コミックナタリー PowerPush - アニメ「信長協奏曲」

プロジェクト「信長協奏曲」第1弾はTVアニメ!監督が明かす「なぜ今、ロトスコープなのか」

手描き版のモーションキャプチャ、というと近い

──ロトスコープというと、はじめに実写で撮影を行い、その後撮影した映像をセル画にトレースしていく撮影技法のことですね。

ええ。ロトスコープ自体はもちろん100年ぐらい前からある手法で、アニメの世界では別に新しいわけでもないし、ごくごく普通の手法のひとつです。ただTVアニメで使うには目新しさもあるし、僕なりの実写のノウハウを使うには、ちょっと面白い効果が出るかなと思いまして。

アニメ「信長協奏曲」より。(c)石井あゆみ・小学館/フジテレビジョン

──最近ではTVアニメ「惡の華」でも用いられて話題を呼びました。ただ「信長協奏曲」の映像は、あれとはかなり違ったテイストになっています。

僕がやってるのは人の動きを撮影して編集したものを、作画のベース素材として用いるという方法論なんです。それをトレースして作画するので、ずっとヌルヌル動き続ける感じではないし、枚数もすごく少ない。その後から顔をCGで置き換えるんですね。手描き版のモーションキャプチャ、というと近いかもしれないです。とはいえ、このやり方で制作までこぎつけるのはかなり大変でした。

──ロトスコープの採用については、周りからも懸念の声があがったそうですね。

ええ。ゲッサン編集長の市原さんからも、話だけではわからないからとりあえず絵を見せてほしいと言われたのですが、全然お見せするところまでたどり着けず……。

──初めて見せたのはいつだったんですか?

いやもう、3月末かな、アフレコに入る直前です。とても短いものだったんですが、完成したカットをいくつか見てもらい、「これで行きましょう」ということになりました。

原作を全部やろうとすると全30話ぐらいに

──ほかに市原さんと話されたことはありますか?

アニメ「信長協奏曲」より。(c)石井あゆみ・小学館/フジテレビジョン

やっぱりアニメって、視聴者には「動いてるマンガ」に見られがちだから、なるべく原作に近づけてほしいという話はされました。実は最初のプロットのとき、僕はサブローの内面をもう少し描きたいって話をしたんですけれど、そこは原作では触れてない部分なので、やめてほしいって言われたんです。

──行間まで描いてしまうと、「このとき彼はこう思った」というのが固定化されてしまいますもんね。

ただ……マンガの場合は読者が行間を読んでくださるんですが、アニメだと目と耳から入ってきた情報がすべてになってしまう性質があって。そうなると、観終わった視聴者から「なんであいつがあんな行動するのか、よくわかんねえな」って思われてしまう危険性があるんです。

──受け取るときの想像力の働き方に差があるということですね。

はい。アニメやドラマって「24 -TWENTY FOUR-」じゃないですけど、見た時間が視聴者の頭の中で体験した時間とほぼ一致するので。でも本とかマンガの場合は、読者それぞれの時間になる。そういった点では、マンガのほうがアニメよりも想像させる余地があるわけです。

──確かに。

マンガの実写ドラマ化もやはり、行間をいかに脚本に落としこむかっていうのがポイントだったりするので。そしたら市原さん曰く「それはわかる」と。「わかるんだけど、ファンからして見ると、アニメっていうのはやっぱりマンガが動いたものに見える。だからいいか悪いは別にして、素直にマンガのサブローを実現させてほしい」と。

──新たな性格や描写を付け加えたりするのは原作ファンに違和感を抱かせる、ということですね。

冨士川祐輔監督

で、なるほどなと。おっしゃっていることはすごくわかりました。っていうことで、アニメに関してはオリジナルのストーリーはほとんどないんですよ。ただ原作のストーリーを全部組み込もうとすると30話ぐらいになっちゃうので、カットした部分は結構あるんですが。ああ、もったいないなあって思うエピソードもいっぱいあったんですけどね。

──寄り道エピソードの面白さも、「信長協奏曲」の魅力ですもんね。

本当に。そっちが実はメインだなあと思いつつも、それだと一向に話が進まないので(笑)、涙を飲んで、基本的なストーリーをガッと寄せて作り上げました。登場人物のセリフを入れ替えたりとかは多少しているんですが、それ以外は原作の流れをそのまま映像化しています。

アニメ「信長協奏曲」

アニメ「信長協奏曲」

ごくごく普通の今どき高校生サブロー。そんなサブローがひょんなことから飛ばされたのは、なんと戦国時代! そう、彼はタイムスリップしてしまったのである。自分の人生に日本の歴史なんてこれっぽっちも関係ないと思っていたサブロー。そんな彼がこの時代で出会ったのは、あの織田信長であった。歴史上とは似ても似つかないほど病弱な信長に、更に驚くべき頼み事をされる。それは、信長とサブローが入れ替わることであった……。
乱世で生きることとなってしまった平成育ち信長の、奔放奮闘記!!

7月11日より毎週金曜25:50~
フジテレビにて放送スタート
(初回のみ26:10~)
そのほかの放送局・時間については公式サイトへ

キャスト
  • サブロー:宮野真守
  • 織田信長:梶裕貴
  • 帰蝶:水樹奈々
  • 木下藤吉郎:中村悠一
  • お市:悠木碧
  • 池田恒興:興津和幸
  • 柴田勝家:小山力也
  • 前田利家:浅沼晋太郎
  • 佐々成政:三宅健太
  • 丹羽長秀:高橋伸也
  • 沢彦:緒方賢一
  • 徳川家康:福山潤
  • 竹中半兵衛:櫻井孝宏
  • 浅井長政:木村良平
  • 森可成:杉崎亮
  • 森長可:吉野裕行
  • 森蘭丸:村瀬歩
  • 足利義昭:杉田智和
  • 松永久秀:黒田崇矢
  • 織田信行:内山昂輝
  • 平手政秀:清川元夢
  • 斉藤道三:秋元羊介
  • ナレーション:小栗旬
スタッフ
  • 原作:石井あゆみ「信長協奏曲」(小学館「ゲッサン」連載中)
  • 監督:冨士川祐輔
  • 脚本:高橋ナツコ
  • 音楽:横山克
  • プロデュース:尾崎紀子
  • 主題歌:MY FIRST STORY「不可逆リプレイス」
  • 制作著作:フジテレビ
冨士川祐輔(フジカワユウスケ)

1995年フジテレビ入社。コンテンツデザイン部に所属。「オデッサの階段」などドラマ、ドキュメンタリー番組の演出を担当してきたほか、映画「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」をはじめとする映画、ドラマなどのタイトルバックを多数手がけた。またVFXディレクターとしても、ドラマ「不毛地帯」などさまざまな作品の本編合成をディレクションしている。

石井あゆみ「信長協奏曲」10巻 / 発売中 / 小学館 / 494円

決戦!長篠の戦い勃発!

天下布武の道をひた走るサブローが、ついに戦国最強騎馬軍団を誇る武田家と激突する! 歴史上に名高い「長篠の戦い」。サブローは歴史の教科書に名を刻むことはできるのか!?