コミックナタリー Power Push - 週刊少年サンデー

「ハガレン」の荒川弘、新作は学園青春もの! サンデーの血脈を見せつける、春の新連載攻勢

世の中を鏡のように映す誌面でありたい

──いま「サンデーという舞台」とおっしゃいましたが、縄田さんは2009年に編集長になられて、このサンデーという舞台をどのようなものにしたいと考えられてきたのでしょうか。

ひとことで言うのは難しいんですが……、サンデーと聞いて、いまでも「タッチ」や「うる星やつら」を思い浮かべる人は多いですよね、もう20何年も前の作品なのに。これらがどうしてサンデーらしさとしていまでも語られているかといえば、その頃サンデーが時代にピタッとハマっていたからだと僕は考えているんです。

──確かに熱血からラブコメへと、世の中のムードがどどっと傾いた動きにシンクロしていました。

ええ、だから非常に好調だった時代のサンデーって何だったんだろうと考えると、今より世の中をしっかり見ていたのかなと。週刊誌って本来、世の中を映す鏡のようなものだと思いますし。

──少年マンガ誌のことも週刊誌と捉えているんですか。週刊ポストや週刊文春みたいなものばかりじゃなく。

毎週出るものならではのスピード感、時代の空気をもっとも反映するという点では同じだと思っています。だから月刊誌とはマンガの作り方も違うし、週刊ならではのマンガというのがあると思う。今回の新連載攻勢でいちばん目指したのはそこですね。

「これで行くぞ」と見極めるのが編集長の仕事

AKB48

──AKB48の5号連続付録も、そういう考えの一環ということでしょうか。

そうです。売れてるAKBに乗っかっちゃえ、と見えるかもしれませんが、サンデーの誌面は時流に敏感でいよう、ということなんです。マンガ誌なんだからグラビアポスター要らないよ、という声も一部にはあるのですが、それより、サンデーにはいま世間で熱いことが載ってるね、というほうが大事なのではないかと。

──確かに70年代の昆虫ブームや80年代のバンドブームのとき、サンデーの誌面にはそれらがたびたび登場していたと聞いたことがあります。

グラビアだけじゃなくて、マンガだってそうだったんです。作家さんにも世の中を見抜いて作品に反映させる、洞察力があったんじゃないかと。世の中がどうなっているかってとこをちゃんと取り入れていけば、読者は自然と興味が湧いて手に取ってくれると思っています。

──それはつまり、サンデーらしさみたいなものより、いまの時流に合わせるほうを優先させるということですか?

いや、サンデーって50年の歴史がある雑誌ですから、DNAみたいなものは変わらないんですよ。例えば僕がいきなりジャンプみたいな雑誌にしようとしても、それは無理。だけど天才的な作家が現れて、時流にぴったり合った、しかも今までのサンデーにはなかった作品を出してくれることがあるんです。そういうときが来れば、誌面は変わっていくと思います。

──いま何か、次の核になるようなものの匂いって感じていますか?

「少年サンデー1983」

いや、正直これからですね。自分としてはまだ世の中を見ながら、サンデーという土壌の上に種を撒いている段階です。そして、これだというものが現れたときは、一気呵成に……。

──のろしを上げるんですね。

そう、世の中に「これがサンデーですよ!」と言いたい。時代にピタッとハマる作品が現れたときに、「これだ!これで行くぞ!」と目利きするのが編集長の仕事ですから。あだち充先生や高橋留美子先生が出てきた頃ってそうだったと思うんですよ。でも、もうそれから20何年たっていますから、さすがにそんな長い間4番バッターを打ち続けていただくわけにもいかない。新人でもベテランでもいいから、もういいかげん、次の4番を作らなきゃいけない頃だと思ってます。サンデーがジャンプ・マガジンに後塵を拝している理由はその辺だと思う。

週刊少年サンデー vol.19 / 2011年4月6日発売 / 小学館 / 特別定価270円

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連載ラインナップ

新井隆広「ARAGO」/渡瀬悠宇「アラタカンガタリ~革神語~」/険持ちよ「怪体真書Ø」/若木民喜「神のみぞ知るセカイ」/高橋留美子「境界のRINNE」/佐々木健「KING GOLF」/ひらかわあや「國崎出雲の事情」/田辺イエロウ「結界師」/藤田和日郎「月光条例」/西森博之「鋼鉄の華っ柱」/寒川一之「最後は?ストレート!!」/入江謙三取材・原作 橋口たかし作画「最上の明医~ザ・キング・オブ・ニート~」/松江名俊「史上最強の弟子ケンイチ」/福田宏「常住戦陣!! ムシブギョー」/椎名高志「絶対可憐チルドレン」/小林裕和「戦国八咫烏」/尹仁完原作 梁慶一作画「DEFENSE DEVIL」/藤木俊「はじめてのあく」/畑健二郎「ハヤテのごとく!」/田中モトユキ「BE BLUES!~青になれ~」/楠出尽シナリオ 田村光久作画「ポケットモンスターRéBURST」/大高忍「マギ」/青山剛昌「名探偵コナン」/あらいきよこ「ランウェイを☆プロデュース!!」/満田拓也「BUYUDEN[武勇伝]」/鹿賀ミツル原作・構成 加藤広史作画「おすもじっ! 司の一貫」/荒川弘「銀の匙 Silver Spoon」