原作のファンが許してくれないんですよ(笑)。

──しかも原作は12巻もある大作です。

 そうなんだよね。原作を忠実に映像化しようとして、12巻の話を1時間40分の中にぶち込むなんてのはあり得ない。だからまず原作のどこをどうチョイスするかという話になって。それで僕はストリートカルチャーの要素、というかヒップホップをデカく取り扱おうと思ったんです。

井上 実はそれを聞いて、ちょっと不安になったんですよ。というのも、日本映画はこれまでストリートカルチャーやラッパーをちゃんと描けたことがないんですよ。少なくとも僕自身は観たことがない。しかも全編ラップミュージカルになるって話も漏れ聞こえてきて(笑)。

主人公・海を演じるYOUNG DAIS。

 あははは。「セリフを全部ラップにしてしまおう」「本物のラッパーを出しちゃおう」というアイデアは、この映画の芯となるヒップホップ感をどうやって表現しようかと考えた中から出てきたもので。これを思いついて、逆に僕は不安がなくなってきたんです。

井上 今回出演してくれたYOUNG DAISはもちろん、ANARCHY、漢、D.O.、YOUNG HUSTLE、SIMON、KOHH……、彼らにも映画に出るにあたっていろいろな考えがあったと思う。みんなそれぞれのスタンスでラッパーとしてのキャリアを積み重ねてきたわけで。でも結果的には大成功。本物のラッパーと園ワールドの間でかなり危ういケミストリーが起こったんです。

圧勝するための方法論

──監督はもともとヒップホップがお好きだったんですか?

映画「TOKYO TRIBE」より。

 Run D.M.C.やBeastie Boysは知ってたけど、その程度だよ。だからヒップホップの知識なんてないに等しい。

──監督は自身の作品にラッパーを出演させるという部分で意識したことはありますか?

 「距離があるときは、距離に従え」ってことかな。これは僕の座右の銘みたいなもので。

井上 へえ、どういう意味ですか?

 「ゴッドファーザー」って有名なマフィア映画があるじゃないですか。でも実は、フランシス・フォード・コッポラはマフィアが大嫌いだったんですよ。だからお母さんに「マフィアの映画を撮らなきゃいけなくなっちゃった。どうしよう……」って相談したんです。当時のコッポラはお金のない貧乏監督だったから。そしたら「あんた、お金ないんだから、四の五の言わずに撮りなさい」と一喝されて(笑)。

井上 監督も「TOKYO TRIBE」の実写化をあきらめかけたとき、奥さんに一喝されたんですよね(笑)。

 そう(笑)。で、一喝されたコッポラは大嫌いなマフィアのどうしようもない姿をそのまま描くと同時に、自分が大好きな家族愛の要素も入れ込んだ。そしたら、どうしようもなくカッコいい映画になったんです。リスペクトマフィア映画がダサいのは、監督も役者も感情移入しすぎちゃってるからなんだよ。距離があるなら、その距離のままで撮ったほうがいいなっていう。

──なるほど。監督の距離感でラッパーたちと接したと。

井上三太

井上 そういえば、今回ラッパーのキャスティングはすごくヒップホップ愛のある若い子が担当してくれたんですけど、その子と監督が1回現場で揉めたことがあって。「監督、ヒップホップの知識あるんですか? ストリートのことわかってるんですか?」って。

──へえ。

井上 監督は「うるせえ! 俺がストリートなんだ!」と怒鳴って、その子を納得させちゃったんです。つまり「ヒップホップのこと、知ってるか?」とかそういうことじゃないんですよね。例えば、日本のラッパーがニューヨークやLAの最新ヒップホップトレンドを時差なくキャッチして日本でやったとしても、それはただの真似。オリジナルではないですよね。監督がオリジナルであり続けたからこそ、その子をその一言で納得させることができたんじゃないかな。僕は「I am Hiphop」と言ったKrs-Oneと同じだ、と勝手に感銘を受けてました(笑)。

 似たような話だけど、よく日本映画って「ハリウッドに負けない映画」っていうじゃない? “負けない”とか言ってる時点で負けてるんですよ。そうじゃなくて180°違うベクトルのところから圧勝しないと。それこそがオリジナルじゃん。本物のラッパーに出演してもらったのも、ラップミュージカルという手法についても、その圧勝地点を探した結果なんだよね。

井上 ヒップホップとはそういうことですよ。

映画「TOKYO TRIBE」8月30日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー!

映画「TOKYO TRIBE」

近い未来の“トーキョー”には様々なトライブ(族)が存在し、そこに住む若者たちは、街を暴力で支配しながらお互いの縄張りを守っていた。トライブ間の暴動・乱闘は日々繰り広げられるも、互いの力関係は拮抗し絶妙なバランスで保たれていた。しかし、ある事件をきっかけに、その均衡はもろくも崩れ去る。
ブクロは、ブッバとその息子ンコイ、さらにブクロWU-RONZのボスであるメラが、政治家をも丸めこんで街を牛耳り、勢力を拡大しつつあった。そんなある日、メラはトライブの中でも異常なまでの敵対心を向けるムサシノSARUのメンバーであるキムをおびき寄せ、罠を仕掛けた。キムを助けるため、ムサシノSARUのリーダーであるテラ、ハシーム、そして海は、最危険区であるブクロに乗り込みWU-RONZを率いるメラと対峙する。そしてそこには、キムともうひとり、謎の女・スンミが囚われていた。
メラが海を敵視するワケとは?謎の女・スンミとはいったい何者?さらに、ブッバ一家が崇める大司祭とは……?
メラが、ムサシノSARUに仕掛けた戦争はトーキョー中に派生する。トーキョー全土を巻き込んだ想像を絶する一大バトルが、今夜はじまろうとしていた。

累計250万部超、90年代のストリートカルチャーを牽引した井上三太による伝説的コミック「TOKYO TRIBE2」が遂に実写映画化!鬼才・園子温のエッセンスが加わり、新たなる”TT”伝説がこの夏、幕を開ける!

井上三太(イノウエサンタ)
井上三太

1989年、「まぁだぁ」でヤングサンデー新人賞を受賞しデビュー。1993年にJICC出版局より出版された「TOKYO TRIBE」から始まるTTシリーズは自身のライフワークになっており、代表作「TOKYO TRIBE2」は香港・台湾・アメリカ・フランス・スペイン・イタリアでも出版されている。1994年からコミックスコラ(スコラ)にて連載されたサイコホラー「隣人13号」は同誌の休刊により連載が中断されるが、その後も自身のWEBサイトで続きを発表し1999年には幻冬舎から単行本化。2005年には小栗旬・中村獅童のW主演による実写映画が製作され、劇場公開された。また2002年に、自身のフラッグシップストアSANTASTIC!を渋谷にオープンするなど幅広く活躍している。

園子温(ソノシオン)
園子温

愛知県出身。1987年「男の花道」でPFFグランプリを受賞。PFFスカラシップ作品「自転車吐息」はベルリン国際映画祭正式招待のほか、30を超える映画祭で上映された。北米最大のトロント映画祭にて、2012年に「希望の国」がNETPAC審査委員賞、2013年に「地獄でなぜ悪い」がミッドナイト・マッドネス部門で観客賞を獲得。「TOKYO TRIBE」も同映画祭のミッドナイト・マッドネス部門に出品中で、3年連続の受賞が期待されている。そのほか代表作に「愛のむきだし」「冷たい熱帯魚」「恋の罪」「ヒミズ」などがあり、いま最も新作が期待されている日本を代表する鬼才監督。