コミックナタリー PowerPush - 映画「TOKYO TRIBE」
映画化記念!園子温×井上三太「TOKYO TRIBE」大放談
「TOKYO TRIBE 2」の世界観を実写化するための装置
──巨大なオープンセットも映画「TOKYO TRIBE」の見所です。
園 昨今映画化されるマンガってドラマみたいな青春ものが多いんだけど、それと「TOKYO TRIBE 2」の違うところは、兜冠って戦車に乗ってるようなやつが出てきちゃうところだと思うんだよ。すごくマンガっぽいというか。
──たしかに原作はSFとサブカルチャーが融合した奇想天外な舞台設定ですよね。
園 あのヤバい世界観を再現したかったんだけど、そうすると今の新宿や渋谷の実景ではものすごい違和感が出てしまう。というか、画にならない。だからオープンセットを建てちゃえって。
──卯城竜太(Chim↑Pom)による美学校現代美術演習から派生したアート集団・天才ハイスクール!!!!が手がけたグラフィティも相俟って、すごく謎な空間ですよね。
園 うん。あのグラフィティ、すごい気に入ってる。要はさ、原作の世界観を実写化したとき、違和感ゼロの不思議空間を作りたかったんですよ。そういう装置を。彼らのグラフィティをいわゆるヒップホップ的なやつじゃなくて、あえて無国籍風のものにしてもらったのも、その辺を狙っていて。
井上 でも、あの映画の世界の中には生活が感じられるんですよね。僕が「TOKYO TRIBE 2」で描きたかったのは、東京の街の生活そのものだったんです。面白い絵を描く人もいれば、面白い音楽を作る人も、映画を作る人もいるっていう。あのセットの中にも、そういうものが感じられたので、そこはすごくうれしかったな。
しっかりとイカせてくれる映画
園 これはホットなニュースなんですけど、つい最近LAに住んでる北村(昭博)という男から連絡があったんですよ。北村は「ムカデ人間」という映画にも出てて、「TOKYO TRIBE」ではサガタウン店長役をやってもらった人。そいつが「さっきクラブで黒人たちが『TOKYO TRIBE』の話してたんですよ」ってLINEで教えてくれたんです。
井上 マジすか(笑)。
園 何かと思って北村が聞きに行ったら、「『TOKYO TRIBE』って映画が日本にあって、どうやらラップミュージカルらしいんだ。俺たちLAにいる黒人じゃなくて、ジャパニーズにやられちまった! 悔しいよ」って。僕はそれを聞いて「イエイ!」ですよ。
井上 それ、ヤバいですね。とがってるだけで面白くない映画はいっぱいあるけど、この「TOKYO TRIBE」はとがってて、さらに面白いんです。クリ派でも中派でもイカせちゃうっていうか。その両方同時にイカせるっていうのはね、本当に至難の技だと思うんですよね。
園 全然意味わかんない(笑)。
──先鋭的な手法にこだわるだけでなく、商業映画としての面白さも同時に担保されている、と。
井上 そういうこと!!
園 僕はこの映画でヒップホップエナジーってものをいただいて若返りましたよ。今年12月に53歳になるんだけど、10歳くらい若返ったかな。チンポも勃ちがよくなってきた。
近い未来の“トーキョー”には様々なトライブ(族)が存在し、そこに住む若者たちは、街を暴力で支配しながらお互いの縄張りを守っていた。トライブ間の暴動・乱闘は日々繰り広げられるも、互いの力関係は拮抗し絶妙なバランスで保たれていた。しかし、ある事件をきっかけに、その均衡はもろくも崩れ去る。
ブクロは、ブッバとその息子ンコイ、さらにブクロWU-RONZのボスであるメラが、政治家をも丸めこんで街を牛耳り、勢力を拡大しつつあった。そんなある日、メラはトライブの中でも異常なまでの敵対心を向けるムサシノSARUのメンバーであるキムをおびき寄せ、罠を仕掛けた。キムを助けるため、ムサシノSARUのリーダーであるテラ、ハシーム、そして海は、最危険区であるブクロに乗り込みWU-RONZを率いるメラと対峙する。そしてそこには、キムともうひとり、謎の女・スンミが囚われていた。
メラが海を敵視するワケとは?謎の女・スンミとはいったい何者?さらに、ブッバ一家が崇める大司祭とは……?
メラが、ムサシノSARUに仕掛けた戦争はトーキョー中に派生する。トーキョー全土を巻き込んだ想像を絶する一大バトルが、今夜はじまろうとしていた。
累計250万部超、90年代のストリートカルチャーを牽引した井上三太による伝説的コミック「TOKYO TRIBE2」が遂に実写映画化!鬼才・園子温のエッセンスが加わり、新たなる”TT”伝説がこの夏、幕を開ける!
井上三太(イノウエサンタ)
1989年、「まぁだぁ」でヤングサンデー新人賞を受賞しデビュー。1993年にJICC出版局より出版された「TOKYO TRIBE」から始まるTTシリーズは自身のライフワークになっており、代表作「TOKYO TRIBE2」は香港・台湾・アメリカ・フランス・スペイン・イタリアでも出版されている。1994年からコミックスコラ(スコラ)にて連載されたサイコホラー「隣人13号」は同誌の休刊により連載が中断されるが、その後も自身のWEBサイトで続きを発表し1999年には幻冬舎から単行本化。2005年には小栗旬・中村獅童のW主演による実写映画が製作され、劇場公開された。また2002年に、自身のフラッグシップストアSANTASTIC!を渋谷にオープンするなど幅広く活躍している。
園子温(ソノシオン)
愛知県出身。1987年「男の花道」でPFFグランプリを受賞。PFFスカラシップ作品「自転車吐息」はベルリン国際映画祭正式招待のほか、30を超える映画祭で上映された。北米最大のトロント映画祭にて、2012年に「希望の国」がNETPAC審査委員賞、2013年に「地獄でなぜ悪い」がミッドナイト・マッドネス部門で観客賞を獲得。「TOKYO TRIBE」も同映画祭のミッドナイト・マッドネス部門に出品中で、3年連続の受賞が期待されている。そのほか代表作に「愛のむきだし」「冷たい熱帯魚」「恋の罪」「ヒミズ」などがあり、いま最も新作が期待されている日本を代表する鬼才監督。