コミックナタリー PowerPush - TVアニメ「ピンポン」
ノイタミナで放送スタート!松本大洋×湯浅監督のラリー対談
松本大洋の卓球スポ根マンガ「ピンポン」が、「マインド・ゲーム」「四畳半神話大系」などで知られる湯浅政明の手によってアニメ化され、いよいよ本日4月10日よりフジテレビ「ノイタミナ」ほかにて放送をスタートする。
コミックナタリーでは放送に先駆けて、松本大洋と湯浅監督の対談を敢行。松本の「ピンポン」に対する思いから、湯浅監督がどういった手法でアニメ化していくのかまでを聞いた。
取材/藤津亮太 文/坂本恵 撮影/若木信吾
卓球は動きを描写したくなる
──まず松本さんに「ピンポン」を描いたきっかけからお伺いできればと。
松本 当時の担当だった堀さん(現ビッグコミックオリジナル編集長)がスポーツ馬鹿だったんです(笑)。「ZERO」を描いたのも「ボクシングやってくれ」って言われたからだし、「花男」も「野球やろうか」って言われたからだし。もちろん僕もスポーツ選手を描くの好きなので。ユニフォームとか、スパイクとか、背番号とか。
──実際に運動はされていたんですか?
松本 ずっとサッカーをやってました。小学校2年から高3くらいまで。弱かったですけどね。でも高校のときはキャプテンやってました。
湯浅 サッカーマンガとかは描かないんですか?
松本 そう実は最初「ピンポン」の前の案で出てたんですよ。プロットまで進めてたんです。ただサッカーマンガって、1試合やるのに22人必要になってくるんですよね。4人くらいキャラクター立ててあとは捨てるっていうのもちょっと無理だし……。それが20巻、30巻と行くならできるんだろうけど、僕の連載って多分長くならないので。それで、やっぱり個人競技がいいと話して急遽サッカーマンガはやめたんです。
──個人競技というところで、なぜ卓球だったんでしょう。
松本 当時、結構いろんなスポーツを見たんですよ。例えば剣道とかね。それで卓球を見たときに「かっこいい!」と思ったんです。動きが描写したくなる感じだった。あとほとんどの人が知ってるスポーツなのに、それぞれの戦型があるとか、選手みんなラバーに細かかったりすることとか、知らないことが結構あるというのも、ちょっと面白いなと思ったんですよね。
監督自ら、全話の絵コンテを執筆
──湯浅監督は「ピンポン」アニメ化の依頼が来たとき、どう思われましたか?
湯浅 僕は最初、基本的に松本さんの作品はやりたくないと言ってたんですね。
──えっ、それはなぜ?
湯浅 作品自体がよく出来てるんで。それをわざわざアニメにする理由がよくわからないというか。「ピンポン」も、この松本さんの絵を描けって言われたら、ちょっと無理な感じがしてたんですよね。でも好きな作品をやれるなら、それは一番いいことだなと思って。やっぱり当時からものすごく大好きな作品でしたし。……いやあでも、思った以上に大変でしたよ(笑)。
──それは例えば、どういう部分でしょうか。
湯浅 卓球って動くのが速いんです。あんまり考えている時間がなくて、どんどん動いていかなくちゃいけないので。また原作を読み込んでいくと、こっちに回転かけてこっちに曲がってるとか、ちゃんと描いてあるんですよね。読み返すといろんな発見がありますよ。そういった発見は絵コンテにどんどん盛り込んでいってます。今回は僕が全話描いてますので。
──今回は脚本がなく、監督が自らコンテを描いているということなんですが、それは監督なりの決意だったんでしょうか。
湯浅 一度やってみたいというのはあったんですけどね。「ピンポン」はニュアンスが難しいので、自分が思うような感じのものを説明してやってもらうよりは、自分で描いちゃったほうが早いんじゃないかなって思ったんです。思ったのはいいんですけど、やってみると1人の力って限界があるんだなとは思いましたが(笑)。あと原作の絵がしっかりあるんで、自分の中でイメージが固まっているというか、それをそのままダイレクトにコンテにしたほうがいいなというのもありました。
松本 コンテ拝見しましたけど、面白かったです。本当はアニメになるまであんまり見たくないんですけど。すごくしっかり描くんだなと思ったんです。マンガのネームより絵がきっちりしてますよね。
湯浅 人に見せて絵を描いてもらわないといけないですからね。僕はあんまりちゃんと描くほうじゃないですけど。マンガのコマにある部分だったら、適当に描いて「原作の何巻何ページ見といて」みたいな感じですよ(笑)。
松本 いやでも、このコンテは面白いからみんなが見られるようにしたほうがいいですよ。
湯浅 Blu-ray&DVDの特典に入る予定ではあるんですが、どうなんでしょう!
4月10日より毎週木曜24:50~
フジテレビ「ノイタミナ」ほかにて放送スタート!
フジテレビ 初回のみ25:00~
そのほかの放送局・時間については公式サイトへ
キャスト
- ペコ/星野裕:片山福十郎
- スマイル/月本誠:内山昂輝
- ドラゴン/風間竜一:咲野俊介
- アクマ/佐久間学:木村昴
- チャイナ/孔文革(コン・ウエンガ):文曄星
- オババ:野沢雅子
- 小泉丈:屋良有作 ほか
スタッフ
- 原作:松本大洋(小学館 ビッグスピリッツコミックス刊)
- 監督:湯浅政明
- キャラクターデザイン:伊東伸高
- 音楽:牛尾憲輔
- 色彩設計:辻田邦夫
- 美術監督:Aymeric Kevin
- 撮影監督:中村俊介
- 編集:木村佳史子
- 音響監督:木村絵理子
- 制作:タツノコプロ
- オープニング・テーマ:爆弾ジョニー「唯一人」 (キューンミュージック)
- エンディング・テーマ:メレンゲ「僕らについて」(キューンミュージック)
特集・HEROES ヒーローを待ちながら
巻頭20Pで「ピンポン」特集を敢行。表紙&特別付録のオリジナルステッカーは、松本大洋描き下ろしのペコ&スマイル! 特集には松本大洋+湯浅政明監督の対談別バージョンをはじめ、アニメ版の詳細メイキング8ページ、ピンポン名言集を収録。またアニメ版音楽を担当した牛尾憲輔と、かつて実写版で主題歌を担当した元スーパーカーの中村弘二の対談など盛りだくさんの内容だ。
なおSWITCHオンラインストアで購入すると、表紙と同じ描き下ろしのポスターが付く。
松本大洋(まつもとたいよう)
1967年東京都出身。1987年に月刊アフタヌーンの四季賞にて「STRAIGHT」が入選しデビュー。代表作に「鉄コン筋クリート」「ピンポン」「ナンバーファイブ」や、友人の永福一成に原作を依頼した「竹光侍」(第15回手塚治虫文化賞マンガ大賞)などを持つ。2010年12月より、月刊IKKI(小学館)にて自身の少年期を題材にした「Sunny」の連載を開始する。
湯浅政明(ゆあさまさあき)
1965年福岡県生まれ。大学卒業後、亜細亜堂に参加。その後、フリーランスとなり「クレヨンしんちゃん」「ちびまる子ちゃん」などを手がける。2004年、映画「マインド・ゲーム」で初監督を務め、第8回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞、第59回毎日映画コンクール大藤信郎賞などを受賞。2010年に監督を務めたTVアニメ「四畳半神話大系」でも文化庁メディア芸術祭大賞アニメーション部門大賞を受賞した。